2013年4月30日火曜日

夏の山小屋巡り

今日は山小屋の話。
『サーレ・エ・ぺぺ』の“山小屋の料理”の記事の解説です。

この記事、イタリア語では、Sapori di malga(サポーリ・ディ・マルガ)というタイトルでした。
「マルガの味」です。
マルガとは、夏山の放牧地のこと、あるいは、その期間家畜の世話をする人たちが寝泊まりして乳製品を作る山小屋のことですね。
大自然の中で、新鮮な夏草を食べた牛や羊のミルクから、熟練した職人の手で作られる山のチーズやバターは、日本人ならハイジの世界として幼いころから刷り込まれてますよね。

トレンティーノの小さなマルガのアグリトゥーリズモ。
イタリアにもこんなのどかな暮らしが・・・。
 ↓




イタリアには、マルガロードなるものがあったりして、山小屋の美味しいもの巡りを兼ねた山歩きは、夏山の観光目的の一つ。

山小屋の歩き方を教える動画
 ↓



あの硬さのパンをかじる子供、ただ物じゃない。



山小屋のチーズ、モンテ・ヴェロネーゼ・ディ・マルガ。
 ↓ 



こんなのどかな大自然の中で、美味しいチーズやバターを使って作るマルガの料理は、どんなメニューでしょう。

記事で紹介しているのは、まず、タンポポとブルーベリーのサラダ、そして放牧チーズのフォカッチャ、野菜とリコッタのちぎりパスタ、と続きます。
このちぎりパスタというのは、斬新ですよ。
文字通り、伸ばしたパスタをちぎるんです。

でも、もっと衝撃的なのが、デザートです。
なんと、じゃがいも入りチョコレートケーキ。
いったいどんな味なのか、想像もつかない。
チョコレートケーキなのか?じゃがいもケーキなのか?

で、調べてみたら、どうやらじゃがいものケーキはドイツのケーキらしい。
しかも、イタリア人はじゃがいものケーキが好きなようで、ネット上には様々なリチェッタが・・・。
ということは、チョコレート入りじゃがいもケーキだったか。

と言うわけで、次回は山小屋の料理の話。


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関連誌;『サーレ・エ・ぺぺ』2011年9月号、“山小屋の料理”のリチェッタは「総合解説」2011年9月号に載っています。

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2013年4月25日木曜日

ムール貝のティエッラ

今日はティエッラの話。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の解説です。

ティッエッラは、オレッキエッテに次ぐぐらい有名なプーリアはバリの名物料理。

ムール貝のティエッラ
 ↓
Tiella di cozze


『ラ・クチーナ・イタリアーナ』で紹介しているこの料理は、目から鱗ってくらいめちゃ簡単。
オーブン皿に玉ねぎ、じゃがいも、ムール貝、トマトを重ねてペコリーノと油をかけ、生のお米を散らしてじゃがいもで覆い、水をかけてオーブンで焼くだけ。
2行で説明できました。

こんな簡単な料理だっけと思って動画を探したら、みんなもっと大変そう。
つまり、究極に簡単なリチェッタですよ、これ。

で、作ってみようと思ったんだけど、残念、美味しそうなムール貝がない。
都会のスーパーで売ってるムール貝は、美味しいエキスをぜーんぶ絞り出した後の残骸かなにかのように悲惨。

こりゃあ、新鮮なムール貝が手に入る地方にお住いの皆様には、ぜひお試しいただきたい一品ですなあ。
しかも、記事の解説によると、昔はムール貝の数が多いか少ないかで、金持ちか貧乏かが分っちゃったというんだから、貧乏人は悔しーわー。
一番貧乏なバージョンはムール貝なしだとまで言ってくれちゃって、悲し~い。
イタリアのジョークきついわ~。

これもかなり簡単なバージョン。
 ↓



ムール貝にアサリを加えるバージョンや、ムール貝の代わりにアサリとイカを加えたシーフードのティエッラなどのバージョンもあります。
ズッキーニやなすを加えれば野菜のティエッラ。
スローフード出版の“リチェッテ・ディ・オステリーア・ディイタリア”の『クチーナ・レジョナーレ』には、
米の代わりに硬質小麦の粒を加えるリチェッタが載っています。
さすがはイタリアの穀倉地帯。

