今日は新入荷の本、『プーリア・イン・クチーナ』の紹介。
地方料理の新しいシリーズの冊です。
このシリーズの特徴は、イタリア語と英語の2か国語表記
写真が秀逸で装丁が立派な豪華本です。
プーリア料理を象徴する光景と言えば、これ。
道端にテーブルを出してのパスタ作り。
この本の道端のパスタ作りの光景は、赤ちゃんを抱いた若い女性とその母親と思しき女性の、ほほえましい写真です。
プーリアの名物野菜、チコーリアを収穫する人たちは、どや顔でほほ笑んでいます。
プーリア人のプライドも感じられるいい写真。
ソラマメとチコーリア
↓
チコーリアはとても興味深い野菜です。
↓
この本は、料理の間にプーリアの暮らしや伝統が感じられる写真をたっぷり挟んでいます。
いわば、見る料理書です。
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2018年4月25日水曜日
『プーリア・イン・クチーナ』
2018年4月23日月曜日
スタージュ
今月の総合解説は12月号なので、クリスマス料理の記事が中心でした。
クリスマスはイタリアでは家族が勢ぞろいしてプランゾを食べる貴重な機会。
今年の記事はイタリアの家族あるあるが、なかなか面白かったです。
なぜ他の季節には家族が勢ぞろいしないのかというと、まず、お父さんは相変わらず仕事が忙しいんだそうです。
息子たちは外国でスタージュ中だそうですよ。
独身の娘たちは、クルーズ船で旅行中。
なんだか外国の話とは思えませんねー。
息子や娘たちは、どこの国でも外国でスタージュ中なんですね。
このスタージュという言葉、とても印象に残りました。
スタージュはインターンシップのこと。
イタリアの学生も、どんどん外国での研修に出ています。
料理人にも欠かせない、若い時でないとできない体験。
一流レストランのシェフたちが、ハイクラスの料理人を目指すイタリアの若者向けの団体も作りました。
そこでのスタージュ体験を語ってます。
クルーズ旅行に出かけてる人もいる一方で、将来を見据えている人もいるんですね。
実際にスタージュ中の人も大勢いるはず。
頑張ってください。
お母さんにはあまり心配かけないでねー。
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”伝統を取り入れたクリスマスのプランゾ”の記事の日本語訳は「総合解説」2015年
12月号に載っています。
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2018年4月20日金曜日
モンテ・ヴェロネーゼ
ヴェネトの話題が続いたところで、今月の食材もヴェネトのチーズです。
モンテ・ヴェロネーゼ
↓
歴史の古いDOPチーズで、その名の通り、ヴェローナ北部の山岳地帯で造られています。
レッシーニ山地やバルド山で飼育されている牛乳から作るチーズです。
イタリアのDOPの山のチーズの中では、もっとも重要と見なされています。
フレスコとアッレ―ヴォの2種類がありますが、特徴が強く表れているのは山の放牧地で過ごした牛の夏のミルクから造り、1~2年熟成させたダッレーヴォ。
長く熟成させたものはおろして使うこともできます。
高原の草や花の香りが特徴。
ラディッキオ・ロッソと米というヴェネトの名物食材を使うリゾットには、ヴェネトのチーズ、モンテ・ヴェロネーゼがぴったり合いそうですね。
ラディッキオの味を消さないようにマイルドなフレスコタイプを使います。
↓
座って料理を作る人たち、初めて見ました。
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モンテ・ヴェロネーゼを紹介しているのは「総合解説」2015年12月号の"今月の食材"です。 [creapasso.comへ戻る]
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2018年4月18日水曜日
『パスタ』の新着本
今日は新入荷の本の紹介です。
『パスタ・レボリューション』
『パスタ・ヴィアッジョ・イン・イタリア』
『パスタ・レボリューション』は、副題が"pasta conquista l'alta cucina"。
アルタ・クチーナのパスタの本です。
『パスタ・ヴィアッジョ』は、副題が"Viaggio in Italia in compagna di grandi chef"
20州の20人のシェフによる、乾麺の地方料理の本。
『ヴィアッジョ』は地方料理という縛りがありますが、どちらも有名シェフたちによる饗宴。
