2014年12月29日月曜日

カンポフィローネのマッケロンチーニ

イタリア料理を構成している地元密着食材の中でも、鮮度が重要で保存しにくいものは、現地に行かないと味わうことができない貴重品。
その昔は、白トリュフとか、クラテッロとか、ブッラータとか、それをわざわざ食べるために、現地まで出かけて行ったものです。
今はたいていのものが日本でも入手可能になって驚くばかりですが、最近の円安、ユーロ高では、輸入業者の方々のご苦労、お察しします。

ところで、まだ日本でなかなか手に入らないものもたくさんありますよね。
その中の一つが、イタリアで一番美味しい卵入りパスタと言われているパスタです。

カンポフィローネのマッケロンチーニ。
 ↓



イタリアの乾麺としては、グラニャーノの次くらいに有名。
なのに、マルケのカンポフィローネという町でしか作られていないので、外にはほとんど出回らない。
詳細は依然にブログで取り上げています。
こちら

細いタリアテッリーネで、卵をたっぷり使うのが特徴。

伝統的な定番ソースはラグーです。
そういえば、グラニャーノのパッケリも、伝統的なソースは、ナポリ風ラグーでした。

グラニャーノは、水が豊富で水力を使った粉ひき小屋がたくさんできたことで、小麦粉が豊富に手に入るようになり、乾麺の大量生産が可能になって発展しました。
鉄道や港など、交通の便も良かった。
気候にも恵まれました。

一方、カンポフィローネは、グラニャーノとの共通点は、海に近い、ということぐらい。
粉とたっぷりの卵が原料のパスタですが、粉がたっぷりあったグラニャーノと違って、卵がたっぷりあったのがこのパスタが生まれたきっかけ。

15世紀の文献にも登場するパスタのようですが、カンポフィローネは修道院を中心に発展した町で、どうやらこの修道院の勢力圏より外に、パスタは広まらなかったようです。

近年になって、なぜ世界的に有名になったのかというと、考えられる原因は年に1回8月に行われるサグラ。
マルケの海辺の町で8月と言うと、バカンス客がたくさん集まるんでしょうね。
つまり町おこしが成功したというわけです。

サグラの様子の動画はこちら

カンポフィローネのマッケロンチーニのメーカーの動画。
 ↓



イタリアの自慢の食材がいかに世界で支持されているかを示す時、なぜか必ず、「日本にも輸出しています」、と言うんですよね。
上の動画でも、日本に輸出してると言ってますが、どこで売ってるんですか?



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“ラグーのマッケロンチーニ”のリチッタを含む関連記事「乾燥パスタのふるさと」の日本語訳は、「総合解説」2012年8月号に載っています。

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2014年12月25日木曜日

パッケリ


グラニャーノのパスタと言えば、代表的なのがパッケリ。






ソースであえたり、詰め物をしたりと創作意欲を刺激するような万能な形。

一説によると、パッケリとは「ビンタ」という意味で、ソースで和えたパッケリを皿に盛り付ける時、ビンタするような音が出るからなんだそうです。
その起源はなんと古代ギリシャ語で平手打ちという意味の言葉というから、ちょっと本格的。
こういうジョークのような話は、誰が言い出したのか真偽の程は別にして、ネット社会だとあっという間に広まって定説になってしまいますね。

大型のパスタなので少しでもお皿一杯になるところから、ナポリでは庶民の味方のように扱われたパスタだそうですが、ナポリ以外では、家庭料理の中にあまり普及していない印象。


「総合解説」にも載せたソレント風パッケリは、トマトソースのパッケリですが、モッツァレッラの小角切りとトマトソースで和えてオーブンで焼くというボリューミーな一品。


カンバーニア料理のパスタの本、『マッケローニ』には、
http://creapasso.com/maccheroni.html

“じゃがいもとローズマリーのパッケリ”
じゃがいもの小角切りをパッケリと一緒にゆでて、にんにく、ローズマリー、唐辛子を熱した油に入れてジャガイモが崩れるまでマンテカーレする、というこれも家庭料理風。

“白いんげんと栗のパッケリ”は冬の料理。
乾燥豆と干し栗を戻し、別々に香味野菜とハーブでゆでて半量をミキサーにかけ、パンチェッタと一種に炒めたらゆでたパッケリをいれてなじませる。
仕上げはペコリーノとイタリアンパセリ。

確かにどれもしっかり家庭料理風ですね。

コロンナータのラルドやトマト入りじゃがいものパッケリ。
 ↓



シェフのバリバリのナポリ便をアシスタントが通訳してます。


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“ソレント風パッケリ”のリチェッタを含むグラニャーノのパスタの記事の日本語訳は「総合解説」2012年8月号に載っています。

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2014年12月22日月曜日

グラニャーノ

乾燥パスタの産地といえば、まず一番有名なのは、ナポリ県のラッタリ山地の中にある町、グラニャーノ。





パスタを効率よく乾燥させることを優先させて街並みを作った町。
ちなみに、改築したのはローマ通りとトリヴィオーネ広場、サン・マルコ広場など。
乾燥だけでなく、町の中心も駅の近くに移し、通りを結んで製品を運びやすくするなどの改良が加えられました。

乾麺のパスタ、つまり大量生産するパスタ産業の歴史を考える時、たいてい、その始まりとされるのがグラニャーノ。
乾燥パスタのふるさとと呼ばれるのにふさわしい町。

そもそもは、海に近いところから、湿り気を帯びた空気のおかげで、麺がゆっくり乾燥しました。
そのために、美味しいパスタができたんだそうです。

その海には、大量生産した乾麺を、遠く外国まで運ぶ重要な港がありました。
町を変えるだけでなく、グラニャーノとナポリを結ぶ鉄道の駅もできて、輸出網も完備されました。

さらに、グラニャーノは澄んだ水が豊富な地域で、小麦を挽く水車をたくさん作ることができました。
硬質小麦も上質のものが手に入りました。

今も水車渓谷と呼ばれるグラニャーノの小川。



ある意味、この渓谷がグラニャーノのパスタの本当の発祥地。

16世紀末頃から、グラニャーノにもぼちぼち大手のパスタメーカーが登場してきますが、元々は織物産業が盛んな町でした。
18世末に蚕が病気にやられて絹の生産ができなくなり、徐々にパスタ作りにシフトしていきます。

そういえば、アマルフィのレモンも、絹産業が不振で蚕用の桑の木をレモンに植え替えたことが、普及のきっかけでした。
イタリアのパスタやレモンが一世を風靡した裏には、日本の織物産業の発展があったんですね。

ちなみに、グラニャーノの代名詞ともいえるパスタメーカー、ガロファロは17世紀末の創業。



そして18世紀にグラニャーノのパスタは全盛期を迎えます。
代表的なパスタ、マッケローニの名前は乾麺のパスタの代名詞として世界中に広まります。
パスタの町として栄えたグラニャーノですが、戦争で爆撃を受けて破壊され、戦後は北部のライバル企業に押されて、急速に衰退していきます。

一時はグラニャーノ最大と言われたガロファロも、2014年にスペインの企業が買収しました。

最近は、IGP製品に認定されるなど、企業と料理人両方の強いバックアップのおかげで、復活をとげつつあります。

グラニャーノの歴史がかいま見れるスライドショー。





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“乾燥パスタのふるさと”の記事の日本語訳は「総合解説」2012年8月号に載っています。
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2014年12月18日木曜日

アッラ・ペスカトーラ

今日は、アッラ・ペスカトーラの話。
今月の「総合解説」では、地方料理として“リゾット・アッラ・ペスカトーラ”を紹介しています。





一応ヴェネチアの地方料理としてリチェッタを取り上げていますが、このペスカトーラ、確かにイタリア料理ではあるのですが、どこの地方の料理かというと、イタリアの海辺の町だったらどこにでもある料理なので、地方を特定するのは難しそうです。

ちなみに、『ガストロノミア大辞典』によると、
     ↓
http://creapasso.com/books.html
 
「 alla pescatoraとは、一般的にパスタ(リングイーネ、パヴェッテ)や米料理のソースを意味する名前。シーフード(軟体動物、小型の甲殻類)をトマトソースで煮たもので、にんにくとバジリコを加えることが多い。」
と書かれています。
 
ペスカトーラは。スパゲッティのソースというよりは、リゾットやリングイーネとの組み合わせのほうが一般的なようです。
 
リゾット・アッラ・ペスカトーラ。
 ↓  



別名、アッラ・マリナーラalla marinaraとか、アッラ・スコリエーラallascogliera、アッロ・スコッリオallo scogliaとも呼ばれます。
これが正しいリチェッタというものはなく、入れる食材も地元で手に入りやすい食材を使うので、バリエーションは豊富。

どうやらイタリアでは、アッラ・ペスカトーラと言えばリゾットが定番のようですが、見た目のゴージャスさから判断すると、パスタの方がインパクトがあるなあ。





ちなみに英語で言うと、シーフード・パスタという身も蓋もないネーミング。
漁師風パスタ、またはアッラ・ペスカトーラというと、一段上の料理のような印象。


リッチョーネのリストランテ・イル・ポルティコのオマール入りの豪華版スパゲッティ・アッロ・スコッリオ。

 




赤いエビと黒いムール貝は、無敵の組み合わせですねえ。


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“リゾット・アッラ・ペスカトーラ”のリチェッタは、「総合解説」2012年8月号に載っています。

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2014年12月15日月曜日

カフェラテ

今日はコーヒーの話。

早朝のトリノのカフェ。





最近、「カフェオレとカフェラッテはどう違うのか」というクイズをTVで見て以来、ちょっとひっかかってます。
なんでも正解は、「カフェオレはドリップコーヒーで作って、カフェラテはエスプレッソで作る」んだそうです。

その時は、なるほどねえ、と思ったぐらいだったのですが、ふとした時に、
ん~?
なんかひっかかるなあ。
と違和感を感じるようになりました。

イタリアのホテルでは、いつも朝食にカフェラッテを頼むのですが、その時出てくるのは、「コーヒーポットに入ったドリップコーヒー+ミルク」です。

イタリアのバールで「カフェラッテ」を注文すると、出てくるのはグラスに入った「ミルク+コーヒー」。




「エスプレッソ+ミルク」を飲みたかったら「カプチーノ」を注文しますよー。

ブリオッシュとカップッチーノのイタリアンブレックファースト。




もう1つ、私は日本では「カフェモカ」が好きなんですが、イタリアで「カフェモカ」と注文しても、注文したことないけど、多分、チョコレートシロップ入りのコーヒーは出てこない。
イタリアでモカと言えば、モカでいれたエスプレッソのことだし。

モカ
 ↓



バールでイタリア式朝食




コーヒーと言えば、今月の「総合解説」に、ちょっとショッキングなコーヒードリンクのリチェッタが2つ。
その一つは35ページに載っています。
 コーヒーソーダだって。
炭酸はガス入りミネラルウオーターで。
ありえないですよねー。




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“コーヒーの冷たいドルチェ”のリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2012年8月号に載っています。
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2014年12月11日木曜日