ちなみに、これはアンドリアのトラットリア・アンティキ・サポーリtrattoria antichi saporiのリチェッタです。

この料理センスやネット上の評価から推測すると、かなりいい店に違いない。
広大な畑を所有しています。
グラノ・アルソのフォカッチャなんてのも出してますよ。
ますます行きたくなったー。

グラノ・アルソはプーリア名物の黒ずんだ小麦で、いわゆる落穂です。
収穫が終わって畑を焼いた後の、鳥すら食べない小麦のことです。
それを拾い集めると言う、ミレーの名画『落穂拾い』で知られるこの行為は、極貧の農民の象徴。
私は、今でも誰かが落穂拾いしてるんだ、う、可哀そうに・・・、と思ってましたが、さすがに21世紀にそんなことはしないようで、なんと、普通の小麦をわざわざトーストして、人工的に作っているんだそうです。
つまり、単なるトースト小麦。
私の涙を返せー!

グラノ・アルソのオレッキエッテ
 ↓




硬質小麦のティエッラは激しく食べてみたいですが、だしが出る魚介とお米の組み合わせって、鉄板ですよねえ。
え、それ知ってる?
パエリア?
た、確かに。

でも、パエリアはフライパン(パエリア)で作るのに対して、ティエッラは丸くて小さな取っ手が4つついたテラコッタのオーブン皿(ティエッラ、最初の動画を見て~)で作ります。
使った道具の名前が料理の名前という理論で言えば、パエリアだってオーブン皿で作ればティエッラでっせー。

それでは、アンティキ・サポーリの硬質小麦のティエッラのリチェッタをどうぞ。

硬質小麦、じゃがいも、ムール貝のティエッラTiella di grano patate e cozze
材料:4人分
 硬質小麦・・100g
 ムール貝・・500g
 じゃがいも・・300g
   トマト・・2個
 ズッキーニ・・1本
 玉ねぎ・・1個
 EVオリーブオイル
パン粉;
   パンのクラム・・50g
   おろしたペコリーノ・カネストラート・・30g
 
 にんにく・・1かけ
 イタリアンパセリ・・1房
 塩、こしょう
・小麦を1時間水に浸す。
・パン、ペコリーノ、にんにくとイタリアンパセリのみじん切り、塩、こしょうを混ぜる。
・じゃがいもは皮をむいて輪切り、トマト、ズッキーニ、玉ねぎも輪切りにする。ムール貝は開けて片側の殻を取り除く。
・深さ10㎝のテラコッタのオーブン皿にパン粉の一部を散らして油をかける。その上にじゃがいも、ズッキーニ、トマトの順で重ねる。・
ムール貝をのせて水気を切った小麦を散らし、再びじゃがいも、トマト、ズッキーニ、玉ねぎを重ねる。
・パン粉を散らして油をかけ、水を材料が全部かぶるまで加える。
・180度のオーブンで水気がほぼなくなるまで(45分)焼く。
 



この店、こちらのニュースによると、東京進出を企てていたみたいですけど、どうなったんでしょう。



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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2011年9月号、“ティエッラ”のリチェッタは「総合解説」2011年9月号に載っています。

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2013年4月18日木曜日

パドヴァの鶏

今日は鶏の話。
『ヴィエ・デル・グスト』の解説です。

イタリアのブランド鶏の一つに、ガッリーナ・パドヴァーナがあります。
とにかく、その姿が個性的。

このもこもこの生き物はなんだ。





この世界には、もふもふしたくなる鶏もいるんですねー。

この鶏の代表的な調理方法の一つが、“イン・カネヴェラ”というもの。
パドヴァ県のポルヴェラーラという町の名物料理です。

丸鶏に香味野菜や柑橘果実を詰めて籐を差し込み、豚の膀胱に入れてゆでるという料理です。
ゆでると言っても、直接湯には触れないで加熱するので、蒸し煮ですかね。
袋に閉じ込められた蒸気は湯より高温になります。
しかも、肉から旨みや栄養分が湯に溶け出ない。
袋にたまった汁はソースにします。