『レボリューション』は乾麺のパスタという縛りだけで、シェフの個性が咲き乱れています。
『ヴィアッジョ』はイタリアの地方料理をインターナショナルな知名度にしたいと言う、トップパスタメーカーの野望が感じられます。
『レボリューション』は、農民と主婦が作り上げてきたイタリア料理の最終形態の一つを感じます。
どちらもパスタはイタリアが生んだワールドクラスの食文化というプライドが強烈に感じられますが、その考察が、本格的でとても面白いのです。
例えば、こんな一文。
"小麦粉と水があれば誰でも作ることができるパスタだが、イタリア人だけが、これを乾燥させた。"
プーリアのオレッキエッテ、ナポリのパッケリ、トスカーナのピチ、リグーリアのトロフィエなどのようにパスタの形は地域主義のメタファー。
対外的には"マカロニ"と総称で呼ばれることを許しても、イタリア人の中では、反グローバリズモの流れが常にあります。
パスタの主要な"地域"は、シチリア、ナポリ、ジェノヴァ、ボローニャ。
イタリアには、方言を含めて1238種類のパスタの名前があるそうです。
さらに、どのパスタも偶然生まれて偶然生き残ったのではなく、必ず生み出された理由があります。
『レボリューション』は、写真も面白いんです。
ゲイリー・クーパー主演の『マルコ・ポーロの冒険』という1938年の映画のワンシーンは、中国人とおぼしき人物が箸で麺を持ち上げているのを、イケメンのマルコ・ポーロが見つめている、という興味深い写真。
実際にこんなシーンあったかもね。
マルコ・ポーロは、西洋人に取ってこんなイメージ?
↓
まるでゲーム・オブ・スローンズの世界。
さらに、アングロ・サクソン系の女性がスプーンとフォークで悩みながらスパゲッティを食べるポスターのような写真もあります。
イタリア人のパスタに対するプライドの高さは、昨今の日本食ブームを体験した日本人にはよくわかるのでは。
とにかくじっくり読みたくなる面白い本です。
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2018年4月16日月曜日
ハリーズ・バーのベッリーニ
今日は「総合解説」12月号より、ハリーズ・バーのベッリーニの話。
日本からの観光客にとっては、ただのバカ高いピーチのネクター入りシャンパン、ということになるかも知れません。
でも、ハリーズバーのことを良く知ると、イメージが変わるかも。
まずバカ高いのは、ベネチアのような国際的で高級なリゾート地では、物価も超べらぼうなので、頭に来てるうちはあなたも庶民、ということですかね。
次は、もっと小遣いを貯めて乗り込みましょう。
『ハリーズバー』
この店が誕生した経緯を知ってハリーズ・バーでベッリーニを飲むと、一段と美味しく感じると思いますよ。
それではカクテルのリチェッタです。
動画は、世界中の色んな人が上げていますが、どうもハリーズ・バーとしては上げていないようですね。
「総合解説」を読んでいただければよくわかりますが、そもそもハリーズバーのベッリーニは、白桃が一番美味しくなる季節、つまり7月にだけ出していたそうです。
桃は皮ごとシノワかマッシャーで潰してピューレにします。
ミキサーにかけると空気が入るので使いません。
細かいこだわりがあったんですねー。
旬の白桃が手に入る人は、ぜひトライしてみて。
「総合解説」ではチョコレートケーキのリチェッタも訳しました。
ハリーズバーのチョコレートケーキはなかなか人気のようですよ。
もちろんカルパッチョのリチェッタも訳しました。
この料理が誕生した時の有名なエピソードにも、ちょとした裏話がありました。
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『ハリーズ・バー』のリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2015年11月号に載っています。
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2018年4月13日金曜日
春の野菜
今日はイタリア便りをどうぞ。
それではSegnalibroさん、お願いします。
すっかり春になりました。
先週、私の住む町では春の植木市祭りが開催され、人口約16,000人の田舎町が8万人の人出で賑わいました。


Grazie Segnalibroさん。
ロゾレというのは初めて聞きました。
チューリップ、こちらでも咲いてますよー。
イラクサは庭の雑草扱いなんですね。
イラクサを料理して食べる日は来るのでしょうか。