ヴァルテッリーナ

今日はイタリア便りです。
それでは、ロンバルディアのSegnalibroさん、お願いします。


以前通りかかった時に気になっていた、ロンバルディア州の北に位置するヴァルテッリーナ地方。
山や氷河の景観を楽しむ列車として知られるベルニナ急行に乗るため、ミラノからティラーノに向かうときにはここを通ります。
山の南斜面に沿って20km以上も葡萄畑が続き、谷間には牛がのんびりと草をはむ光景が広がっていて、一度足を止めてゆっくりしてみたいと思っていたんです。





近所のスーパーで買っているお気に入りのヨーグルトがヴァルテッリーナ地方のキウロ産だと知った時、これはやっぱり行かねばならぬと思い、片道100kmの道のりをランチしに行ってきました。
半年前に行ったペーイオ温泉で山のお食事は重いと学習したので、朝は一杯のコーヒーのみで出発したのですが、この作戦が裏目にでることに・・・。
お目当てのレストランまであとわずか5kmのところで、運転手こと相方がエネルギー切れを起こし、国道沿いの適当なレストランに入ってしまったのです・・・あぁ、はるばる2時間もかけてやってきたのに。

ヴァルテッリーナ地方では、蕎麦粉を使った郷土料理が有名です。
イタリア語で蕎麦粉は grano saraceno、サラセンの小麦って言うんです。
そういえば、おフランスには蕎麦粉を使ったおいしいガレットがありますが、フランス語でも蕎麦粉はblè sarrasin サラセンの小麦と言うそうで・・・サラセンってイスラム教徒のことですよね?
いろいろな説がありますが、蕎麦がイタリアで栽培されるようになったのは15世紀のこと。
トルコからヴェネチアへの貿易によってもたらされ、ベルガモやブレーシャで栽培されたのが始まりだそうです。
トルコ、つまりイスラム教徒からもたらされたから、サラセンの小麦と言うのかしら。
現在では生産量は多くないものの、ピエモンテやアルトアディジェ、ウンブリア、そして、ロンバルディアのヴァルテッリーナ地方で蕎麦が栽培されています。
地元でおいしいと評判のレストランで蕎麦粉のパスタ、ピッツオケリが食べたかったのに、がっかり。
落胆のあまり、お料理の写真は1枚も撮らなかったのですが、一応、ヴァルテッリーナの郷土料理を注文。
気を取り直してカメリエラ兼オーナーらしきお姉さんに、周辺の見所やお料理のレシピ等いろいろ質問してみました。
だって、お客さんは私たちだけだったのですもの。
ここで気に入ったのが、前菜で出てきたsciattシャット。 そば粉と小麦粉を衣にして揚げた、お山のチーズの天ぷらです。お借りした写真がこちら。



お姉さんいわく、粉の配合は1:1で、冷たい炭酸水と少々のグラッパを加えるのがポイントなのだとか。
シャットというのは、ここの方言でヒキガエルという意味だそうですが、確かにビヨーンと衣が伸びると足みたいに見え、カエルの唐揚げに似てるかもー。
シャットには、サラダを添えて出すのがオーソドックスなのだそうです。
なんだかんだ言いながらデザートまでしっかり平らげた後、お姉さんが持ってきた1枚の紙切れはお会計・・・ではなくて、ギッシリ手書きで埋まったメモ用紙、ヴァルテッリーナ料理のレシピでした。



プライスレスなプレゼントに思わずウルウル。
メモを手渡しながら、ちょっと照れていたお姉さんが可愛かった。
彼女のおかげで、相方と喧嘩したまま帰らずにすみました。
感謝! お食事の後は、お目当てのヨーグルトのお店をお姉さんに教えてもらい、プチ大人買い。



これこれ、Latteria Sociale di Chiuroのヨーグルト。
1957年に小規模の酪農家が集まって生まれた、ヴァルテッリーナ地方の乳製品組合が作っているものです。
牛乳やチーズも販売しているのですが、どれもこれもパッケージのデザインがかわいい。
ここのヨーグルトはおいしさのあまり、蓋の裏まで舐めてしまうんですが、舐めてびっくり、蓋の裏にまでデザインが入っているこだわりよう。
そんなこだわりは、もちろん味にも表れていて、どれもこれもおいしく、牛乳、バター、お山のチーズも購入。
さらには直売所でワインやりんごなど地元でとれたものを購入し、大満足で家路につきました。
お山の住人は頑固で閉鎖的だと聞いていましたが、ここの人たちはみんな親切で温かかったです。
さて数日後、家の近くでヴァルテッリーナ郷土料理を食べられるところはないかと探していたところ、ミラノのオサレ~な界隈、コルソコモの近くに、Sciatt à Porter というお店があるのを知りました。
http://www.sciattapoeter.it/
田舎のヴァルテッリーナ料理がオシャレに味わえそうなお店です。
お店の名前の通り、ヒキガエルこと、シャットもあります。
これ、アペリティーボのおつまみにしたら、パクパクいけちゃいますよ。
ちなみに、ここのシャットは、ガンベロロッソの2015 Street FOODというガイドブックで、ロンバルディア州のストリートフードNO.1に選ばれたのだとか。
ほほー、王冠マークがついてます。



他の州のNO.1ストリートフードも気になるところです。 ガンベロロッソ2015 Street FOODは、ただいまクレアパッソにて、好評発売中でーす♪
(詳しくはこちらのページ)



おまけの動画です。
ヴァルテッリーナ風シャットの作り方。



Sciatt à PorterのPV

そば粉の衣にチーズを詰めて揚げると、そばもイタリアンに変身ですね。

Slow Food の“ricette di osterie d'italia”シリーズの『クチーナ・レジョナーレ』から、オステリア・デル・ソーレOsteria  del Sole (Ponte in Valtellina)のリチェッタをどうぞ。

シャットSciartt
材料/4人分
 小麦粉・・200g
 そば粉・・200g
 グラッパ・・大さじ2
 チコーリア・セルヴァティカ
 カゼーラ・ジョーヴァネ(冬の間造られるビットの一種のDOPチーズ)・・2握り
 揚げ油 
 EVオリーブオイル
 水・・大さじ1
 ビネガー・・大さじ1 
 塩
・小麦粉とそば粉を混ぜ、塩、グラッパ、冷水を加えて柔らかいポレンタ状の生地にする。最低3時間休ませる。
・チーズを角切りにして生地に入れる。スプーンですくって180度に熱した揚げ油に落として揚げる。
・約4分揚げてこんがり色が付いたら取り出し、チコリーノ(塩、ビネガー、オリーブオイルで調味する)を添えてすぐにサーブする。



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2014年12月8日月曜日

ピアディーナの仲間

今日はピアディーナの仲間の話。
piadina はピアーダpiadaの縮小形。




小麦粉、塩、水、ラードがベースの発酵させない平らなパン。
ルーツは、酵母入りパンが発明される前から、つまり文明誕生前から作られていたパンですが、
時代と共に徐々に複雑になっていき、公式的には、中世にロマーニャ地方で広まったパン。
それが、20世紀になって、ロマーニャに海水浴に来たバカンス客によって再発見されて広く普及しました。

このタイプの平たいパンは、ヨーロッパ、アジア、北アフリカを結ぶルートで広まったそうですが、アジアはインドをさっとかすめた程度。
チャパティ
 ↓




チャパティの動画はこちら

レバノンのマヌーシュ(動画)も、かなり似てます。
 ↓


ピアディーナの動画はこちら

意外とあるもんですね。


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2014年12月4日木曜日

ナポリ人気質

まず、なすのパルミジャーナ。
スライスして揚げたナス、トマトソース、チーズを重ねたオーブン焼き。
それでは質問です。
これはどこの地方の料理でしょう。




多分、シチリアと答える人が多いのでは、と思うのですが、ナポリでこの料理を習った人は、ナポリ料理と信じて疑わないはず。

この料理は、シチリアとナポリで本家争いが繰り広げられている料理なのですが、『サーレ・エ・ペペ』では、この料理の説明の一番最初に、まず、ナポリ人気質というものをこんなふうに説明しています。

「陽気で人がいいけれど、極端に排他的。
ナポリ料理は、ナポリ人にとってただ一つの本物の料理だ。
彼らはナポリが生み出した美食文化に誇りを持ち、自分たちが元祖であることを全力で主張する。
もしパルミジャーナがシチリア生まれだ主張すれば、
古いリチェッタや料理界の権威がナポリ料理を讃える文献を持ち出して、徹底抗戦を始めるだろう」

これを書いたのは、ナポリ人ですが、ナポリをイタリアに置き換えれば、外国人がイメージするイタリア人気質そのものだなあ。

しかも、この料理の名前、シチリアではmelanzane alla pramigianaですが、ナポリでは、parmigiana di melanzane なんだそうです。

どっちでもいい気もしますが、『サーレ・エ・ペペ』では敢えてナポリ風のパルミジャーナのリチェッタを紹介しています。

カゼルタのリストランテ・ラ・コロンネのシェフのparmigiana di melanzane
 ↓


今月の「総合解説」では、もう1つ、ナポリがらみのネーミングの食材を紹介しています。
パーネ・カフォーネですpane cafone。

サワードウの田舎風パン。
 ↓
 


以前ブログで紹介した時(こちら)とは別の説です。

もしイタリア語の辞書をお持ちでしたら、cafoneカフォーネという言葉の意味を調べてみてください。
私の辞書には、「(ナポリで多くいる)田舎物、粗野なやつ」
と書いてあります。

ナポリ限定ですよ。
なんだか、すごく失礼で差別的な言葉なんですね。
これをそのまま訳す気にはなれなかったのですが、イタリア語の原文では、
「発祥地であるナポリの下町の活気を言い表した名前」と、とてもスマートな解釈がされていました。

ナポリ名物洗濯物。




パーネ・カフォーネ



カフォーネはアメリカにも伝わって、スラングとしても使われている言葉のようです。

とにかく、ナポリはイタリアのいじられキャラ。

ナポリで行われたヌテッラ誕生50周年のイベントで、ヌテッラを食べた時のリアクションを教えたくださいというインタビュー。
(こちら)
ナポリ人、みんなノリノリですねー。
愛されキャラだなあ。

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関連記事、“なすのパルミジャーノ”と“伝統的なパンのとサンドイッチ”の日本語リチェッタは、「総合解説」2012年8月号に載っています。

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2014年12月1日月曜日

トマトソースのスパゲッティに合うワインとビール

今日はワインの話。
唐突ですが、トマトソースのスパゲッティに合うワインって、どんなのでしょう。

基本中の基本のような気もするけどあんまり考えたことなかったなあ。
そこで、ローマのホテル・ローマ・カヴァリエーリ(ちなみにシェフはハインツ・ベツク)のソムリエ、マルコ・レイタノ氏を含む、ガンベロ・ロッソの専門家たちの意見を聞いてみましょう。

