2010年1月29日金曜日

リジ・エ・ビジ

今日はヴェネチア料理の話。
『ヴィエ・デル・グスト』の解説です。

ヴェネチアの名物プリーモ・ピアットと言えば、イカ墨のリゾット。
イカ墨の“スパゲッティ”ではなく、“リゾット”。
ヴェネチアならリゾットです。

中世、米はとても高価なものでした。
スパイスと一緒に香料商人が扱う品物で、粉にして薬として、あるいはスープにとろみをつけるなどのために使われていたそうです。
海洋共和国として貿易で富を築いたヴェネチアなら、得意分野の食材ですね。

16世紀になると、北イタリアに米の栽培が広まります。
北部は米、中部と南部はパスタ、というイタリアの構図の出来上がりです。
ヴェネチアにもヴェローナなどで作られた米が入るようになり、16世紀には米はヴェネチア料理の主役の食材になります。
ヴェネチアでプリーモ・ピアットと言えば、米かポレンタでした。



イカ墨のリゾットの他にも、地元以外でもよく知られているリゾットがあります。
リジ・エ・ビジです。
グリーンピースのリゾットですね。

この料理、グリーンピースご飯だと思ってしまうと、今ひとつレストランで注文する気にならないのですが、なんでもヴェネチアの市民的料理なんだそうですよ。
ヴェネチアの守護聖人サン・マルコの祝日(4月25日)には、街中でリジ・エ・ビジを食べるんだとか。
元々は、ヴェネチアの初物のグリーンピースをまず大公が味わって、それから下々が食べたようですね。
その日はみんなが食べるからヴェネチアのグリーンピースだけでは足りなくて、早生のグリーンピースができるリグーリアからわざわざ取り寄せて作ったのだそうです。



下の動画は2009年のサン・マルコの祝日のサン・マルコ広場。






ちなみにヴェネチアでは、同じ4月25日は「つぼみの日」でもあります。
男性が好きな女性にバラのつぼみを1輪贈るんだそうで。
イタリアン(キザ)な伝統だあ。



リジ・エ・ビジは、厳密に言うとリゾットとは違います。
伝統的なリチェッタでは、米は炒めません。
でも、これ以外にも様々なバリエーションがある料理です。


下の動画のリジ・エ・ビジは、ヴェローナ料理として紹介されています。
正確に言うなら、リジ・エ・ビジは“ヴェネト料理”ですね。





この動画のリジ・エ・ビジは、
まず生のグリーンピースをゆでて氷水に取ります。
そして皮をむき、皮とグリーンピース少々を撹拌してピューレにします。
リゾットに粒のグリーンピースとピューレを加えてマンテカーレ。
イタリアの米料理は水分の残し具合ととろみの強さによって様々なバリエーションがありますが、この動画の料理は一般的なリゾットの状態に仕上げていますね。
子羊肉がトッピングされて、見栄えもボリュームもレストランの一品。



『LA CUCINA VENEZIANA』(Marcello Brusegan著、Newton Compton出版)には、伝統的なリチェッタとシェフのリチェッタの2点が収録されています。
まずは伝統的なリチェッタをどうぞ。

リジ・エ・ビジ Risi e bisi(Riso con i piselli)
材料/6人分
 米(ヴィアローネ)・・400g
 グリーンピース・・1.2㎏
 パンチェッタ・・60g
 玉ねぎ・・1個
 プレッツェーモロのみじん切り・・大さじ2
 ブロード・ディ・カルネ・・1.5リットル
 おろしたチーズ・・大さじ4
 塩、こしょう

・グリーンピースをさやから出して洗い、パンチェッタ、玉ねぎ、プレッツェーモロのみじん切りと一緒にソッフリットにする。レードル2杯のブロードと塩を加えて弱火で煮る。
・これに残りのブロードをかけて沸騰させ、米を加えてかき混ぜながら煮る。
・火から下ろす少し前にチーズとこしょうを加える。数分休ませてからサービスする。

グリーンピースのさやをゆでて薄緑色のゆで汁を取り、これをブロード・ディ・カルネに加えると色のきれいなリジ・エ・ビジができる。



次はBistrot de Veniseのシェフ、アントニオ・ブーフィ氏のリチェッタ。
店のhpはこちら

リジ・コン・イ・ビジ Risi con i bisi
材料/6人分
 米(ヴィアローネ・ナーノ)・・6カップ
 グアンチャーレ・・100g
 生のグリーンピース・・500g
 白玉ねぎ・・1個
 バジリコ・数枚
 グリーンピースのさやを加えて取った野菜のブロード
 黒こしょう
 オリーブオイル
 フレッシュチーズ