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2018年4月11日水曜日
ヴェネトとヴェネチア
今月の地方料理はヴェネト料理。
グリバウドの地方料理シリーズの『ヴェネト』
『ハリーズ・バー』
のリチェッタを主に訳しました。
ラツィオのローマ、カンパーニアのナポリと並んで、ヴェネトといえば、ヴェネチア。
ヴェネチアとヴェネトは、同じもののようで全然別物。
ヴェネト州の都市
↓
ヴェネトの自然
↓
ヴェネチアは昔から欧米人の憧れの地だったので、情報量もすごい。
ヴェネト料理
↓
ヴェネチア料理
↓
訳してみて感じたのは、やっぱり主役は圧倒的にヴェネチア料理。
国際的な観光地なだけあって、ゴージャスで魅力的な料理に溢れています。
特にチケーティのような料理が生まれるだけあって、冷えた白ワインに合いそうなシーフードのつまみ料理が多い!
代表的チケーティ料理、バッカラ・マンテカート。
↓
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“ヴェネト料理”のリチェッタの日本語訳は「総合解説」2015年11月号に載っています。
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2018年4月9日月曜日
モディカ
ラグーザ県のグルメガイド、続けます。
ラグーザ県
↓
ラグーザ県はチョコレートで有名なモディカがある地方。
モディカのチョコレートはシチリアの大きな観光地でなら売っているとは思いますが、やはり一度は現地のアンティカ・ドルチェリーア・ボナイユートを訪れてみたいもの。
砂糖のじゃりじゃりした砂のような食感がある溶けないこのチョコレートを使ったモディカの名物ドルチェは、“'mpanatigghi/ンパナティッギ”。
モディカのチョコレート、砂糖、アーモンド、牛挽肉の詰め物のパスタ・フロッラのラビオローニ。
↓
パスタ・フィラータのチーズ、ラグザーノDOPなども有名。
モッツァレッラに代表されるイタリアならではの特徴的なチーズで、長期間保存できるタイプ。
豊富な牧草があった地方のパルミジャーノなどとは全く違う、地中海の硬質チーズ。
保存方法も、塩漬けではなく、長期熟成、という方法を用いています。
独特の形にして柱にかけて乾燥させるところからついた名前が、カチョカヴァッロ。
カチョはチーズ、カヴァッロはまたがるという意味。
地中海式のチーズを熟成させる知恵が詰まったチーズです。
香りを味わってください。
↓
モディカのアグリトゥーリズモ イル・グラナイオ。
レストランは要予約。
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“グルメ旅~ラグーザ県”の記事の日本語訳は、「総合解説」2015年11月号に載っています。
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2018年4月6日金曜日
イタリアで一番愛されている警部、モンタルバーノ
今月のイタリアグルメ旅は、ラグーザ県です。
テレビの人気シリーズ、“モンタルバーノ警部”の家がある地方で、番組の撮影もこの地方で行われているそうです。
“モンタルバーノ警部”はアンドレア・カミッレーリ原作の人気ミステリーで、以前、ブログでも取り上げています。→こちら
このシリーズ、シチリア料理もうまく使われていて、なかなか面白いのです。
日本語の文庫本もあります。
初回が放送されたのは1999年。2018年現在も続いています。
こんなドラマ
オープニング
人気ドラマに欠かせないスピンオフシリーズもあります。
“ヤング・モンタルバーノ”のトレイラー
↓
聖地巡礼も盛んな人気番組。
シチリアの美しい街と美味しい食べ物が満載なだけでも興味津々。
これは行きたくなりますねー。
行く前に、この地方の特産品のチェックも忘れずに。
名物の話は次回です。
おまけの動画
このドラマのおかげでアランチーニが世界中に知られるようになったという声まである「モンタルバーノのアランチーニ」
聖地の一つ、モンタルバーノの家の隣でも売っています。
↓
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“グルメ旅~ラグーザ県”の日本語訳は「総合解説」2015年11月号に載っています。
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2018年4月4日水曜日
ボッタルガのスパゲッティ
今朝の検索ワード上位は、youtube襲撃関連が並ぶ中、いきなりボッタルガが5位!?