1位に選ばれたのは、ポッジョ・レ・ヴォルピのフラスカーティ・スーペリオーレ・エポス2010。


カンティーナのhpはこちら

カンティーナのPV

ワインのページはこちら

フラスカーティで栽培された地元品種のぶどう、(マルヴァジーア・ディ・カンディア、マルヴァジーア・プンティーナ、トレッビアーノ)を使用した地ワイン。
ガンベロ・ロッソでは何度もトレ・ビッキエーリに選ばれていて、ガンベロ・ロッソお気に入りのフラスカーティのようです。
日本でも手に入りやすいワインのようなので、ぜひ、トマトソースのスパゲッティと組み合わせてみてください。

順位外ですが、相性のよいビールというのも選ばれています。
それは、ドゥカートのヴィア・エミーリア。



ちなみに、このビール、前回のブログで紹介した消費者のタイプ別お勧めビールで、ビール通でない人向きのビール(ウンチクは気にしないサッカーのお供用)に選ばれています。

ドゥカートのhpはこちら

ビールのページはこちら

最近のイタリアのソムリエは、ワイン以外の泡を勧めるようになってきたそうで、ヴィア・エミーリアは万人向けのイタリア産クラフトビールの代表格のようです。
下面発酵、ドイツのテットナンガー産ホップを使用した無濾過のケラーピルス。
2010、2012、2014年のワールド・ビア・カップ、ケラービア部門銀メダル。
イタリアで最高のピルスの一つという評価を獲得しています。
産地繋がりでパルマの生ハムにも合うそうですよ。

ヴィア・エミーリアのテイスティング動画


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“トマトソースのスパゲッティに合うワイン”と“ビールと消費者”の記事の日本語訳は、「総合解説」2012年7月号にのっています。

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2014年11月27日木曜日

モンテジョーコ

今日はビールの話。
なんでも、イタリアのビール業界は活況を呈しているようで、あらゆるタイプの消費者をターゲットにしたビールが次々と造り出されています。
そんなわけで、クチーナ・イタリアーナ誌は、ビールの消費者を4つのタイプに分類して、それぞれにお勧めのビールを紹介しています。

1.ビール通→一般的なビールにはあまり興味がない。
2.ビール通でない人→サッカーを観ながら喉の渇きを癒すためにビールを飲む
3.女性→アルコール度が低くワインより気軽に飲めるのでビールを飲む
4.セリアック病の人→グルテン過敏症などでビールが飲めない

あなたはどのタイプですか?

1の人は、傾向として、珍しい、小さな造り手、古い醸造方法、複雑な香り、特別なモストのスパイシーなビールを求めています。
 
ベルギーや北欧産が人気ですが、イタリア産なら、モンテジョーコのラ・ムンミアLa Mummiaがお勧め。
 ↓


ラベルに描かれている通り、ムンミアとはミイラのこと。
長期間寝かせていることの隠喩です。

ランビックスタイルのサワーエール。

バルベーラに使った数種類のバリックで3年寝かせてから瓶内で再発酵。
スプマンテのような泡、ワイン香、野の花の香り、デリケートな柑橘フルーツ風味、エレガントな酸味、最後にくる塩気。

テイスティング動画

モンテジョーコのhp

ピエモンテの造り手で、2005年創業。
地元のワイン用のバリックを使っているのが特徴。
イタリア産のサワーエールではナンバー1と言われていて、もうアメリカには輸出しています。

下の写真は同じくモンテジョーコのビール、デーモンハンター。
 ↓



アルコール度8.5%。
濃い琥珀色、イギリス産ホップを使ったアングロサクソン系ビール。
ドライいちじく、カラメル、ベリーの香り、強い味。

ベースとなるビールはルーナruna。
ベルギースタイルのペールエール。
こんなビール→写真

クラフトビールは色んな種類があって楽しいですねー。
今晩は地ビール飲むかなあ。



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“ビールと消費者”の記事の日本語訳は、「総合解説」2012年7月号に載っています。

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2014年11月25日火曜日

ペペロナータ&Co.

今日はペペロナータの話。
いや~、ペペロナータpeperonataによく似た料理って、イタリア各地にあるんですねー。

ペペロナータとミートボール。
 ↓


リチェッタの動画はこちら
パプリカ、玉ねぎ、トマト、にんにく、オリーブオイル、塩の6つが基本の材料。
ペペロナータのリチェッタに地中海の野菜やハーブを加えれば、アレンジは自由自在。
「グランデ・エンチクロペディア」によると、
ラツィオには、パフリカの皮をあぶってむいてから煮るバージョンがあるそうです。
ペペロナータは煮る時間が長いのが難点ですが(しかも翌日のほうが美味しい)、こうすると調理時間が短縮できます。

てっきり南イタリアの料理かと思っていたら、「グランデ・エンチクロペディア」にも、「リチェッタ・ディ・オステリーア・ディ・イタリア」にも、元々はエミリア地方の料理、と書いてあります。
とすると、このピアチェンツァのルスティサーナrustisanaは、ルーツ候補ナンバー1。
 ↓


同じくパプリカが主役ですが、ペペロナータより色んな野菜が入ります。

さらに、“リチッタ・ディ・オステリーア・ディ・イタリア”シリーズの「リチッタ・レジョナーレ」では、ペペロナータのリチェッタを提供しているのは、アスティ(ピエモンテ)のアグリトゥーリズモ。
それというのも、アスティは、クアドラータ・ダスティquadrata d'Asti という品種のピーマンの産地として有名なんです。
肉厚のクアドラータ・ダスティ
 ↓



なすが主役だとパレルモのカポナータcaponata。
 ↓


カポナータのリチェッタの動画はこちら

地中海野菜のごった煮は、ナポリだとチャンフォッタcianfotta。
リチェッタの動画はこちら




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“ペペロナータとその仲間”のリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2012年7月号に載っています。

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2014年11月20日木曜日

ナポリのフリット

ナポリのフリットの話、続けます。

今月の「総合解説」の“ナポリのフリット”の記事では、ピツッェッレのほかに、アランチーニやクロッケ、パンツァロッテイなどのリチェッタも紹介しています。
そこで、これらを食べることができるナポリの有名なフリッジトリーアを1軒ご紹介。
フリッジトリーア・ヴォーメロです。
 ↓



揚げ物をコーン形に巻いたシートに入れて売るのは、欧米ではよく見かける光景。
イタリア語では、このシートのことをcuppetielloクッペティエッロといいます。
下の写真はちょっとお上品な一品。




揚げポレンタことscagliozziスカッリオッツィも、冬のフリッジトリーアの名物。
 ↓



パスタの揚げ物は、frittatine di pastaフリッタティーネ・ディ・パスタ(またはマッケローニ)。
残り物のパスタを使えば本格的。




なんだか、スプマンテ飲みたくなってきたなあ。

最後に、ナポリのフリットのおすすめ本は、その名もフリット・ミスト
http://creapasso.com/maccheroni.html


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ナポリのフリツトのリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2012年7月号に載っています。

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2014年11月17日月曜日

ナポリのフリット、ピッツェッレ

今日はナポリのフリットの話。

ナポリ料理には様々な名物フリットがありますが、なぜか北イタリア、ましてや外国にはあまり広まっていないようです。

“ナポリのフリット”のシンボルの一つが、“ピッツェッレ”ですが、これもちょっとマイナー。
別名、ピッツァ・フリッタとも呼ばれます。

ナポリでも貧しい地区のストリートフードとして誕生した一品です。
ヴィットリオ・デシーカ監督の1954年の映画『ナポリの黄金/L'oro di Napoli』には、ナポリの道端で揚げピッツァを売る男が登場します。
奥さんは若きソフィア・ローレン。
こんな色っぽいおかみさんが揚げ物売ってる裏路地、ちょっと絵になりすぎ。




この夫婦は、生地を伸ばすのが奥さんで、揚げるのがご主人の仕事。
一般的にはピッツァイオーロのご主人が生地を伸ばすのですが、この映画の場合は、この設定が伏線になってます。

ちなみに、なじみ客の支払いはつけが普通。
一説には、8日たったピッツァと同じ値段、つまり格安で売ったので、今食べて8日後に払う、という意味の別名で呼ばれていたとか。

ナポリのピッツァには、よく知ってる焼いたピッツァとは別の顔があったようです。
食べると美味しいけどね。

現代版ピッツェッレ。
 ↓




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ピッツェッレを含むナポリのフリツトのリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2012年7月号に載っています。

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2014年11月13日木曜日

イエージ

今日はイエージの話。
イエージと言えば、ヴェルディッキオ。
ヴェルディッキオ・なんちゃら・なんちゃら・イエージ、のイエージです。

ヴェルディッキオはイタリアの代表的な白ワイン、またはぶどう品種。

メイド・イン・イタリーのぶどうシリーズの切手。
マルケ代表。
 ↓



なんとこのワイン、「イタリアワイン界のみにくいあひるのこ」と呼ばれていたんだそうです。

つまり、あひるのこは、品質を追求した一部の有名生産者の力によって、白鳥になって世界に飛び立っていったんですねー。

ちなみにフルネームは、ヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イエージDOC。

ヴェルディッキオのことは知っていても、カステッリ・ディ・イエージのことは全然知らない、のでは?

イエージはもちろん町の名前。
イエージの城(複数形)というからには城がたくさんある地方なのか。
なんでも、強力な王がいたのではなく、大領主の城を中心に開けた集落が集まった共同体なんだそうです。
つまり城下町の集まりですねー。
城下町というのは防御のために町を壁で囲む形に発展していくそうですが、イエージの城々も壁で囲まれています。
城の数は12とも14とも16だったとも言われて、ちょっとあいまい。
でも、共通点は、そのレンガの色。
マルケのこの地方のレンガはパンの皮の色と呼ばれているそうです。

パンの皮の色のイエージの壁。
 ↓



壁の上には通路があって屋根つき柱廊のようになっています。
その上は3~4階建ての住居部分。

カスカテッリ地区の大きな集落の一つが、クプラモンターナ。
こんな町→動画
小さな集落の一つ、モッロ・ダルバはこんな町→動画

マルケのは丘陵地帯で、海風を受けるため、オリーブやぶどうがよく育つと言われています。
ヴェルディッキオには、カステッリ・ディ・イエージと、マテリカという、2つの有名なDOCがあります。
この2つは、個性が全く違うワインなんだそうですが、その違いを生む最大の要因も海風。
カステッリ地区は海風を受ける比較的海に近い場所にあって、マテリカはもっと内陸にあります。

イエージが海に近いというイメージはなかったけど、イエージの壁は、トルコの海賊の襲撃から守るという目的もあったそう。
町の前を流れている川をさかのぼって来たのかなあ。

とにかく、海風によって、同じヴェルディッキオでも一段とフレッシュで、フルーティーでフローラルで繊細な風味が生まれるんだそうです。
一方、海の影響が少ない内陸のマテリカのヴェルディッキオは、頑丈なボディーを持った、長期熟成に耐える、なめらかなコクを持ったワインになるそうです。

マルケ名物、オリーブのアスコラーナでもつまみながらヴェルディッキオ飲めたら幸せだな~。






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グルメガイド“イエージ”の日本語訳は、「総合解説」2012年7月号に載っています。