動画は見つからなかったのですが、写真はありました。

こちらのページです。

豚の膀胱が手に入らなければ、耐熱の食品用袋で代用できます。
籐(ラタン)は竹で代用。

ちなみに、この町の名前がついた、ポルヴェラーラという品種の鶏もいます。
パドヴァは鶏が名物なんですね。

黒いポルヴェラーラ。
白いのもいます。
 ↓


イタリア土着の歴史の古い品種で、15世紀から知られているそうです。

ポルヴェラーラのイン・カネヴェラを紹介しているこちらのページによると、この料理のルーツはパドヴァより内陸のヴィチェンツァなんだそうです。

豚の膀胱を使うので、サラミ用の豚をさばく秋に作る料理でした。
鶏はクリスマス用に太らせた去勢鶏を使いました。
つまり、すごいご馳走だったんですね。
ペッレグリーノ・アルトゥージの本にも登場する料理です。



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関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』2011年8月号、“ヴェネト料理”の記事は「総合解説」2011年8月号に載っています。

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2013年4月15日月曜日

ヴェネチアの魚市場

今日はヴェネチアの魚市場の話。
『ガンベロ・ロッソ』の記事の解説です。

ヴェネチアの魚市場は、観光名所の一つ。
リアルトの市場の名前で知られていますよねー。

リアルトの市場。
 ↓



この記事に、面白い一説がありました。

「市場の売り場の周りでは、観光客が、名画でも鑑賞するかのように、好奇心一杯で魚を眺めていく」

なるほどねえ。
外国の市場を見物するのは面白いものですが、確かに、観光客の視線は、ルーブルでモナリザを見ている人と同じかも。
あたかもすごい専門家であるかのような視線でジロジロ見ながら屋台に沿ってだらだら歩き、ちょっとしたうんちくを自慢げに語ったら、急に軽い疲れを感じてため息交じりに次の屋台へと足を向ける。

市場の中にいる人は、動物園のパンダと同じ気分なのかもしれない。

それにしても、こんなに色とりどりな魚が景気よく並んでいれば、ヴェネチアって、海の中までエキゾチックでドラマチックだなあ、なんて勘違いは、しても当然。

でも実は、世界中から集まってるんだそうです。
地元の魚だけじゃ少なすぎてやっていけないのが実情。

記事では、市場の近くで市場の魚を出しているオステリーアも紹介していますが、その中の一軒の動画がありまた。
ヴェーチョ・フリトリンです。
 ↓



モエケのフリットを作ってましたね。
市場の小魚のフリットなど、庶民的な料理を出す店です。
ゴンドリエーリや漁師が通っていた店だって。
ここも行ってみたい店だなあ。


ヴェネチアの名物料理の一つに、帆立貝のヴェネチア風がありますが、こちらはリアルトの市場で帆立貝を殻から出す作業をしているところ。
 ↓



そして帆立貝のヴェネチア風。
なぜか前半は車のCMです。
 ↓




柱とコライユ(イタリア語ではコラッロ)だけにした帆立貝を、油、にんにくとイタリアンパセリのみじん切りで焼いて塩、こしょうし、殻に盛り付けてレモン汁をかけるだけ。
あまりにも普通なので、帆立貝のヴェネチア風という名前だとは知らずに作っている人が多数なのでは。

ラ・グランデ・クチーナ・レジョナーレ・イタリアーナ”シリーズの『ヴェネト』によると、レモン汁の代わりに白ワインをかけるのは、この料理のバリエーションの一つ。

ヴェネチア風という名前がついている料理はこの他にはレバーぐらいで、実は案外珍しい。

この料理でも食べて、気分だけでもリアルトの市場に行った気に。




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関連誌;『ガンベロ・ロッソ』2011年8月号、“リアルトの魚市場”の記事の解説は、「総合解説」2011年8月号に載っています。