どうやらもこみちくんが今朝の料理で使ったらしい。
それにしても、ボッタルガって何?
東京の人のご家庭にはボッタルガが常備されてるの?
みんなボッタルガ知ってる前提でもこみちくんが説明せずに料理するから、ボッタルガって何と大量に検索されたらしい。
あの番組の影響力、すごーい。
ボッタルガは昔はマグロの卵で作ったけど、今はマグロが貴重すぎて日本同様、主にボラで作ります。
味は強くてアーモンドのようなほろ苦い後味があります。
ボラのボッタルガはマグロのものより味がデリケート。
サルデーニャの名物ですが、他にはシチリア、カラブリア、トスカーナなど、マグロ漁の伝統がある地域で造られていました。
ボラの卵巣を洗って塩漬けして干して型押し、乾燥させながら4~5ヵ月熟成させたものです。
我が家は横浜ですが、近所のスーパーではボッタルガパウダーを売っています。
多分、今までそのその存在を知らなかっただけで、気を付けて探せば案外売っているかも。
偶然ですが、今日はパオロ・ペトローニ著『スパゲッティ・アモーレ・ミオ』からリチェッタを紹介しようと思っていたので、迷わず、この本からボタルガのスパゲッティをチョイス。
もこみちくんの人気に便乗させていただきます。
パオロ・ペトローニ氏はイタリア料理アカデミーの会長さんで、料理書の著書も多数あり、世界的に有名なイタリア料理界の重鎮のジャーナリストです。
【ボッタルガのスパゲッティSpaghetti alla bottarga】
4人分
スパゲッティ、またはリングイーネ、ブカティーニ・・350g
ボラのボッタルガ・・60g
にんにく・・1かけ
オリーブオイル
塩、粒白こしょう
・丸ごとのにんにくをオイル大さじ6で炒め、軽く焼き色がついたら取り出してフライパンを火から下ろす。
・ボッタルガの半量をおろしながら直接オイルに加える。軽く塩をしてよく混ぜる。
・パスタをアルデンテにゆでてフライパンに入れ、パスタのゆで汁とオイルを加えながら弱火でなじませる。
・すぐにサーブする。チーズは散らさない。挽き立ての白こしょう少々とおろしたボッタルガを散らす。
ボッタルガの主なリチェッタは、おろしてスパゲッティに入れるかスライスして前菜としてサーブするかぐらいですが、
サルデーニャつながりで、アサリとボッタルガのフレーグラをどうぞ。
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2018年4月2日月曜日
バーリのブラックチェーチとボローニャのモルタデッラ
今月の「総合解説」の今月の食材に、初めて見るものがありました。
ムルジャ・バレーゼ地方のチェーチ・ネリ、ブラックチェーチです。
戻し時間や調理時間が長いことなどから扱いにくく、農家で自家用に栽培されている程度でしたが、鉄分や食物繊維が豊富な良質植物性たんぱく質である点などがアピールされて生産量を増やしつつあるようです。
チェーチ・ネリの単数形はチェーチェ・ネロなんですね。
一見すると小豆みたい。
甘くてコクがある味。
バーリ県のアックアヴィーヴァ・デッレ・フォンティのチェーチェ・ネロの収穫祭。
↓
野菜が美味しいプーリアのムルジャ地方の産物が満載の豆のスープ。
↓
小皿で何皿もサーブするのは都会のサーブ方法で、農家では様々な食材を混ぜて大皿にどーんと盛り付ける、という話、面白いですね。
話は変わって、今月のメイド・イン・イタリーの食材は、モルタデッラです。
モルタデッラの一番の特徴は、オーブンで温風で乾燥させて長期保存できるようにしている点。
脂身はのどの固い部分。
この大きな形は豚の膀胱に詰めるから。
モルタデッラのローマ風ピッツァ
↓
焼き立てのローマ風ピッツァのサクサク感、音だけでも美味しそうです。