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2014年11月10日月曜日

マテーラ

今月の「総合解説」のグルメガイドで紹介している街は2つ。
その一つが、バジリカータ州のマテーラ。



その洞窟住居は世界遺産だし、現実離れした幻想的な光景を、ぜひ一度見てみたいと思って訪れる人も多いはず。
かくいう私も、その一人でした。
町の中を歩き回って不思議な世界だなあ、などと感じ、コジャレたレストランに入ってオシャレな町だなあ、なんて思って、今度はこの中のホテルに泊まりたいなあ、なんて無邪気に思っていました。

でも、グルメガイドのマテーラの話は、ショッキングな話から始まりました。

「マテーラのサッシ地区は、国の恥として解体する法律も認可され、数百人の住民はみじめな極貧の生活を送っていた。
家畜と一緒の家に住み、子供の死亡率は第三世界なみだった・・・。」

国の恥と言われてたなんて。
現在の観光地化した町しか知らないと、とても信じられません。

とても楽しげなミニマテーラの動画。





1963年のマテーラ



さらに昔のマテーラは、こんなに活気あふれる町でした。
動画


詳しい町の歴史はwikiでもどうぞ。
こちら


バジリカータは、イタリアの中でも何故か一歩引かれているような州です。
バジリカータのことを語る時は、外国のように他人事な雰囲気。
というか、そもそも滅多に語りません。
地方料理に関しても、圧倒的に情報不足です。

多分、一番有名なマテーラ名物、パーネ・ディ・マテーラ。
動画

こんなに美味しいものができるんだから、素晴らしい食文化があるはず。

このパンの歴史にも、マテーラの浮き沈みは影響していました。
町が栄えていた頃は、このパンは各家庭で生地を作って町の共同かまどで焼いていまいした。
ところが、サッシが消えるにつれてこの習慣も消滅します。
ただ、素晴らしいのは町と同じで、このパンも復活するのです。
数件のパン屋さんによって伝統が守られて、完全に消滅することはなかったんですね。

2019年の欧州文化都市(wiki)に選ばれているマテーラ。
町の発展にも一層弾みがつくことでしょう。


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“マテーラ”のグルメガイド記事の日本語訳は「総合解説」2012年7月号に載っています。

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2014年11月6日木曜日

リグーリア料理

今日はリグーリアの話。
下の2枚の写真は、リグーリアの世界遺産にも登録されている町、ポルトヴェーネレです。
リグーリアのリヴィエラと呼ばれる沿岸部は、現実のものとは思えないような美しい風景が続きます。






次の写真はジェノヴァを海から見た風景。
都市の背後に山が迫っています。




海と山にはさまれた細い土地がリグーリアです。
海には立派な港ができて、リグーリアは、海を向いて外の世界とつながってきました。
沿岸と内陸は、距離的には近いのに、コミュニケーション的には遠く隔たっています。

ジェノヴァの町と内陸を結ぶ鉄道、ジェノヴァ-カゼッラ鉄道
内陸にちょっと入っただけで都市部とはまったく違う顔。
 ↓



沿岸の大都市と内陸を結ぶ小さな鉄道です。




リグーリアの沿岸部を観光で訪れると、きれいだなあ、で終わってしまいますが、今月の「総合解説」には、

「リグーリア料理は、一般的なイタリアの地方料理とは違って、歴史ではなく、地形が作った料理だ」
という深~い一文があります。

リグーリアの地形は、平地が少ない。
畑も山の急斜面に作らなくてはならないのでこんな状態。
 ↓



こんな段々畑では、リグーリア中の需要をまかなうだけの収穫は、とうてい望めません。
そのため、リグーリア人は、あるものなら何でも工夫して使う、という技を発達させました。
天性の節約家で、ゼロから奇跡的なまでに美味しい料理を作り出すのがリグーリア人気質なんだそうですが、これは時には、ケチと呼ばれます。

さらにもう1つ、耕すだけでも大変そうな畑ですが、地中海の恵みを受けた温暖な気候のおかげか、オリーブをはじめとする作物は、上質なものができます。
なので、沿岸と内陸が出会った時、素晴らしい化学反応が起きるのです。
ついでに言えば、西がフランス、北がピエモンテで、洗練された食文化の影響もたっぷり受けました。

そんなドケチで多面性を持つリグーリア人が作った傑作料理の一つが、フィオーリ・ディ・ズッカのリピエーニです。




これが、こうなります。


フィオーリ・ディ・ズッカ料理は色々ありますが、花を、一般的な食材を使ってボリュームのある一品料理に変えてしまうという観点で見ると、なるほど、よく工夫されています。

きれいなところだけ見ていても、本質は分らない。

チンクエテッレ。
きれいだけど、暮らすのは大変かも。




リヴィエラ・ポネンテ(西海岸)の内陸部を紹介する動画→こちら

そういえば、リグーリア料理の話をするとき、エントロテッラ(内陸部)というワードは欠かせません。


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“フィオーリ・ディ・ズッカ、リグーリア風”のリチェッタと記事の日本語訳は、「総合解説」2012年7月号に載っています。

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2014年11月4日火曜日

テオ・ムッソのバラデン

前々回のブログで紹介した手作りスピリットの記事では、テオ・ムッソという人物も紹介しています。

この人、イタリアのビッラ・アルティジャナーレ(クラフトビール)の一番有名な造り手なんだそうです。
テオ・ムッソ氏の別名は、パパ・デッラ・ビッラ・アルティジャナーレ。

一人の天才の出現によってイタリアの美食業界に革命が起こったかのような、手放しの褒め称えようです。
ビールはワインにできないことができる、ということを、彼のビールによってイタリア人は発見したようです。

彼のビール工房の名前はbaladinバラデン。
webページはこちら

ビール以外にも、ソフトドリンクからパネットーネまで、手広くやっています。
ワインとビールの融合も彼の取り組んでいるテーマの一つ。

下の写真はファッロとオルゾから造ってワイン用の樽で寝かせたバーレーワインという分類のビール、『ルーネ・リゼルヴァ・テオ・ムッソ2010』。
アンテイノーリ、リヴィオ・フェッルーガなど、イタリアの大手ワイナリーとの共同生産。
写真はノルウェーのオスロでの発表会の模様。
 ↓



自作のビールについて語るテオ・ムッソ氏




ルバーブやアマルフィのレモンなどから造ったソフトドリンク、“スプーマ・ネロ”、カラブリアとガルダ湖のチェードロから造ったチェドラータなど、とにかく自由奔放で繊細な発想が次から次へと湧き出ている人のようです。
バラディンのソフトドリンクのCM?
  ↓



最新作は、国産ホップを使ったイタリア初の100%イタリア産のビール、その名もナツィオナーレ。
このビールのテイスティング動画はこちら。 

何をやっても成功してしまうまさに時代の寵児。
でも、ビッラ・アルティジャナーレの造り手は彼だけではないようで、というかむしろ、彼の成功に触発されて、続々面白い造り手が表れているようです。
目が離せないですねー。



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“自家製スピリッツ”の記事の日本語訳は「総合解説」2012年7月号に載っています。
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2014年10月30日木曜日

キャロブ


今日はイタリア便りです。
では、segnalibroさん、お願いしまーす。


町内の八百屋さんの軒先も、すっかり秋の装いになりました。
 
carrube


栗にかぼちゃに・・・えっ、この豆みたいなの、なに?
初めて見ました!

carrube


八百屋のおじさんに尋ねたところ、昔はシチリアでよく食べられていたけれど、今はもう馬や牛しか食べないかも・・・。
Frutta dimenticata忘れられた果実の一つで、Carrubaというのだと教えてくれました。
これ、鞘を乾燥させたもので、鞘ごとかじるのだそうです。
味見用に数本いただいちゃいました。
種は固くて食べれないから出すように、とのこと。

carruba


ほんのり甘味があって、なんというか、敢えて言うと、干しイモを食べているみたい。
テレビを見ながら食べると、女子にはクセになりそうな味です。フフフ。
帰宅後、早速調べてみました。
カッルーバ。日本語ではイナゴ豆。
キャロブとも呼ばれていて、wiki先生によると種は均一性が高く、昔は重さの単位として使われていたそうで、宝石の質量を表す単位カラットの語源はこれなんだとか。
その話、聞いたことあるかもー!!
夏にシチリアに行った時、車窓に見える特徴的な植物は3種類あると聞きました。
うちわサボテンと、100年に1度しか花が咲かないと言われるリュウゼツ蘭(しかし、ボコボコ咲いていた)、そしてカラットの語源になったキャロブの木だと教えてもらったのですが、キャロブだけ分からなかったんです。
あー、これがキャロブなのね。
豆みたいだけれど、木なのかな?
キャロブは地中海沿岸原産の植物で、イタリアではトスカーナが分布の北限らしいのこと。 私の住む地域にはないので、ネットからお借りしたお写真がこちら。

carrubo


うーん、こんな大木の木陰で、本を読みながらお昼寝したら気持ちいいだろうなぁ。
キャロブは高さ7~10mの常緑樹。
ゆっくりと成長する木で、樹齢500年になるものもあるそうです。
丈夫なので、家具や工具類の持ち手、煙草のパイプなどに使われるのだとか。
キャロブのテーブルセットとか、

legno di carrubo

クルミとキャロブのライティングデスク。19Cのアンティーク。

noce e carrubo

Amazon.itでは、キャロブの木で作ったお箸と箸置きのセットが販売されていました。
シチリアのラグーザでは、現在でもキャロブの実を収穫しているそうですが、ラグザーノ cosacavaddu という伝統のチーズを作る際には、大桶と押し型は栗の木、撹拌する棒はオレンジの木、そしてキャロブの薪で温めたお湯を使うというのが古くからの方法なのだそうです。
こんなチーズです。おいしそう。

cosacavaddu

さて、この話を日本でヨガの先生をしている幼馴染に話したところ、ベジタリアンはチョコレートの代わりにキャロブのお菓子を食べてるよ、と教えてくれました。
キャロブの実のパウダーを使うと、動物性食品を含まないチョコレート風味のお菓子が作れるのだそうです。
なるほどー。
イタリアでのキャロブのレシピを調べてみると、パウダーをパスタやニョッキに練り込んだり、タルトやビスコッティに混ぜたりするものが多いようです。
また、実を粗く砕いて数日間水につけたものを漉して煮詰め、シロップにする、というものもありました。
お好みで、レモンやオレンジの皮を加えてもいいそうですが、昔は咳やのどの痛みに効くとのことで、このシロップを飲んだそうです。
さらには王道、アルコールに漬けるというのもありました。これは、サルデーニャ産。

liquore di carrube

サルデーニャのリキュールといえばミルトですが、これも同じく食後酒。
デザートと一緒に飲んでもよいし、ジェラートに添えてもよいとのこと。
チョコレート風味になるのかしら。
町内の八百屋さんのキャロブはプーリア産でした。
オリーブの木は法律で保護されて、勝手に伐採してはいけないことはよく知られていますが、プーリア州では、キャロブの木も保護の対象なのだそうです。
ちなみにキャロブの生産量は、スペインとイタリアで全体の50%を占めており、続いてモロッコ、ポルトガル、トルコ、ギリシャ・・・あれ、なんだかオリーブの生産国と重なりますね。
後日、改めてキャロブを買いに行くと、私の前に並んだ上品なシニョーラがごっそり買い占めていました。
なんだ、やっぱりイタリア人も食べるのだわー、と思ったら、レバノン出身のご婦人でした。
故郷を思い出す懐かしの食べ物で、レバノンでも鞘ごとかじるのだそうです。
キャロブはまさに地中海世界の味なんですね!!
私も気に入っちゃいました。