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2013年4月12日金曜日

ローマのユダヤ料理

今日はローマのユダヤ料理の話。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の記事の解説です。

ローマのゲットー
 ↓



ローマのゲットーには独特の雰囲気があるけれども、歴史の古い地区なので、街に溶け込んでいて、人によっては気が付かないで通り過ぎてしまうかも。

でも、歩いている人たちが明らかにユダヤ人と思われる服装やひげなので、ローマにいながら異国情緒も感じます。

ローマのユダヤ人コミュニティーは、ヨーロッパ最古。
紀元前からあります。
ユダヤ料理は、ローマ料理の柱の一つととして、今や欠かせないものになっています。

ユダヤ教は、食べてはいけないものがあれこれあります。
豚、タコ、イカ、貝などの軟体動物、馬。
血を食してはいけない。
生きている動物の肉はだめ。
親のミルクで子を煮てはいけないので、肉とミルクを混ぜるのはだめ。
他に何がありましたっけ。
家畜をさばく方法も決められています。

ローマ法王によって、大型の魚を食べてはいけないという命令まで出されたそうです。
皮肉なことに、この時、売れ残った小魚を使って作ったズッパ・ディ・ペッシェや、アンチョビとエンダイブが、今ではローマの名物料理の一つなんだそうです。


豚肉を保存加工する技術が発達したイタリアで、豚肉を食べてはいけないなんて、もったいないなあ。
とは言え、レストランで肉を食べられないかと言うとそうでもなく、カルネ・セッカなんて名物料理もあったりします。


解説にリチェッタを載せた料理がいくつかありますが、記事に写真がなかったので、動画を探しました。

まずはトルツェッティ。
エンダイブのことをこう呼ぶんですね。

トルツェッティ(エンダイブ)のオーブン焼き
  ↓



ゆでた後にオーブンで焼きます。
これならエンダイブ1個丸ごと食べられそうですね。

次はズッキーニのコンチャ。
 ↓



ローマ種のズッキーニを使います。
一種のオイル漬けですね。
アーテイチョークのローマ風といい、野菜に徹底的に火を通すんですね。

シャバット風リゾットは画像が見つかりませんでした。

このシャバットというのは、安息日のことで、なにもしてはならない日。
なんと、労働も調理も、火を使うのもダメなんだって。
金曜の日没から土曜の日没まで。
大変ですねえ。

おまけ。
解説でも紹介しているユダヤ料理のレストラン、タヴェルナ・デル・ゲットーの動画でもどうぞ。
 ↓


メニューにカルボナーラがありますねえ。
豚肉の代わりに何を使っているんでしょう。



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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2011年8月号、“ローマのユダヤ料理”の解説は、「総合解説」2011年8月号に載っています。

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2013年4月8日月曜日

イタリア産キャビア

今日はチョウザメの話。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の記事の解説です。

イタリアのチョウザメの養殖の話は、以前にも取り上げたことがありますが、着々と進歩しているようですね。
もう料理書にも、イタリア産キャビアやチョウザメの料理が登場するようになりましたよー。
元々、国内の川にチョウザメが生息していたイタリアには、キャビアだけでなく、チョウザメも美味しくいただく食文化の土台があります。
チョウザメとキャビアの親子丼パスタも実現しています。

イタリアのキャビア養殖の大手の一つ(世界最大のメーカーなんだとか)、アグロイッティカ・ロンバルダ社が養殖しているチョウザメのキャビアは、“カルヴィシウス”の商品名で流通しています。
 ↓



カルヴィシウスのチョウザメの中には、ポー河に生息していたイタリア土着のチョウザメを復活させるという目的で養殖されている品種もあります。
シベリアチョウザメとアドリアチョウザメの交配種なんだそうです。
このチョウザメのキャビアには、“キャビア・ド・ベニス”という名前がついています。

カルヴィシウスの通販価格は100gで198ユーロぐらい。
今は円安なので、約26,000円です。
キャビア・ド・ベニスは23,000円ぐらい。
庶民が気楽に料理に使える値段じゃないですね。

キャビアとサルサ・トンナータのヴォロヴァン。
 ↓ 
Voulevant


バッカラ・マンテカートとキャビア
 ↓
Il baccala mantecato (con flash)



上の2枚の写真を見比べると、下のキャビアのほうがあきらかに高級そう。
グラスに入れて添えるという演出も上品。
バッカラ・マンテカートも美しい。
どこの高級レストランでしょうねー。