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“今月の食材”と“モルタデッラ”の記事の日本語訳は「総合解説」2015年11月号に載っています。
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2018年3月30日金曜日
トレ・フォルケッテ、トレ・ガンベリ
ちょっと前の話ではありますが、ガンベロ・ロッソのリストランティ・ディ・イタリア2016年版で、トレ・フォルケッテになった店です。
まずはモデナのオステリア・フランチェスカ―ナ。
世界のベスト50レストランではイタリアで最初に1位に選ばれた店になりました。
次は同点1位の、ローマのラ・ペルゴラ
ミシュラン3つ星店のカルボナーラ
小籠包スタイルですね。
次はトレ・ガンベリ。
ざっくり言うとフォルケッタはリストランテ、ガンベリはオステリアの評価。
トレ・ガンベリは20店ありましたが、その中から動画のあるものをどうぞ。
ローマのアルマンド・アル・パンテオン
ジェノヴァ県のラ・ブリンカ
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“リストランティ・ディ・イタリア2016”の記事の日本語訳は「総合解説」2015年11月号に載っています。
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2018年3月28日水曜日
『グランディ・クラシチ』
今日は、お花見のお弁当になりそうなイタリア料理、何があるかなあと探してみました。
こんな時便利な本が、『グランディ・クラシチ』です。
国民的イタリア料理を写真付きで載せている本なので、パラパラめくって料理の写真を見ながらお花見弁当に会いそうな料理を探してみるのにぴったり。
まずは、マルケを代表する名物料理、アスコリ風オリーブなんてどうでしょう。
一口で食べることができるし、冷めても美味しいし、酒のつまみにもぴったり。
この料理に使うのは、アスコリ・ピチェーノの生食用の肉厚で巨大なグリーンオリーブ。
古代ローマ時代からあった料理で、当時からグルメたちには人気でした。
マルケ出身のグルメな作曲家、ロッシーニも好きだったと伝えられています。
チェーチの粉のファリナータも、スリートフード。
粉物だけれど、ほんのり黄色いのがいいですねえ。
アランチーニやスップリもいいですね。
揚げ物以外なら、例えばムール貝のインペパータ。
ちょっと大作ですが、イースター料理のトルタ・パスクアリーナ。
これらのリチェッタは全部『グランディ・クラシチ』に載っています。
最後は今年もアーモンドの花をどうぞ。
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2018年3月26日月曜日
クイント・クアルト
今日は内臓の話。
「総合解説」は、こんな話から始まります。
もしガールフレンドに「レバーのヴェネト風は好き?」と聞いたら、答えは多分、「大好き」だ。では、直後に「じゃあ内臓料理は好き?」と聞いたら、うんざりした顔をされるのは、ほぼ間違いない。
レバーのヴェネト風
↓
いつも言っていることですが、日本とイタリアは、そんなに違わない。
ちょっと試してみてください。どうでしょう。
解説にもある通り、内臓を表すイタリア語は、色々あります。
fratttalie, interior, quinto quarto
と言った具合。
frattaglie の語源は、ラテン語で砕くと言う意味のfrctus。
つまり、全ての小さな部位や刻んだ部位のこと。
これに軽蔑を表す"aglia"がついたのが、彼女に聞くとうんざりされると言う内臓。
interioraは、骨の内側internoのフレッシュな部分、つまり内臓を意味しています。