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2014年10月27日月曜日

ラッテ・ディ・スオチェーラ

今発売中の「総合解説」の中で、私的に一番衝撃的だったリチェッタは、
「latte di suocera」です。
日本語に訳すと「姑のミルク」です。
ぶ、不気味すぎる。
手作りキュールのリチェッタの一つなんですが、こんな衝撃的な名前の飲み物なのに、記事には何の解説もなし。
ということは、イタリア人がよく知っている飲み物なんですね。

こちらのwiki先生によると、19世紀半ばにボルトロ・ザニンといういう人がヴィチェンツァ県のズリアーノというところで造った蒸留酒で、特徴は75度というアルコール度の高さ。
ぶどうの搾り滓と高山の野草をアルコールに浸して仕上げにオークの樽で寝かせています。
なぜか不気味におどろおどろしいラベルは、1895年の販売当初からのデザイン。
ディスティッレリーア・ザニンのwebページはこちら

飲み込んだ時の喉や胃袋の焼けるような感じが、姑さんのいやみそっくりだったからこう名付けたんだって。
ボルトロ・ザニンさん、どんな嫁姑問題抱えてたの?
 ↓



ラッテという名前でも、こはく色でカラメル風味、ドライフルーツやカカオの香りが感じられるお酒なんだそうです。
でも、こんなのストレートで飲むもんじゃない。

それにしても、こんな世界的に見ても異常にアルコール度の高いお酒の造り方を家庭料理の雑誌で紹介するって、どんだけ職人気質なんだイタリア人。
しかも、親切に家庭で作りやすいようにというアレンジまで加えてるから、度数の高いアルコールさえあれば、ほんとに簡単にできちゃうんですよ、これが。

しかも、紹介しているリチェッタは、なんと牛乳で作るリモンチェッロ風という、斜め上をいくアレンジ。

この記事では、さらに、バジリコで作るバジリチェッロなるお酒まで造り方を紹介してます。



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ラッテ・ディ・スオチェーラのリチェッタを含む“自家製スピリッツ”の記事の日本語訳は「総合解説」2012年7月号に載っています。

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2014年10月23日木曜日

ベドーニ・エジディオのパルマの生ハム

今日はパルマの生ハムの話。

恒例、ガンベロ・ロッソの食材ベスト10のコーナーで、パルマの生ハムナンバー1に選ばれたのは、
ベドーニ・エジディオという地元ではよく知られたメーカー。
webページはこちら

チブス・ヴィジットパルマの同社のブース。
 
壁には「ガンベロ・ロッソでナンバー1」のポスターが、どーんと貼られています。
記事が出たのは2年前ですが、いまだに威力を発揮しているようです。
 ↓


ナンバー1に選ばれたのは、彼らの24か月熟成の生ハムでした。
ちなみに、パルマの生ハムは、9kg以上のものは最低12か月熟成させる、と定められていますが、上限はないのでたいていがもっと長く熟成させます。

熟成させると、タンパク質分解の過程でチロシンというアミノ酸ができます。
パルミジャーノのような長期熟成チーズにもあることか知られていますが、なかなか優れもののアミノ酸のようです。
長期熟成させると旨みは増しますが、その分、新鮮さやしっとり感が失われます。
ところが、このメーカーの生ハムは、コクと柔らかさと艶を合わせ持って、フレッシュさと複雑なアロマが同居しているのだそうです。
こういう味を出せるのは、特殊な機械ではなく、代々受け継がれてきた職人技。
生ハム作りは、独自の気候条件や職人の経験と腕に左右されるんですね。
熟成期間が長くなるほど、職人技の要素も大きくなるでしょう。

1963年のパルマの生ハムのPV。
50年前でも今と何も変わらず、パルマの空気と職人の腕が生ハム作りの秘密だと語っています。
 ↓



生ハムは豚肉、塩、時間が作る職人技の結晶なんですね。



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"パルマの生ハム、ベスト10"の記事の日本語解説は、「総合解説」2012年6月号に載っています。

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2014年10月20日月曜日

サン・ダニエーレの生ハム

今日は生ハムの話。

メイド・イン・イタリーの食材の代表各の生ハムですが、有名なのはパルマの生ハムとサン・ダニエーレの生ハム。

とは言っても、サン・ダニエーレの生ハムは、知名度の割には日本でお目にかかる機会はそう多くはないですよね。
そもそも、パルマとサン・ダニエーレの生ハムはどこが違うのでしょうか。

上がパルマ、下がサン・ダニエーレ。
 ↓





足がついていれば、まだ、サン・ダニエーレだと分る。
 ↓


でもこうなるともう分らない。
これはパルマの生ハム。
 ↓




なにしろ、パルマとサン・ダニエーレでは、原料となる豚は、どちらもイタリア中~北部の10の州で飼育された月齢9か月以上で重さ160㎏の豚。
どちらも、海風と山風が出会い、湿気をもたらす川がある場所。

はっきり言ってそっくり。
ところが、そんな両者が、決定的に違う点が一つあるんです。
さー、なんでしょう?

熟成期間?
確かに違うけど、法律で定められているのは最低熟成期間で、違いは1、2か月の範囲です。

答えは、ずばり生産量。

パルマの生ハムの生産量はサン・ダニエーレの生ハムの3倍以上です。
そもそも、サン・ダニエーレの生ハムは、サン・ダニエーレ・ディ・フリウリというコムーネだけで造られています。
造り手は約30軒で、年間生産量は270万本。
一方、パルマの生ハムの管理組合に属する造り手は、パルマ県全域に約160軒。
年間生産量は900万本。

イタリアの食材の場合、日本で普及するかどうかは生産量がたっぷりあるかどうかにかなり左右されると思うので、この少なさじゃあ、日本まではなかなか入ってきませんねえ。

なので、サン・ダニエーレの生ハムは、機会があったら、必ず味見しといたほうがいい食材ですねー。

サン・ダニエーレの見分け方を教える動画。
 ↓


サン・ダニエーレはフリウリのウーディネ県の町。
生ハムの生産者が中心となった生ハム祭り。
 ↓

 

サン・ダニエーレはこんな町




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参考にした記事、“パルマの生ハム、ベスト10/ガンベロ・ロッソ”の日本語訳は「総合解説」2012年6月号に載っています。

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2014年10月16日木曜日

ファビオ・バルバッリーニシェフ

今日はヴァッレ・ダオスタのリストランテ、ラ・カッソーレのシェフの話。
ヴァッレ・ダオスタの高級ホテル・モンブラン・ヴィラージュ内のレストランで、2011年にミシュラン1つ星になりました。
店名は、La Cassoletteと書きます。
発音違っていたらごめんなさい。
ヴァッレ・ダオスタはフランス語も公用語だそうで、前回のお題のサルデーニャのカッソーラがスペイン系だということを考えると、まったく、イタリアはふところ広いですねー。
ところで、「総合解説」2012年6月号では、ファビオ・バルバッリーニ氏をこのレストランのシェフとして紹介しています。

彼の料理はとても独創的で、高級食材を使うツボを心得ている、という印象を受けました。
山小屋風レストランにはもったいないほどの洗練されたシェフだなと思ったら、実は彼は、アンティカ・オステリーア・デル・ポンテのエツィオ・サンティン氏の秘蔵っ子だったんですねー。
『クチーナ・エ・ヴィーニ』にこの記事が出た2か月後には、アンテイカ・オステリーアの新シェフとしてサンティン氏の元へ移ってしまいました。

新旧のお二人。
新人は1974年生まれ。




アンティカ・オステリーア・デル・ポンテのシェフとして料理を紹介するバルバッリーニシェフ。
料理はファッソーネ牛のカルパッチョのラスパドゥーラがけ。
 ↓



「総合解説」に載せたリチェタは、ホワイトアスパラガスに椎茸とキヌアを組み合わせたり、そのキヌアもコライユで煮たり、かぶのカンディートをカンパリソーダで煮るなど、料理の色彩もなかなか面白いです。
発想が自由自在な人のようです。

今後の活躍が楽しみですね。

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リストランテ・ラ・カッソーレのファビオ・バルバッリーニシェフのリチェタは、「総合解説」2012年6月号に載っています。

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2014年10月14日火曜日

サルデーニャのカッソーラ

今日はサルデーニャ料理、カッソーラcassolaの話。
サルデーニャ風ズッパ・ディ・ペッシェです。
こんな料理(動画)、(写真)。

イタリア各地にあるズッパ・ディ・ペッシェと比べて、どこが違うかいうと、サルデーニャの地魚とトマトを使う、ということ以外、あまり見つかりませんが、バリエーションとしてゴージャスにしたい時は
・イセエビを入れる。
・パンの代わりにフレーグラを入れてスープを吸わせる、というのが、いかにもサルデーニャ風。

フレーグラはアサリやイセエビが有名ですが、見るからにシーフードと相性がよさそう。
ムール貝とヤリイカのフレーグラ。
 ↓


しかし、カッソーラという、おそらく鍋(カッセルオーラ)という言葉が語源だろうと考えられるこの名前、どこにでもありそうでややインパクトインに欠けます。
本場とみなされているのはカリアリ。

サルデーニャ料理を語る時に必ず出てくる話題、サルデーニャ人は元々は海の暮らしとは無縁だった、つまりサルデーニャの伝統料理は、漁師より羊飼いと農民の暮らしに深く根付いている、という話。
どこから見ても立派な魚料理のカッソーラも例外ではなく、ルーツはスペイン料理のようです。
でも、カッソーラは今ではサルデーニャを代表する重要な料理なんだそうです。

数年前から、9月末~10月初めに、オリスターノ県のネオネーリという町で、フレーグラとカッソーラ祭りと言うのが開催されています。
島の中央部にある町で、東西南北、どこをみても海からは遠く離れています。
そんな場所でズッパ・ディ・ペッシェの祭りというのはとても不思議ですが、どうやら、主役はフレーグラで、カッソーラは脇役のよう。
シェフたちのコンクール形式でフレーグラ料理を競いあいます。

去年の祭り

カッソーラは要予約というレストランが多いようですが、カリアリで、予約する価値がある店として『サーレ・エ・ぺぺ』誌が勧めるのは、アンテイカ・オスタリーア。
店のwebページはこちら


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“サルデーニャ風カッソーラ”の記事とリチェッタの日本語訳、お勧めレストランの情報は「総合解説」2012年6月号に載っています。

