2009年1月23日金曜日

トラーパニの塩田

今日はトラーパニの塩の話。

シチリアの天日塩の産地は、島の西側、トラーパニ県にあります。



トラーパニの塩田, photo by Vento di Grecale


トラーパニの塩田のスライドショー

トラーパニの塩田は風車がシンボル。


トラーパニ県の塩田は、北のトラーパニから南のマルサラまで約25㎞の間に、トラーパニとパチェーコ、モツィア、マルサラの3地区に分かれてあります。
全ての地区が、2つの自然保護区の中に含まれています。

この地域の平均気温は17.9度。
トラーパニの年間降雨量は約440ml。
ちなみにイタリアの年間降雨量は約1000mlで、日本は1730ml。

トラーパニ地方は、夏にはシロッコ、冬にはトラモンターナと呼ばれる季節風が強く吹きます。
シロッコはアフリカから吹いてくる暑い南東の風で、トラモンターナは北風。
風車もよく回りそうですねー。
この風車、海水を低い塩田から高い塩田に移す作業と、塩を挽く作業に一部が使われています。


トラーパニの塩田は、夕暮れ時の美しさでも有名。
行く機会のある人は、この素晴らしい景色をお見逃しなく。

トラーパニの塩田の夕暮れ


トラーパニの塩の中でも手作業で作られているものは、スローフードの後援食材に指定されています。
ただし、その量はごく一部。
スローフードのサイトによると、トラーパニの手作りの塩は、他の塩と比べるとカリウムとマグネシウムの含有量が多く、塩化ナトリウムの割合は少なめなんだそうです。


手作りの塩の他に機械を使って作られている塩もある訳で、一般的に、トラーパニ地方の天日塩は、味が強めと言われています。
そしてもう一つ、溶けやすいのも特徴。
これはつまり、塩漬けなどに適した塩、ということです。

塩漬けに適した塩、という訳で、トラーパニの塩は外国にもよく売れました。
最盛期は19世紀末。
一番のお得意さんは、北ヨーロッパやスカンジナビアの魚が獲れる国々です。
鱈や鮭を、シチリアの天日塩で漬けていたんですねえ。
パルマの生ハムの中にも、トラーパニの塩を使っているところがあるそうです。

戦後、塩の専売制度によってアドリア海やシチリア東部の塩田が姿を消す中、トラーパニの塩田も生産量がどんどん減っていきました。
最盛期には11万トンあった生産量が、1955年は5万トンまで落ちています。
そこで生産者たちは、トラーパニの塩作りのシステムの根本的な改革に取り組みました。
離れた位置にあった塩田を移動し、貯蔵庫を港の近くに移すなどの大規模な改造を行ったのです。
改革は順調に効果を見せていました。
ところがその矢先の1965年と1968年、トラーパニは洪水に見舞われてしまいます。

その後しばらく、トラーパニの製塩業は崩壊の状態にありました。
製造業者が再び組合を結成して、本格的に輸出を開始したのは1980年のこと。
そして今や、日本のスーパーにも並ぶようになったという訳です。


ところで、トラーパニの塩は塩漬けに適した塩・・・。
塩漬けの魚を大量に消費している日本が、これをほっとく訳ないですよねえ。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の記事によると、最近の主な輸出先には日本やカナダも含まれているようで、塩ジャケにトラーパニの塩が使われる、なんて日も来るのでしょうか。



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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2006年11月号(クレアパッソで販売中)
“世界の塩、イタリアの塩”の解説は「総合解説」'06年'07年11月号、P.19に載っています。


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6 件のコメント:

barrett_hutter さんのコメント...

シシリア島のペレッリーノ鉱山などの岩塩の話も詳しく書いて頂けると嬉しいのですが…。

prezzemolo さんのコメント...

barrett_hutterさん
リクエスト、ありがとうございます!
そうですよね、岩塩についても知りたいですよね。
ペレッリーノ鉱山というのはいくら探しても見つからないのですが、もしもう少し情報があったら教えてください。
シチリアの岩塩についてはさっそく調べてみます。

barrett_hutter さんのコメント...

唐突に話を振ってしまって、申し訳ありません。

ここが販売している岩塩がペレッリーノ鉱山のものだそうです。
http://www.drogheria.com/
私もイタリアの地図サイトで該当する場所を探したのですが、良く判りません。
Grosso、Finoとも1kg単位の小袋にて、国内では販売されているようです。

barrett_hutter さんのコメント...

蛇足かとは思いますが、念のため該当商品の画像を添付致します。ご参考になれば幸いです。

http://farm4.static.flickr.com/3085/3234796135_416cd520f0.jpg?v=0

prezzemolo さんのコメント...

barrett_hutterさん
情報、ありがとうございます。
フィレンツェの会社ですか。
さっそく調べてみますね。

prezzemolo さんのコメント...

barrett_hutterさん
ペレッリーノ鉱山、見つかりませーん。お手上げです。
販売元は、塩を仕入れてパックして売る流通業者さんのようですね。
ひょっとしたら、ペトラリーアのことなじゃないかとも思うのですが・・・
シチリアの岩塩のこと、ちょっとだけブログに書きました。
でも、情報が全然ないです!実際のところまだよく分かってません。

バッカラはノルウェーとイタリアを結ぶ干物貿易の主役で、この航路は1450年作成の世界地図にも記載されるほど重要でした。

(CIR12月号)によると、ヴィチェンツァでは、この料理はCが1つなんだそうです。普通はバッカラはbaccalàでも、ヴィツェンツァでは、Cがひとつのバカラ。んなばかな、と思ったけど、地元のこの料理の専門家たちは、C一つで呼んでました。会の名前の刺繍もC一つ。リチェッタはP.11...