辞書によっては、はらわたなんて訳しています。
interioraが好きかと聞かれて、好きとは答えにくい。
そして最後はクイント・クアルト。
クイントは5番目、クアルトは4番目。
動物を解体する時は縦に半分、そしてそれぞれを前後に半分、計4つに分けます。
この4つの部位からは肉を取ります。
そして5番目は、肉ではない部位、内臓を意味します。
この中では一番美味しそうな呼び方に感じるのは私だけでしょうか。
そういえば、先月の「総合解説」で訳したトリノのコンソルツィオのリチェッタに、その名もクイント・クアルトという料理がありました。
使う内臓はファッソーネ牛の脊髄、脳みそ、コブクロ、陰茎、第3胃。
訳したことのない部位ばかりで、かなり戸惑いました。
これらは全て別々に調理します。
ピエモンテはフィナンツィエーラと言い、内蔵料理の名物が多い地方ですね。
ちなみにトリッパ料理が名物なのは、ミラノ、フィレンツェ、ローマ。
トスカーナはおいしい牛肉の産地だし、ここも内臓好きがたくさんいそうですね。
そうそう、ローマも内臓の名物料理が多かった。
ローマの内臓料理は、ゲットーのユダヤ人と切っても切れない関係があります。
それにしても、最近のイタリアのグランシェフたちは内臓料理が大好きなようです。
1990年代の狂牛病騒ぎは、すっかり過去のものになったようです。
子牛の腎臓料理
↓
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“クイント・クアルト”の記事の翻訳は「総合解説」2015年11月号に載っています。
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2018年3月23日金曜日
『ジョーコ・デッラ・ピッツァ』
今日は、カット・ピッツァの王様、ガブリエレ・ボンチ著『ジョーコ・デッラ・ピッツァ』から、春のリチェッタをどうぞ。
この本では、彼のとびきり美味しそうなピッツァのリチェッタを季節ごとに紹介しています。
ナポリ風ピッツァのような厳格な縛りがないローマ風ピッツァは、かなり自由で作る人の感性がそのまま出ます。
本で紹介している春のピッツァは、
ズッキーニの花+モッツァレッラ+アンチョビ
アスパラガス+パンチェッタ+パルミジャーノ+レモン
玉ねぎ
トリッパ・ロマーナ
アッラ・ヴィニャローラ
卵+アパラガス+レモン
子羊肉+さやえんどう+コーヒー
ソラマメ+ペコリーノ
ピッツァ・フリッタ
などなど。
トリッパのピッツァなんてのもありますねえ。
一番シンプルなのは玉ねぎのピッツァ。
オイル、塩、こしょうで調味した旬の玉ねぎの薄切りを散らして焼くだけ。
トリッパも玉ねぎも、生地は小麦粉の白い生地。
彼の主な生地は小麦、ファッロ、ミックスの3種類。
ピッツァリウム、パニフィーチョに次ぐ出店はテルミニ駅のメルカート・チェントラーレ。
2016年にできたフィレンツェ発祥のフードコートのローマ版、メルカート・チェントラーレの目玉だったようですね。
メルカート・チェントラーレ
↓
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2018年3月21日水曜日
『トスカーナの市場料理』より
今日は『トスカーナの市場料理』より、春の料理をいくつか。
サンタンブロージョの市場から。ここはトスカーナの市場の特徴がよく表れていて、フィレンツェ市民が多く通う市場。
最後の方にちょっと出ていたトラットリア・ダ・ロッコは本でもお勧めのお食事処。
名物はトリッパ、牛タンのサラダなど。
料理は“グリーンピースのアッラ・フィオレンティーナPiselli alla fiorentina”