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2014年10月9日木曜日

フォカッチャとワイン


今日はワインとフォカッチャの話。
総合解説」2012年6月号には、“具を挟むフォカッチャ”のリチェッタを載せましたが、さらにもう1つ、“フォカッチャに合わせるワイン”と言う記事も訳しています。
どちらも『サーレ・エ・ペペ』の記事で、リチェッタを紹介した具を挟むフォカッチャに合わせたワインを選んでいます。

まず、具を挟むフォカッチャとは、間に具を挟んだり、生地に具を練り込んだりした、“フォカッチャ・ファルチータ”と総称されるフォカッチャです。

ガーリックとチーズのフォカッチャ。
 ↓


アーテイチョーク詰め
 ↓



リチェッタを紹介しているのは、トマトのフリッターの具、ジャガイモと玉ねぎのフォカッチャ・ラグザーナ、ズッキーニとミニトマト入り、オリーブのマリネ入り、パプリカ、アンチョビ、バジリコの具、サルシッチャと玉ねぎ入り、と、どれも地方色があって素朴。
具は野菜が中心です。

これらには、どんなワインが合うのでしょうか。
ソムリエのサンドロ・サンジョルジ氏のお勧めを見てみましょうか。

まず、ワインを選ぶ時の基本は、ワインと炭水化物の組み合わせのルールが合てはまります。
つまり、詰め物をフォカッチャなしで食べる場合より、味が薄まります。
だから、ワインはボディーが強くないものが合います。
例えば、サルシッチャ単独なら、エネルギーがあるバルベーラ・ダスティ。
フォカッチャの具にしたら、軽快なドルチェット・ダルバ。
といった具合です。
なるほど~。

具体的には、こちらのドルチェット・ダルバ・コルデーロ・ディ・モンテゼーモロをお勧めしています。
サルシッチャだけでなく、サラミなどの腸詰の具にも合います。
コルデーロ・ディ・モンテゼーネロはこんなカンティーナ
バローロが有名だけど、ドルチェット・ダルバは盲点でしたねー。
ドルチェット・ダルバはフレッシュで軽い味。
高級ワインメーカーのお手頃ワインをフォカッチャと組み合わせるなんて、地元の人ならではの贅沢。

次は、じゃがいもと玉ねぎをスライスしてペコリーノで調味し、生地の間にはさんで焼いた野菜の具のフォカッチャ・ラグザーナ。

組み合わせるお勧めワインは、シチリア東部のネロ・ダーヴォラ。
具体的には、チェラスオーロ・ディ・ヴイットーリア・ヴァッレ・デッラカーテ
ラグーザの、ネロ・ダーヴォラ主体のワインです。
まさにぴったり。
こんなカンティーナ

北のピエモンテと南のシチリア、イタリアの両端で個性的なフレッシュなワインが作られているんですねー。
どうやらディープな地元料理を出すトラットリーアでハウスワインにしているような、気さくで適度に厚みのあるワインを選べば間違いなさそう。


赤玉ねぎ、ドライトマト、ローズマリーのフォカッチャ。
 ↓


どんなワインが合うでしょうか。


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“具を挟むフォカッチャ”のリチェッタと“フォカッチャに合わせるワイン”の記事の日本語訳は「総合解説」2012年6月号に載っています。

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2014年10月6日月曜日

アマルフィ海岸の料理

今日は「総合解説」2012年6月号から、面白そうな料理を。

まず、“レモンの葉のモッツッァレッラはさみ焼き”です。

アマルフィのレモン
 ↓
Lemons


レモンの産地として知られるアマルフィ海岸地方では、レモンは捨てるところがないと言うそうで、スカモルツァやモッツァレッラといったとろけるチーズを挟んで炭焼きにするんだそうです。
モッツッァレッラとオイル漬けドライトマト、アーモンドをレモンの葉ではさんでバーベキューの網に乗せて焼くだけ。

すごく簡単そうですが、残念ながらレモンの葉が手に入らない。
庭やベランダでレモンを育てている人は、ぜひお試しを。


下の動画では、ポルペッテをレモンの葉ではさんでフライパンで焼いてます。
 ↓



レモンの木
 ↓



やっぱり地中海のものを温帯で育てるのは難しいですよねー。

アマルフィの有名パスティッチェリーア、パンサのドルチェ

Italian desserts at Pasticceria Andrea Pansa in Amalfi, Italy...

右下のレモンのデリツィアが美味しそう。

アマルフィ地方のグルメガイドの記事の中には、見慣れない料理がありました。

“ンドゥンデリndunderi”。

外見はどう見てもニョッキですが、じゃがいもは使いません。
リコッタと小麦粉の生地です。
ミノーリの料理です。






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“レモンの葉包み焼き”と“ンドゥンデリ”のリチェッタ、アマルフィのグルメガイドの記事の日本語訳は、「総合解説」2012年6月号に載っています。

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2014年10月2日木曜日

自家製フレッシュチーズ

今日のお題はチーズです。
チーズと言っても手作りフレッシュチーズの話。
家庭料理の本にチーズの造り方が載るなんて、さすがイタリアだなあ。
しかも冒頭にいきなり、ミルクは牛乳だけでなく、羊や山羊でも大丈夫。という解説。
日本の料理雑誌ではぜったい見ることのない説明だなあ。
しかも、チーズを作った後に残ったホエーを使ってリコッタを作るところまで説明してます。
リコッタを作るまでがチーズ造りですね。

Homemade cheese
Homemade cheese / Stefano Chiarelli



リチェッタを見る限り、手に入れにくいのはレンネットぐらい。
イタリアでは市販されてるんですね。
レンネツトはイタリア語ではcaglio。
基本は、まずミルクを温め、レンネットを加えて固める。
カードを砕いてホエーを出す。
この過程でどれだけホエーを抜くかによってフレッシュチーズや軽く熟成させるプリーモサーレ、カチョッタといった硬さの違うチーズになります。
その後塩を加えて熟成。

フレッシュチーズ
 ↓
 
 


短期熟成チーズ。
 ↓



伝統的なイタリアのチーズの造り方をマスターすれば、プローヴォラやモツッァレッラも作れちゃう。
プーリアの農家の自家製チーズ(プローヴォラ、リコッタ)。

リコッタの造り方(超簡単)が分れば、たとえチーズ造りに失敗しても、リコッタはできる。

『ラ・クチーナ・イタリアーナ』のとても興味深い記事でした。


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“自家製フレッシュチーズ”のリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2012年6月号に載っています。

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2014年9月29日月曜日

フォルスト

今日はビールの話。

それにしてもここ数年、イタリアのビール市場は活気を呈しているようですね。
イタリア人が家の外で飲む飲み物の中で、ミネラルウォーターに次いで消費量が多いのがビールだなんて、イタリアの食文化もダイナミックに動いているんだなあ。

今回取り上げるのは、フォルスト。
アルト・アディジェのビールです。
ドイツ語で森という意味のフォルストという村にあります。
webページはこちら

Due


フォルストの創業者は、山からの済んだ水がわき出る場所として、この場所を選んだんだそうです。
フォルストのCM。
 ↓




フォルストの創業は1857年。

ドイツ系の食文化も取り込んでいる北イタリアならではのユニークな伝統です。

フォルストはイタリアで一番美しいビールメーカーと言われています。
社屋がアルト・アディジェの山の伝統的な雰囲気を見事に伝えていて、おとぎ話に出てくる森に囲まれたお城のよう。

こんな姿


代表的なビールは、フォルスト・プレミアム。
創業当時の伝統的な製法のビール。
 ↓
Forst Premium: Venetian Beer


このほかに、初孫の名前をつけたフォルスト・ジクタスとか、社長の60歳の誕生日を祝って造ったフォルスVIPピルス(下の写真)とか、大手だけど、一族経営ならではのネーミングのビールが一杯。

Nettare degli Dei

ピッツァにビールは昔からよく聞きますが、このフィノッキオーナとフォンティーナのフォカッチャにビールの組み合わせもおいしそう。
フィレンツェの光景。
 ↓
Finocchiona & Fontina on focaccia at Antica Sosta Degli Aldobrandini in Florence, Italy...


イタリアの地ビールの時代、来るかな。

総合解説」のボリュームアップを機に、今後はイタリアのビールの話題も積極的に解説に取り入れていくことにしました。
お楽しみに~。


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“ファルスト”の記事の日本語訳は「総合解説」2012年6月号に載っています。

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2014年9月25日木曜日

カリアリ

今日は総合解説5月号のクルメガイドで取り上げている街、カリアリの話。

カリアリはサルデーニャの南の端にある、サルデーニャ最大の都市です。
みっちり詰まっているけど、歴史地区やマリーナ地区をアップで見ると、なかなか趣がある。

Cagliari


Cagliari dall'alto


4つある歴史地区の一つ、ヴィッラノーヴァ。

A spasso per Villanova (Strolling around Villanova) * Explored *


マリーナ地区。

Cagliari Marina typical narrow streets


サン・ベネデットの市場はヨーロツパ最大。
面積は8000㎡。
ちなみに築地は23ヘクタール。




カリアリ料理を紹介する動画→こちら

記事に度々登場するサルデーニャ料理、クルルジョネスは、じゃがいも、ミント、ペコリーノの詰め物のラビオリ。
変わった閉じ方で、個性的な麦の穂の形になります。




アサリのフレーゴラも人気の一品。
動画



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カリアリのホテル、レストラン、ショップ情報などグルメガイドは「総合解説」2012年5月号に載っています。

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2014年9月22日月曜日

モスカート・ディ・スカンツォ

今日はワインの話。

モスカート・ディ・スカンツォDOCG。

ロンバルディアのベルガモ県、スカンツォロッシャーテのコムーネで作られているワインです。
パッシートの赤ワイン。

イタリアで最小のDOCGというのがセールスポイントの一つ。
2012年の時点では、19軒の造り手が500ml入りのボトルで年間6万本製造しているという、希少ワイン。
しかも、管理組合の会長自らが、ニッチ市場向けのすきま産業のワインだと語っています。

イタリアでも直接作り手か管理組合に行かないと手に入らないというワイン。
さすがに日本で売っている人はいないかなあ。

ワインの詳細は「総合解説」2012年5月号をご覧いただくとして、記事にもある通り、このワインは、イタリア郵便局の記念切手、「メイド・イン・イタリー」のDOCGワインシリーズ(こんな切手)では、ロンバルデイァに5つあるDOCGワインの中から、ロンバルディア代表として選ばれて、0.70ユーロの切手になっています。

こちらは同シリーズのヴェルディッキオDOCG。


Verdicchio dei Castelli di Jesi


ボルツァーノのアウトクトーナという土着品種のワイン大会(FB)の甘口ワイン部門で2012年に優勝したモスカート・ディ・スカンツォの造り手はマグリ・セレーノ。
カンティーナのwebページはこちら
 ↓



このワインの特徴は、その産地。
急こう配の薄い土壌で、その下は硬い石灰岩。
つまり、ぶどうの出来には造り手の努力が反映される。
収穫は9月から10月にかけてだから、今頃?
房がまばらにつくので手作業なんだって。

モスカート・ディ・スカンツォの畑がよくわかる動画

生産量は少ないし、イタリアでも知名度は低いのに、もっと有名になりたいという大きな野望を持つ管理組合長のカンテイーナは、イル・チプレッソ。
webページはこちら


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“モスカート・ディ・スカンツォ”の記事の日本語訳は「総合解説」2012年5月号に載っています。

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2014年9月18日木曜日

イタリアのパスタメーカーの前身

今日はイタリアのパスタメーカーの話。
あなたはどのブランドのパスタがお気に入りですか?

