パレルモの話、その4。
ストリートフードの話、今回はアランチーネ。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の記事の解説です。
タオルミーナのアランチーニ
イタリアのライスコロッケと言えば、アランチーニarancini。
でも、パレルモなどシチリア西部では、女性形でアランチーネarancineと呼びます。
同じ島の中でも、カターニアなどシチリア東部では、アランチーニと男性形。
なぜパレルモでは、女性形でアランチーネと呼ぶのでしょうか。
よく知られている説は、
そもそもアランチーニは、オレンジのような大きさだったことからこの名前がついた。
オレンジは、イタリア語ではアランチャarancia。
女性形。
それならアランチーニも女性形でアランチーネと呼ぶのが自然
というもの。
なるほど。
でも、だとすると今度は逆に、なぜアランチーニという男性形の名前が広まったのか、という疑問が出てきます。
一説によると、その答えは、シチリアの方言にあるんだそうです。
シチリアでは、パレルモとそれ以外の地方では、違う方言を話していました。
そのパレルモ以外の方言では、オレンジは“aranciu”。
これは男性名詞か女性名詞か迷うところですが、実は男性名詞。
つまり、パレルモ以外のシチリアでは、オレンジは男性名詞だったのです。
そしてアランチーネは“arancinu”。
やはり男性名詞です。
だから、arancinuを標準語に直すと、アランチーニとなる訳です。
なるほどねえ。
男性形でも女性形でもどっちでもいいような気もしますが、世界中にアランチーニという名前が広まった今でも、シチリアの西側だけは、かたくなにアランチーネという名前にこだわっています。
イタリアの人気推理小説の主人公、モンタルバーノ警部が、アランチーニと呼んでいることに抗議するこんな動画まであります。
モンタルバーノ警部とアランチーニについては、以前、このブログでも取り上げました。
こちらのページ。
カターニアのアランチーニについても取り上げています。
こちらのページ。
12月13日のアランチーネ
12月13日は、パレルモではアランチーネを食べまくる日です。
この日はサンタ・ルチーアの日。
聖ルチーアは、飢饉の時に、小麦を満載した船が突然港に姿を現す、という奇跡を起こして、人々を救ったと信じられている聖人です。
人々はその小麦の粒をゆでて、お粥にして食べたと言われています。
そのため、12月13日は、聖ルチーアに感謝して、麺やパンなど小麦系の粉ものを食べないで、小麦の粒や、小麦以外のもの(米、じゃがいも、チェーチなど)を食べる、と言う伝統が生まれました。
米料理のアランチーネも、この日に食べるものの一つです。
今では、12月13日はアランチーナ・デイArancina Dayとも呼ばれています。
家庭では朝から大量のアランチーネを作り、ご近所や知り合いにふるまってまわります。
人気のバールやフリッジトリーアでは、アランチーネがあっという間に売り切れます。
ちなみに、飢饉の時に船の小麦で作ったとされる料理が、クッチーア(クチーア)cucciaというシチリアの伝統料理のルーツです。
クッチーアも12月13日に食べる料理。
元々は水や牛乳で煮ただけのお粥でしたが、今では小麦の粒入りの甘いリコッタクリームに進化しました。
チョコレートを入れるなど様々なバリエーションが作られています。
↓クッチア
アランチーネの話、次回に続きます。
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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2008年3月号
アランチーネを含む“パレルモ”の記事の解説は、「総合解説」'08&'09年3月号に載っています。
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