2016年9月20日火曜日

アーリオ・オーリオ

最近めっきり涼しくなってきましたねー。

北イタリアに住む年金暮らしのご隠居が、友人夫婦が夏に日本に遊びに行こうとしたら、旅行社に、夏は季節が良くないからやめたほうがいい、春か秋にしなさいと言われた、と言ってました。
確かに、猛暑に台風にと、日本の夏は、高齢の旅行者には厳しそうだなあ。
それにしても、その旅行社、なかなかできる。

そんな厳しい夏も過ぎて、いよいよ食べ物が美味しい秋が到来ですねえ。
今年は、その名も『秋(アウトゥンノ)』というお勧め本も入荷しました。
あとは台風が行ってくれるのを待つだけ。

秋の日本もいいですよ。
お待ちしてまーす。

Kinkakuji-temple 鹿苑寺金閣


さて今日は、今月の「総合解説」で訳した料理の中で、一番印象に残った料理名をご紹介。
初めて訳した時はまったく気が付かなくて、二度目で、あっと気が付いたら、もう忘れられなくなりました。
後からじわっと来る料理名です。
それは、
「タリオリーニ・アーリオ・オーリオ・ボッタルガ」

気が付きましたか?
ちらっと見ただけでは、すんなり読めて、なにも気づかない。
でも、よーく読むと、
そう、これは、アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノのアレンジ版です。
元々のリチェッタは、アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノにボッタルガを加えたものだけど、ペペロンチーノをボッタルガに変えたって、いいんです。

そう考えると、いくらでも応用できそうですよね。
でも、ごろの良さを考えると、ボッタルガは、字数的にもぴったり。

しかも、アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノを作って、仕上げにおろしたボッタルガとレモンの皮のすりおろしを散らすだけ、という超お手軽パスタ。

アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノにボッタルガを加える人は、たくさんいるみたいですが、その料理を、いさぎよくアーリオ・オーリオ・ボッタルガと呼ぶとは、センスあるなあ。

ボッタルガの他にも、何かあるかな、と思って大好きな、有名シェフのパスタの本、『パスタ』を見てみました。

そしたら、ありました。
まずは、イスキア島のリストランテ・イル・メログラーノの料理、
“イカのリングイーネのアーリオ・オーリオ・ポモドリーニ”。
これは、ヤリイカのパスタだったらアーリオ・オーリオ・カラマレッテ、とも応用できます。

大御所のドン・アルフォンソもありましたよ。
ここでは、さらにひねりを加えて
“スパゲッティ・アーリオ・オーリオ・アリーチ・エ・ノーチェ”。
4つ目の素材も加えて、さらにごろよく仕上げてきました。
まるでラップのようなテンポのよさ。

それにしても、アーリオ・オーリオのように超簡単なリチェッタは、料理書に載ることは滅多にないので、グランシェフのアーリオ・オーリオのこのリチェッタは、なかなか貴重かも。
本の解説によると、この料理は古い伝統料理でクリスマスイブの定番なんだって。

あれ、カンパーニアの伝統料理?

ついでなので、“アーリオ・オーリオ”のうんちくを少々。

スローフードの“リチェッテ・ディ・オステリア”シリーズの『パスタ』によると、唐辛子で辛さを利かせる前のアーヨ・オーヨ(ajo ojo)は、ラツィオの農村部で広まった料理ですが、発祥地となるとラツィオ、アブルツォ、カンパーニア、カラブリアの各地の間で論争があるそうです。

一説によると、あまり強くない味で、フライパンであおる必要のない、ゆでたスパゲッティにただかけるだけでいい熱いオイルのソースが欲しいと思って考え出されたのだそうです。
にんにくを半分に切ってボールの底にこすりつけ、この中にゆでたスパゲッティを入れて熱いオリーブオイルをかけ、仕上げにイタリアンパセリと唐辛子のみじん切りをちょちょいと散らすだけ。

究極のズボラパスタですねえ。
なんでこんな料理の誕生したいきさつがいやに詳しく伝えられているのか、かなりうさんくさい話ではありますが、オイルにトマトを加えるとロッソバージョンになります、なんてもっともらしい解説もあって、そこそこありそうで説得力もあるなあ。

まあ、どうやらアーリオ・オーリオは、いかに手を抜いて美味しく作るか、ということをつきつめていったらこうなった、みたいなもんなのでは。
ただし、本に載っているリチェッタは、ここまで手抜きではありません。
それにしても、カルボナーラといい、アマトリチャーナといい、カーチョ・エ・ペペといい、ローマの農村部からは、どうしてこんなに伝説的なパスタが次々生まれたのでしょうねえ。

シンプルな料理ほどアレンジはいくらでも。
究極のズボラ料理てもミシュラン3つ星のシェフが作ると、ここまでリッパにできます。




ちなみにこの店のajo ojoはスパゲッティ・アーヨ・オーヨ・セッピエ・エ・ピゼッリで、€60と
とびきり高級。



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“タリオリーニ・アーリオ・オーリオ・ボッタルガ”のリチェッタを含む“シチリアとサルデーニャ料理のチェーナ”の日本語訳は、「総合解説」13/14年8月号に載っています。
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2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

簡単こそ難しい!シェフの腕前を見るにはこの料理が一番という話もありますが、このシェフ、まずニンニクの刻み方のいい加減さにびっくり。ニンニクは火の通りが均一になるように大きさをそろえて刻むのが鉄則なのに大きいのやら小さいやら実に様々。でもとにかくおいしければすべてよしが「イタリア」なのですね~。
先日、浅草からの帰りにイタリア人の観光客の一団に遭遇。40人くらいのグループで銀座線の一車両ほとんどを占めていました。皆おしゃべりなのですぐわかり、一緒にいた友人が「どこを見てきたの?}とイタリア語で話かけたらもう大変!「イタリア語を話している」とそばの人が大声で伝え、次から次へとこちらが質問攻めに。ロンバルディアの旅行社のツアーで初めての日本。車両中大騒ぎ。これも「イタリア!}面白かったです。
Italiamama

prezzemolo さんのコメント...

Italiamamaさん

にんにくの刻み方で国民性が出るんですねー。
面白すぎ~。
イタリア人でいっぱいの地下鉄も、楽しそ~。
初めての日本を満喫してほしいなあ。
私もイタリアで高校生でいっぱいのバスに乗り合わせてしまったことがあります。
その時は、あまりのうるささに、運転手がバスを停めて生徒たちの中に入っていって説教しだしたんですよ。
この高校生たちに静かにしろって言えるのは、あなたただけです、と尊敬しましたよ~。
でも、まったく効果はなかったけどね。

よもぎはドイツ語ではベアムート。かっこよくてお餅につける名前じゃないよね。トリノでパティシエが白ワインとよもぎから作りだしたのがベルモット。

今日のお題は、メイド・イン・イタリーの食材です。(CIR2022年1月号P.37の記事) その食材は、ベルモット。ピエモンテ州トリノで誕生したフレーバード・ワインです。 白ワインにスパイスとハーブを加えて香りをつけたもの。 ところで、ベルモットはドイツ語の“ヨモギWermut”が...