有名どころだと、バリッラ(バリラ)やデ・チェッコ(ディチェコ)。

Barilla Pasta Day

De Cecco


発祥地や創業年が書いてありますねー。

19世紀後半、イタリアでパスタ産業がスタートする前までは、バリラもデ・チェッコも、別の商売をしていました。
どこも最初は、町のパン屋さんなど小さな商店でした。
それがある時、一念発起して起業して、時代の波に乗って世界的な企業へと大成功を収めたわけです。

バリラは、今や世界で最も有名なイタリア企業の一つですが、その前身は、パルマの小さなパンとパスタ屋さんでした。
同族経営で、現代の経営者は4代目。

デ・チェッコはアブルッツォの地元で最高と評判の石臼の粉挽き屋さん。

アニェージは、最高の小麦とみなされていたウクライナ産タガンログ小麦を粉にする製粉業。

イタリアの製粉業の重要性については、先週、ピッツァに最適の粉を作るには、ピッツァ職人の熟練の感と同じくらい粉屋さんのブレンド技術がポイント、という話をしたばかりでした。

結局は、職人技がイタリアの食品産業を支えていて、世界的な巨大メーカーであっても、パン屋さんや粉屋さんからスタートしているんですね。

バリッラの創業からの歩みを映画のように素敵に伝えるイメージ動画、タイトルは『夢』。
さすがは大企業。
やることがスマート。
 ↓



創業者、ピエトロ・バリッラ・シニアさんが小麦の穂を握りしめるシーンは、粉からスタートしたライバル、デ・チェッコを意識してるのかなあなんて勘繰ったりして。

イタリアでもパスタメーカーは北から南まで各地にあるので、理論的には、美味しい乾麺のパスタの大量生産には、地理的な条件にはあまり左右されなそう。
ということは、日本でもできる。



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関連記事“イタリアのパスタメーカー”『サーレ・エ・ペペ』の日本語訳は、「総合解説」2012年5月号に載っています。

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2014年9月16日火曜日

ナポリ・ピッツァの水の話

ナポリピッツァの本、『farina acqua lievito sale passione』を読み解く話、続けます。

今日は、水。

よく、ナポリのピッツァが美味しいのは、水のせいだと言いますよね。
ナポリの人は、ナポリのコーヒーとピッツァが世界一美味しいのは、ナポリの水が違うからだと、確信しています。

その一番の特徴は、水の硬さ。
硬い水には、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルが多く含まれています。
ナポリの水の硬さは、硬い~やや硬い。

ピッツァに使う水は、やや硬いものが最適。
このタイプは、グルテンの網目構造の生成を促すとかなんちゃら科学的な根拠があって、
生地のphがピッツァに最適の5~6になるのだそうです。

あーもー、パン生地って科学だったんだー。
硬すぎる水だとグルテンの粘りが強くなり過ぎ、その結果生地が堅くなって発酵時間も長くなります。
逆に軟かすぎる水だと生地の弾力が少なくなって、粘りがでます。

水の温度もポイント。
低すぎると発酵速度が遅くなり、熱すぎるとグルテンの鎖構造にダメージを与えます。

ピッツァの生地に最適の水温は冬は20度、夏は16度。

夏の水道水は高温すぎるので、冷蔵庫で冷やすとか、氷を加えるなどして温度を下げる必要があるそうです。

ふう。
かなり詳細な解説で、序文から粉の話、水の話と続くここまでで、本の冒頭わすが20ページです。
この後、イースト、塩、トマト、モッツァレッラ、オリーブオイル、竈、などなど、実に詳しく興味深い話が続きます。

ナポリのピッツァのクラシックはマリナーラとマルゲリータ。
このピッツァは、有名店、ダ・ミケーレのマリナーラ。
 ↓
Marinara, Antica Pizzeria da Michele, Napoli, Italy

こちらも有名店、ブランディのマルゲリータ。
 ↓
Margherita pizza at Pizzeria Brandi

クアットロ・スタジョーニもクラシックピッツァの一つ。
本で紹介しているトッピングはハム、ナポリサラミ、アーティチョーク、マッシュルーム、ガエータの黒オリーブ、モッツァレッラ、フィオル・ディ・ラッテ、ピエンノーロ・デル・ヴェズヴィオ種のミニトマト、バジリコと、超豪華。
ナポリの珍しい地元食材をたっぷり使っているんですね。
胃袋が元気だったら、ぜひナポリで食べたい。
ちなみにカプリッチョーザのトッピングもほぼ同じ。

Quattro Stagioni @ Spacca Napoli



ピッツァ作りって科学だったんですね。
ピッツァイオーロさん、まじリスペクトです。


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2014年9月11日木曜日

ナポリのピッツァの小麦粉

ヴェーラ・ピッツァ・ナポレターナ協会の本、『farina acqua lievito sale passione』の紹介を続けます。
ピッツァに必要な5つのエレメント。
その最初に挙げられたのは、farina、粉です。

Solo farina...


ナポリピッツァの真髄を教えようとするピッツァイオーリたちは、最初に、ある言語学者のこんな話を伝えています。

「小麦粉farinaは、ナポリではo'siore(花)とも呼ばれる」
フィォーレとは、ふすまを含まない小麦粉のことで、これこそが、ナポリのピッツァのペースです。
(そう言えば、小麦粉は英語でもフラワーですね。
でも、花のようにきれいという意味ではない)

どんなフィオーレを使うかは人それぞれ。
まず、硬質小麦粉か、軟質小麦粉か。
硬質小麦粉は黄色みを帯びてパスタ産業の様々な製品に用いられる粉です。
軟質小麦粉は肌理が細かく乳白色で、パンやピッツァに最適の粉です。

ファリーナは、様々な小麦のミックスです。
小麦は基本的に栽培された地方ごとに個性が違います。
製粉業者は、様々な小麦を組み合わせて、望む特性を持った小麦粉を作り出します。

小麦を粉にするには、溝付きローラーを通して砕き、次にふるいにかけて粒の細かいものと大きなものに分けます。

この2つの過程を繰り返してファリーナは出来上がります。

小麦を1種類ずつ別々に粉にして最後にミックスするか、最初からミックスして粉にするか、でも小麦粉の出来は違います。

ピッツァの小麦粉を語るなら、軟質小麦粉1.7㎏に水1リットル、なんて話をする前に、まず、小麦はどうやって粉になるのか、なんですね。

 
さてさて、小麦がどうやって粉になるかがわかると、次に問題になるのは、どうやって作ったら上質の小麦粉になるのか。

いやー、基本的なことなのに、意外と知らないもんですねー。

小麦粉は小麦を粉砕してふるう過程を繰り返しながら造られるわけですが、その間に、ローラーの間隔も溝も変えます。
ふるいもだんだん細かくなります。
ナポリのピッツァに使う最適の粉は、協会によると、00タイプの軟質小麦粉です。
00なので、不純物が少ない、よく精製された粉です。
つまり、2つの過程を時間をかけて行ったもの。

上質の小麦粉を語る時に知っておくべきことは、作り方だけではありません。
小麦の成分を構成する3つの要素。
澱粉、多糖、タンパク質。
そしてタンパク質と水が合わさるとグルテンが生まれる。

さて、ここから肝心な小麦粉の強さの話ですが、この先はやたら科学的な話になって、残念ながら、文系の私が理解するには1年はかかりそうです。

色々すっ飛ばして結論だけ言うと、何やらイタリアには小麦粉の強度を表すWという表示があって、これの250から320の間の強さがナポリのピッツァには最適なんだそうです。
中~強の間。

というわけですが、使う粉の強度を知ることが、美味しいピッツァを作るには基本中の基本なんですねー。
昔のピツァイオーリは手で粉に触ればその日の粉の強さが分ったので、必要な時は、“強い”小麦粉、マニトバ粉を足していました。
でも、次第に粉屋さんが改良を加えて、ピツツァ用に最適な粉を作るようになったんだそうです。

ナポリの有名製粉業者カプートのPV動画



こんな調子で、他の要素の話も続きます。
次は水の話です。


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2014年9月8日月曜日

ヴェーラ・ピッツァ・ナポレターナ

今日は、ピッツァの話。
ヴェーラ・ピッツァ・ナポレターナ協会の本、
farina acqua lievito sale passione
のご紹介です。

まさに、協会入魂の一冊で、ナポリピッツァのすべを紹介している本です。
こういう本を読むと、ナポリの食文化の奥深さを痛感します。

ヴェーラ・ピッツァ・ナポレターナ協会とは、1984年に、ナポリ風ピッツァの国内外へのプロモーションと、品質保持のために設立された団体です
協会のwebページはこちら
下の写真の左下の黒い円の中に描かれたナポリのキャラクター、道化師プルチネッラがピッツァを焼いているデザインがトレードマーク。
会員の店には、このマークが表示されています。

会員は日本を含む世界中に大勢います。
ピッツァイオーロを目指す人なら、誰もが知っている団体ですよね。
会長のアントニオ・パーチェ氏は、他の17名のナポリの優秀なピッツァイオーリたちと一緒に協会を創立しました。
家族経営の老舗リストランテ・ピツッェリーア、チーロ・ア・サンタ・ブリジダの現経営者です。
お店のwebページはこちら


photo


とにかく、ナポリピッツァの発展に尽くしたいという協会自体も熱いですが、本もかなり熱いです。
それをいきなり感じるのが、冒頭の序文。
書いたのは、スローフード・インターナショナル会長のカルロ・ペトリーニ氏。

「ナポリは、5つのエレメントから、錬金術師のようにピッッァを生み出した」と書いています。

さーて、ピッツァを作る5つのエレメントとは何でしょう。
小麦粉、水、酵母、塩・・・。
えーと、これだけあればピッツァ生地はできるはず・・・。
いやいや、これでは4つだから、あと1つ足りない。
ところが、あえてペトリーニ氏は、5つめのエレメントのことをすぐには書きません。
どうやら、皆さんのご想像にお任せしますというつもりのようです。

スローフードの創設者たるペトリーニ氏は、テッラ・マードレという活動も行っています。
スローフードもテッラ・マードレも、その概念を正しく理解するのは、かなり難しいと思います。
私などは全然わからないのですが、テッラ・マードレは、こちらのwiki先生によると、小規模の職人による上質食品生産者のネットワークのようなもの。
べドリーニ氏は、この本の前書きで、テッラ・マードレの発想が生まれたのは、ナポリで2003年に開催されたスローフードの国際会議の場でだったと書いています。
地中海の民族と魂の交差点のようなナポリという場所の持つ気風が、土地の豊かさこそが、buono, pulito, giusto(おいしい、クリーン、フェア)というスローフードの精神と結びつき、ひいては、ヴェーラ・ピッツァ・ナポレターナ協会が目指すものと、ぴったりと一致したのだと書き、こう締めくくっています。
パッシオーネ。
そう、5番目のエレメント、情熱です。
どうやらここらへんに共通点を見出したみたいです。

さらに、協会の序文は、こう始まっています。
「王も物乞いも、インテリもアーティストも大好きな食べ物、ピッツァはナポリ魂のエンプレムで他に類を見ない発明品だ。
本物のナポリのピッツァを語ることは、文化の核心に踏み入ることだ」

たかがピッツァ、されどピッツァですねー。
さらに、文化の核心、ナポリの魂が、イミテーションによって姿を変えて世界に広まっていくくらいなら、すべてをさらけ出してその秘密を教えるから、正しいナポリのピッツァを作ってくれ、という、激しい情熱に支えられた熱い思いが綴られています。

食品業界は、ペトリーニ氏やパーチェ氏のような人たちの情熱で動いているんですねー。

 と思ったら、本の最後には4ページに渡って会員の顔写真がずらーっと載っていました。
しかも、そのページのタイトルは「情熱の真実」。
なんと、これがこの本のオチだったんですね。
5つ目のエレメント、情熱を、何一つ隠さず。
素晴らしい。
会長さんだけでなく、ピッツァイオーリさんたちみんなの情熱を感じてください。

さーて、ナポリのピッツァイオーリたちの熱い思いを知ったら、今度はいよいよ、ナポリピッツァ作りです。
まず、何を用意しますか?