ヴェネチア・メストレのリストランテ・ダッラメーリアだって。

店のwebページはこちら

お店のドルチェ。
 ↓
I dolci dell'Amelia


動画もありました。





お店の雰囲気もすごくいいですねー。
これは行ってみたくなる店ですよ。



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関連誌『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2011年8月号、“キャビアとボッタルガ”の記事は、「総合解説」2011年8月号に載っています。

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2013年4月4日木曜日

サルーミの脂身

脂肪の栄養素って、なんて小難しいんでょうねえ。
ともかく今日は、前回の続きで、ちょっと残った多価不飽和脂肪酸。

この脂肪酸には、オメガ3系とか、オメガ6系とかがあるらしい。
オメガ3系は、中性脂肪を減らし、動脈硬化予防の働きがある。
代表的なのは、魚の油のDHA(ドコサヘキサエン酸)、α-リノレン酸などの必須脂肪酸。
この栄養素の必要性は、広まってますねえ。

オメガ6系は、植物油に多く含まれる必須脂肪酸のリノール酸が代表的。
イタリアでは、脳や心臓の組織を作り、動脈硬化を防ぐものとして注目されている栄養素です。

他には、体脂肪として蓄積しにくい中鎖脂肪酸とか色々あるけど、結局、脂も肉も摂りすぎると害があるけど、不足しても害がある。
毎日山のように食べるのでないなら、ちょっとぐらい豚の脂身を食べても怖くない、むしろ食べないよりは食べたほうがいいってことですね。

こちらのwebページによると、豚の脂身100gは640kcal、タンパク質6%、脂肪67%、ビタミンA、ビタミンB、Eグループ、ナイアシン、セレンだそうです。

ここまで知識を獲得した上で、あらため『ヴィエ・デル・グスト』の記事を読んでみると、

生ハムやサラミの脂身は、45%が不飽和脂肪酸で、主にオレイン酸。
オレイン酸はオリーブオイルに豊富に含まれることで知られる脂肪酸。
残りの脂身の15%は主にリノレン酸。
残りは中~長鎖脂肪酸。

と言うわけで、もうラルドは怖くない。

それに、不思議なことに油だけなめても美味しくないけれど、ラルドのように熟成させた塩漬け脂身は、生でもおいしいし、焼くと素晴らしい香りが生まれます。

『ヴィエ・デル・グスト』誌では、
「味と栄養の両方から一番安全で確かなイタリアの豚肉の加工品は、DOP製品だ」
と結論付けています。

代表的なのはパルマの生ハムですが、他にも、ジベッロのクラテッロ、カルペーニャの生ハム、アルナのラルド、カラブリアのパンチェッタなど、様々な製品があります。
これらは、豚の産地、飼育、加工が決められている地域内で決められた方法で行われている製品です。
DOP以外にはIGPというのもありますが、これは、豚の産地は条件に含まれていません。
今の時代、豚の産地まで決められているというのは、かなり大変ですよ、きっと。

それに、人間でも、食べたものが栄養として使われずに余ったら皮下脂肪になると考えると、豚の皮下脂肪も、食べたものが直接脂身の味や組織に影響するはず。
となると、どんな餌を食べているかが重要ですよね。
豚がオメガ6系多価不飽和脂肪酸が豊富な餌を食べているというのは、解る人には解る情報なんでしょうねえ。

つまり、DOPの生ハムやサラミは、職人と農家の技と知恵と伝統を昇華させて、さらにイタリアが国を挙げて保護している製品だから、かなり安心というわけですよ。

アルナのラルド
 ↓


パンチェッタ
 ↓




面白いリチェッタを見つけました。
焼いた豚のヒレ肉をラルドで巻いてフィロ生地で包み、オーブンで焼いた一品。
豚肉のいいとこどりで、しかもパイ包みという、ご馳走仕立て。

豚ヒレ肉のラルド包み
 ↓




ちなみに、“ラルド”は、豚の脂身を熟成させたもののこと。
生の豚の背脂はグラッソと呼びます。


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関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』2011年8月号、“イタリア産サルーミ”の記事は、「総合解説」2011年8月号に載っています。

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2013年4月1日月曜日

脂肪酸の話

今日は、豚肉の脂身について。
日本食肉協議会の『食肉の知識』という本、
eonet.jpの「栄養素辞典
amaniyu.umasou.comの「亜麻仁油を取って健康になろう
grico.co.jpの「栄養成分百科
を大いに参考にしました。