・玉ねぎの薄切りとバジリコを油でじっくり炒め、グリーンピース300gを加える。ブロードで覆って煮てミキサーにかけ、塩味を調える。
・グアンチャーレを少量の油で炒め、米を加えて軽く炒める。ブロードをかけ、ブロードを足してかき混ぜながらリゾットの要領で煮る。最後はグリーンピースのピューレと残りのグリーンピースも加える。厳密にはリゾットではないので煮汁をやや多めに残して仕上げる。
・仕上げにたっぷりのこしょう、オイル、おろしたチーズでマンテカーレする。



こちらの動画では、Bistro de Veniseとアントニオシェフのリジ・エ・ビジが紹介されています。
29分と長いです。
リジ・エ・ビジを作るのは04:50~07:50。



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関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』2008年4月号
“リジ・エ・ビジ”の記事の解説は「総合解説」'07&'08年4月号、P.31に載っています。

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6 件のコメント:

vittorio さんのコメント...

ウ゛ェネチアはリゾットですよね、日本でパスタばっかり作っているいますと勘違いしてしまいます(笑)

Risi e Bisiはよく同僚のお母さんが作ってくれました、バカンス地もオフになると会社のアパートも私だけになってガスとかも支払いが遅くなるみたいで止められしまうのです、シャワーは水なんです、気合いの大声をかけてながらシャワーを浴びていると同僚がびっくりした顔をして「何やってんだ、馬鹿じゃねー」(笑)、それから止められいる期間は同僚の家で浴びさせてもらってた時、よくお母さんが作ってくれました、とても美味しいかったです、レストランで作ってたのはリゾットでした(笑)、しかしウ゛ェネチアにいてもprezzemoloさんがブログで紹介されたこと全然しりませんでした、今回もウ゛ァージョンアップになりました(笑)

去年はカダイフ・ババを流行らせました、すごい人気なんです、ババはセンツァ・テですけど(笑)

今年はイタリア米を流行らせます(笑)。

prezzemolo さんのコメント...

Vittorioさん
水のシャワー、私も20代で貧乏旅行してた時はよく経験しました。
最近ではアルベロべッロの石の家で、ストーブが必要な寒さの中で、水が温まるのを待ちながら少しずつシャワーを浴びるという悲惨な体験もしましたよー。
どうしてお湯をけちるのか、理解できませーん!

カダイフ・ババって、超エキゾチックなネーミングですね。
きっと、名前を聞いただけでもお客さんの期待度高いですよ~。
イタリア米は手ごわい相手だと思いますが、流行ったらスゴイ!
かげながら応援してます(笑)

くるり さんのコメント...

リジ・エ・ビジ、とってもおいしそうですねー。意外と自分でもできそうな気がするので今度トライしてみよう。でもグリーンピースの皮を1個1個むくのが面倒ですね。やっぱり料理は根気>と根気のない自分。でも実はそれより、シャコのニョッキの方が気になるー(笑)。今度ヴェネツィアに行きたいとなぁと思っているのでお勉強になります。

prezzemolo さんのコメント...

くるりさん
そうか、シャコと言えばくるりさんでしたね(笑)
オーブンで焼いて、水分をできるだけ飛ばしたじゃがいもで作るニョッキ、美味しそうですねえ。
グリーンピース、冷凍ばかり食べているから、薄皮がついてるなんてすっかり忘れてましたよー。
やっぱり生は美味しいだろうなあ。
私もヴェネチアに行く気満々なので、ヴェネチア情報を訳す時は力が入ります。

くるり さんのコメント...

12月から2月まで休日なしで久々にモーレツに働き、随分とご無沙汰してしまいました。昨日久しぶりにカキのパスタを作ったのですがボロボロ。身体に染みついていない技術なモノで(笑)。

ニョッキは初めてイタリアンなるものを作った時、ボロボロだったのでそれ以来封印された過去ですが(笑)、水分を飛ばすのがポイントなんですね−。お勉強になるなぁ。しかし手間がかかりそうなので心にゆとりがある時にトライしよう。

ヴェネツィアには3回ほど行ったのですが、食に興味がない頃だったので、今度行く時は食い気満々です。それにゴンドラにも乗ってみたいし(ミーハー)。また色々教えて下さい。

prezzemolo さんのコメント...

くるりさん
ニョッキ作りは難しいですよね。
日本人はもちもち感が好きだったりするから、粘り気をどこまで許すかがポイントでしょうか。
今度ヴェネチアに行ったら、リゾットもニョッキも白いポレンタも食べたいんですよー。
炭水化物地獄になりそう~。

マリア・ルイジアの小さな街、パルマのバターとグラナの娘、アノリーニ。本物は牛と去勢鶏のブロードでゆでます。

昨日の最後にサラっと登場したアノリーニですが、このパスタ、(CIR12月号P.5)にもリチェッタが載っていました。クルルジョネスの次の料理です。花の形の可愛い詰め物入りパスタ、なんていうのがこのパスタの印象ですが、イタリア人は、こんな風に思ってるんですね。 「マリア・ルイジアの小...