2011年11月7日月曜日

キアニーナとその仲間

今日は牛の話。

イタリアを代表するブランド牛と言えば、キアニーナChianina。

大昔から存在するイタリア在来種で(正確に言えば、世界中の牛の祖先、野生のオーロックスが新石器時代に家畜化されたものがルーツという説が有力)、2500年以上前のエトルリア人や古代ローマ人も、キアニーナを飼育していました。
ただし、本来は労働用の牛で、食用に飼育していた訳ではありません。

この牛は、トスカーナのヴァル・ディ・キアーナ地方が飼育の中心地。


↓キアニーナの品評会。





優勝した牛は、審判がお尻をぺしっと叩いて発表するんですねえ。


キアニーナ牛の外見の特徴は、その美しい白磁色。
ローマ時代は、この白さが神聖に見えて、神への生贄としても用いられました。
そういえば、日本には「黒毛和牛」はあっても「白毛和牛」はないですねえ。

キアニーナは他の牛より胴が太くて足が長く、世界一大きな牛なんだそうです。
ローマ軍は、この大きなキアニーナを力のシンボルとして凱旋パレードなどに使っていました。
ローマのフォロ・ロマーノのセプティミウス・セウェルスの凱旋門(紀元203年建造)に彫られたレリーフの中にも、キアニーナ牛があるのだそうです。


↓2007年に世界一背が高い牛としてギネスブックに載ったキアニーナのフィオリーノ号。
2m05cmです。






この大きさのせいで、キアニーナは他の牛より成長するのに時間がかかります。
解体した後の熟成にも時間がかかります。
その代わり、ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナに代表されるように、大きくて赤身で柔らかくて味の濃い肉ができます。


キアニーナはIGP製品なので、熟成期間を含めて様々なことが法律で定められています。

このキアニーナと、あと2品種を加えた計3品種が、ヴィテッローネ・ビアンコ・デル・アッペンニーノ・チェントラーレVitellone Bianco dell'Appennino Centrale・IGPというブランド。

残りの2品種とは、マルキジャーナMarchigianaとロマニョーラRomagnola。


↓マルキジャーナの品評会。




キアニーナとよく似ていますねえ。
この牛の前身は、6世紀ごろイタリアに伝わったマルケの品種にキアニーナをかけ合わせて、もっと筋肉を発達させたもの。
19世紀半ばに生まれたこの品種に、さらに20世紀初め、ロマニョーラ種をかけ合わせて、農耕用に背を低くしたものが現在のマルキジャーナ。



↓そしてこちらはロマニョーラの品評会。





ロマニューラはキアニーナやマルキジャーナとは外見が少し違いますね。
これは、6世紀ごろ、中央~東ヨーロッパの草原から、ロンバルド族の侵入に伴ってイタリアに伝わった品種がルーツと考えられています。
白毛牛の中ではもっとも気候の変化に強く、放牧に向いているのだそうです。


IGPの規定では、出荷できるのはこれらの品種の12~24ヶ月齢の牛。
メスより脂肪分が少なくて肉が固いオスの場合、熟成は前半身が4日以上、後半身が10日以上。
普通は、0~4度、湿度85~90%で10~14日熟成させるのだそうです。
ちなみに、キアニーナのようなブランド肉でない場合は24~48時間。



キアニーナの話、次回に続きます。


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関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』2009年4月号
“ヴィテッローネ・ビアンコ”の記事は「総合解説」'08&'09年4月号に載っています。

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2 件のコメント:

畠山 さんのコメント...

お尻のあたりの丸いフォルムがたまりませんねえ。ついついうちの牧場にもほしくなりました。
こういう品評会は日本でもありますが審査員がお尻を叩いてチャンピオンを決定するのはみんな共通なんですね。

prezzemolo さんのコメント...

畠山さん
最後は並んだお尻を見て判断するなんて、知りませんでした。
牛もこうやって見ると、品種によってかなり個性が違うもんなんですねえ。
奥が深い!

マリア・ルイジアの小さな街、パルマのバターとグラナの娘、アノリーニ。本物は牛と去勢鶏のブロードでゆでます。

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