まず、脂肪の9割は脂肪酸です。
肉を食べると脂肪は酵素によって脂肪酸に分解され、血中を巡り、各組織に取り込まれて酸化され、高いエネルギーを発します
結果的には、体の基礎となる細胞膜を作って活動源のエネルギーとなるわけです。
取リ過ぎると肥満や生活習慣病の元になり、不足すると、疲労、肌荒れ、体のさまざまな機能のトラブルを起こします。

脂肪酸の中には体内で合成できないので食物として摂取することで必要を満たす必須脂肪酸があります。
不足すると、疲労感、体力不足、皮膚の病気、頭の働きが悪くなる、炎症や出血が起こりやすくなる、不妊、流産、臓器の病気など、やっかいです。
タンパク質にも、必須アミノ酸がありましたよね。
でも、自分で作れないものをどうやって摂取すればいいのか。
この問題は、この栄養素を自分で合成している生物を食べることによって解決します。
これこそが、私たちが肉を食べるように生まれついている宿命ですね。

荒川弘著『百姓貴族2』というめちゃ面白いコミックエッセイに、北海道開拓民のご先祖は、豚と同じものを食べていたという壮絶な話がありましたが、同じものを食べても、人間が合成できなくて豚には合成できる栄養素があるんですねえ。
豚に感謝です。
なんまいだぶ。

草食系の人、大丈夫ですか?

豚の餌といえば、『ヴィエ・デル・グスト』誌によると、
「イタリアで生ハムなどに加工される豚は、オメガ6系多価不飽和脂肪酸が豊富な餌を食べているので、かつてに比べて生ハム類に含まれるコレステロールは大幅に減少している」んだそうです。

オメガ6系多価不飽和脂肪酸て、なんでしょう。
まずは、不飽和脂肪酸から見ていきましょうか。

脂肪酸は炭素原子の二重結合と呼ばれる繋がり方の数によって、二重結合がない飽和脂肪酸と、結合がある不飽和脂脂肪酸に分かれます。
不飽和脂肪酸は結合が1つの一価不飽和脂肪酸と、2つ以上の多価不飽和脂肪酸に分かれます。

つまり、脂肪酸は飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の3つに分かれます。
このうち、飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸は主にエネルギー源。
多価不飽和脂肪酸は生理活性作用で、必須脂肪酸は多価不飽和脂肪酸です。

飽和脂肪酸は肉や乳製品の脂肪に多く、常温で個体、バターなどに多く含まれます。
不飽和脂肪酸は魚の脂や植物油に多く含まれ、常温で液体。

バターはコレステロール値を上昇させて、植物油は血清コレステロール値を下げるというのが、一昔前の通説でしたよね。

飽和脂肪酸は分子構造が安定していて劣化しにくい。
脂肪酸は高温で調理するなどして劣化するとトランス脂肪酸になる。
取りすぎると心臓疾患のリスクを高める。

どうやら、多価不飽和脂肪酸というのが重要なようですが、いったいこれって何?


硬い話が続いたので、ここらでリフレッシュ!
牛愛あふれるリアル農民エッセイ『百姓貴族1話』。
都会っ子の料理人の卵さんは読んどくといーよ。





作者の荒川弘さんは『鋼の錬金術師』という大ヒット作がありますが、北海道の農業高校が舞台の
銀の匙』も面白い。
大事件はないけど、肉を食べたり料理する時にふっと思い出す。






次は脂肪酸の話の続きでーす。


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関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』2011年8月号、“イタリア産サルーミ”の記事は、「総合解説」2011年8月号に載っています。

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マリア・ルイジアの小さな街、パルマのバターとグラナの娘、アノリーニ。本物は牛と去勢鶏のブロードでゆでます。

昨日の最後にサラっと登場したアノリーニですが、このパスタ、(CIR12月号P.5)にもリチェッタが載っていました。クルルジョネスの次の料理です。花の形の可愛い詰め物入りパスタ、なんていうのがこのパスタの印象ですが、イタリア人は、こんな風に思ってるんですね。 「マリア・ルイジアの小...