やっぱり小麦粉ですよね。
ピッツァの小麦粉についてなんて、もう語りつくされているかもとも思いますが、ナポリのピッツァィオーリたちは、何を伝えたいんでしょうか。

序文を読んだだけでかなり疲れたので、その話は次回に。


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2014年9月4日木曜日

乳鉢のパスタソース

今日のお題は「乳鉢で作るパスタソース」。
もちろん、有名なのはペスト・ジェノヴェーゼ。
この他にも、クルミのソース、空豆のソースなど、リグーリア料理には、このタイプのソースがたくさんあります。

リグーリアの市場の風景。
 ↓
Mortars

ペスト・ジェノヴェーゼ。
 ↓
Pesto al mortaio


ペストは乳鉢で作るのとミキサーで作るのでは出来上がりがかなり違います。
まず、材料をすり潰すとエッセンスオイルが出ます。
このオイルが出るようにすり潰すのがポイント。
材料も、オイルがたっぷり含まれる若くて瑞々しいものを使います。
上から叩きつぶすのはNGです。
ミキサーだと粉砕するので熱を帯びて空気に触れ、酸化の確率が高くなります。
歯ごたえも、ミキサーだと均質でなめらかですが、乳鉢だと適度な粗さと腰が残って歯ごたえがあるのに軽いフレッシュな仕上がり。

すり潰しやすい材料の量は乳鉢の半分以下。
にんにくをすり潰すには直径20㎝必要だそうです。

世界最大の乳鉢だって。
 ↓
Blimunda e il mortaio più grande del mondo


直径20センチのカッラーラの大理石の乳鉢。
乳鉢には、大きさも色も形も、色んなものがありますが、イタリア料理の乳鉢のイメージは、まさにこれ。
 ↓



バジリコの季節じゃない時に作るペストのバリエーションの一つに、イタリアンパセリのペスト、というのがあります。
面白そう、と思って動画を探してみたら、美味しそうなのがありましたよ。
ブロッコリー、アンチョビ、イタリアンパセリ、コラトゥーラのペスト。
ただし、ミキサーで作ります。
動画はこちら


アサリとイタリアンパセリのペストのスパゲッティも美味しそう。
料理の動画はこちら

どの動画もミキサーばかり。
結局、乳鉢で作れば美味しいということは分っていても、実際に使っている人は少なそうですねー。

そういえば、無印良品で大理石の乳鉢を売ってるのを見かけました。
買う人がいるのなら、乳鉢を使って料理を作る人もいるはず。

乳鉢ですり潰したソースは、パスタに最適ですよー。
バジリコとにんにく以外にも、アンチョビ、ルーコラ、空豆、オリーブ、ドライトマト、くるみ、アーモンド、ペコリーノ、パルミジャーノ、パンあたりが一般的な材料です。
あ、肝心なものを忘れていた、マイルドなオリーブオイルもだ。
それと、マジョラムを入れるとリグーリア風。




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「乳鉢で作るパスタソース」の記事とリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2012年5月号に載っています。
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2014年9月1日月曜日

リヴィエラ・レヴァンテのパンソーティ

今日はリヴィエラ・ディ・レヴァンテの話。
リグーリア州の東海岸地方のことで、ジェノヴァの東端からラ・スペツィア県のマグラ川の間の沿岸地方のこと。

こんな海辺の町があります。

紹介動画

ナポリに対するアマルフィ地方のような関係で、ジェノヴァから短時間で行ける、美しい街並みが続く別世界のリゾート地です。
南イタリアのような底抜けの解放感やケオス的なエキゾチック感はありませんが、落ち着いた生活感が実感できる、手に届く高級リゾート、といった大人の町です。

代表的な観光地、サンタ・マルゲリータ、ラパッロ、ポルトフィーノの見どころを紹介する動画

ポルトフィーノの虹、ラパッロの夜景、サンタ・マルゲリータ。
 ↓
Liguria 01/01


Notturno a Rapallo

Santa Margherita Ligure


こんなリヴィエラ・レヴァンテ地方の代表的なパスタの一つがパンソーティpansotiです。
標準語ではパンソッティpansotti。
ラビオリの一種です。

イータリー・ニューヨーク店のパンソッティ

NYC - Eataly NY: Pansotti

代表的なソース、クルミのソースをかけたパンソーティは、リグーリアの代表的なプリーモ・ピアット。

ジェノヴァ料理としても知られていますが、一説によると、このソースの発祥地はラパッロだとか。

他にもいろいろな説があり、その一つが、レッコのレストランテ、マヌエリーナというもの。
そのお店のくるみのパンソーティの動画がありました。
こちら


クルミのソースは、乳鉢で作るソースでもあります。

乳鉢で作るリチェッタ

動画ではどちらも形が上の写真とは形が違いますね。
いずれにせよ、パンソーティとは、ブックり膨れたお腹と言う意味なので、それをイメージして成形します。

乳鉢で作るソースと言えば、その代表的なものがペスト・ジェノヴェーゼ。
ペスト・ジェノヴェーゼは、リヴィエラ・レヴァンテでは、にんにくとペコリーノの量が少なめでマイルドなんだそうです。

次回は乳鉢で作るソースの話です。

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『ヴィエ・デル・グスト』誌のリヴィエラ・レヴァンテの記事とクルミのソースのパンソーティを含むリチェッタは、「総合解説」2012年5月号に載っています。

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2014年8月28日木曜日

サルトゥ・ディ・リーゾ

アブルツッォのクレープのティンバロに続いて、今度はナポリのティンバロの話。
そうそう、イタリアにはもう1つ、有名なティンバロがありますよね。
シチリアのティンバロ。
ヴィスコンティの映画『山猫』でも有名になりました。

『山猫』のティンバロを再現するのは、レストランの人気イベントの一つ。
 ↓




リッチなパスタを詰めたパイのような料理。

ナポリのティンバロはチキンライスのようなお米のティンバロ。
 ↓



アブルツッォのティンバロはクレープのラザーニャ。
写真

これらどれにも共通しているのが、ルーツが上流階級の料理ということ。

庶民の食文化のメッカのようなナポリ料理で、上流階級の料理というのはちょっと異色ですが、ナポリには、貴族と庶民の2つの食文化が育ったことの、明確な証拠の一品でもあります。

貴族料理という特徴から見ても分るように、どの料理にもフランスが絡んでいます。

ナポリのお米のティンバロは、サルトゥ・ディ・リーゾsatrù di risoと言います。
なんとなく、お米のソテーという意味かなあ、ぐらいに思っていたのですが、サルトゥはフランス語の
surtoutのナポリ訛りでした。
surtoutは、イタリア語に訳すと、sopra a tuttoという意味だそうです。
すべての上にあるもの、「至高」といったところでしようか。
そう思ってサルトゥ・ディ・リーゾという名前を改めて見直すと、何とも、謎を秘めた名前であることに気がつきます。

まず、「総合解説」にも紹介したとおり、『ヴィエ・デル・クスト』誌では具の上をお米ですっぽり包むからと解釈しています。
ナポリには、お米料理のイメージがあまりありませんが、米はスペインから伝わりました。
当然、お米料理もありました。

えー、そうなのーと思って、ナポリ料理の集大成、『マッケローニ』を見てみると、“アマルフィレモンのリゾット”とか、“ブローヴォラ入りバターライス”とか“トマトライス”とか、美味しそうなお米料理が一杯載ってますよー。
サルトゥだけでも、3種類あります。

ところが、パスタの人気とは反比例して米はあまり広まらず、高級品になってしまいました。
薬のように万能な貴重品として扱われていたようです。

そこに登場するのがフランス人の支配階級です。
ご存じのとおり、ナポリの歴史はやたら複雑で、アンジュー家やらスペインブルボン家やらフランスブルボン家やらオーストリアハブスブルグ家やらと、いつも他国に支配されていました。
スペインが力を持った時代に伝わったお米を使って、その後、ナポリ料理に絶大な影響を与えたフランス人のお抱え料理人が考え出した料理、それがお米のサルトゥだったのです。

ラ・グランデ・クチーナ・レジョナーレ・イタリアーナ”シリーズ「カンバーニア」では、“サルトゥ”とは、料理の中で至高の一品、つまり、最高にリッチな料理という意味と解釈しています。

この料理が生まれた経緯を考えると、貴重で最高の食材をたっぷり使ったご馳走、という意味も納得です。

アブルツォのクレープのティンバロはクリスマスや新年に食べるご馳走でした。
シチリアのティンバロは貴族の優雅な晩餐会に登場する料理。
ナポリのお米のティンバロは、スペイン・フランス・イタリアの洗練された食文化の融合。

お米のサルトゥ
 ↓





おまけの動画
じゃがいものガットー

ガットーはフランス語のガトーのナポリ訛り。
サルトゥと同じような経緯で生み出された料理。


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“サルトゥ・ディ・リーゾ”を含むナポリ料理のリチェタは、「総合解説」2012年5月号に載っています。
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マリア・ルイジアの小さな街、パルマのバターとグラナの娘、アノリーニ。本物は牛と去勢鶏のブロードでゆでます。

昨日の最後にサラっと登場したアノリーニですが、このパスタ、(CIR12月号P.5)にもリチェッタが載っていました。クルルジョネスの次の料理です。花の形の可愛い詰め物入りパスタ、なんていうのがこのパスタの印象ですが、イタリア人は、こんな風に思ってるんですね。 「マリア・ルイジアの小...