フィレンツェではグリーンピースはコントルノとして活躍しますが、パスタのソースにもします。
イースターには子羊のローストに添えます。
パスタのソースにする時は、軽く潰してつなぎやすくし、イタリアンパセリ少々を散らします。
材料/4人分
さやむきグリーンピース・・400g(さや付きで1kg)
EVオリーブオイル・・大さじ3
にんにく・・2かけ
イタリアンパセリ・・1房
砂糖・・小さじ1
塩、粗挽き黒こょう
水・・1カップ
薄い拍子木に切ったパンチェッタ・・50g
・鍋にさやから出したグリーンピース、オイル、にんにく、イタリアンパセリ、砂糖、塩、こしょう、水を入れ、弱火で40~45分煮る。
・グリーンピースが柔らかくなったらパンチェッタを加えて数分なじませる。
・10分休ませてコントルノとして、またはパンを添えて1品としてサーブする。
次は“クレスペッレ・アッラ・フィオレンティーナCrespelle alla fiorentina”
伝統的にはリコッタとほうれん草、カテリーナ・デ・メディチが大好きだったナツメグの具のフィレンツェの名物クレープですが、春はアスパラガス、グリーンピース、リコッタ、パンチェッタ、秋はオーブンで焼いたカボチャかポルチーニとネピテッラなどに変えます。
全粒粉とたっぷりのペコリーノで田舎風テイストが増します。
材料/4人分
クレスペッレ;
卵・・3個
小麦全粒粉・・大さじ3
塩・・一つまみ
牛乳・・250ml
詰め物;
ほうれん草・・400g
EVオリーブオイル・・大さじ1
にんにく・・1かけ
羊のリコッタ・・250g
おろしたペコリーノ・トスカーノ・スタジョナート・・100g
小角切りにしたペコリーノ・トスカーノ・セミスタジョナート・・50g
塩・・一つまみ
ナツメグ
卵・・1個
ベシャメル;
バター・・50g
小麦全粒粉・・60g
牛乳・・500ml
仕上げ;
おろしたペコリーノ
トマトソース
EVオリーブオイル
・最低半日前にクレープの生地を作る。卵、塩・全粒粉をだまを潰しながら混ぜて牛乳を少しずつ加える。
・詰め物を作る。ほうれん草を分ゆでて水気をよく絞り、刻む。油大さじ1とにんにく1かけでさっと炒め、リコッタ、おろしたペコリーノと小角切りのペコリーノ、ナツメグ、塩と混ぜる。さらに溶いた卵を加える。
・ベシャメルを作って塩とナツメグで調味する。
・薄く油を引いた直径15~15㎝のフライパンを熱し、クレスペッレを焼く。ほうれん草とリコッタのクリームを塗ってカネロニ型に巻き、ベシャメル大さじ数杯を散らしたオーブン皿に並べる。
・クレスペッレに残りのベシャメル、トマトソース大さじ数杯、おろしたペコリーノ、オリーブオイルをかけて200℃のオーブンで20分焼いて表面とベシャメルに焼き色をつける。
・オーブンから出したらすぐにサーブする。残ったら牛乳をたらして再び熱する。
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2018年3月19日月曜日
ロッシーニ風トゥルヌド
今日はロッシーニ風トゥルヌドの話。
ブログではこのお題、2回目になります。
食通の天才作曲家が考え出したこの料理については、新しく語ることなんて何もないくらい、みんなよく知ってますよね。
それにしても面白いのは、イタリアの料理雑誌に載ると、この有名なフランス料理も、見事にイタリア目線のイタリア人向きの記事になります。
まずこの料理は世界中でフランス料理と認識されています。
でも、記事によると、
この料理はロッシーニが亡くなる数年前にパリに住んでいた時代、当時パリで一番のレストランと言われていたカフェ・アングレのシェフにリチェッタのヒントを与えた。
次に、レシピが出版されるとエスコフィエなどによる多少のバリエーションが加えられて世界中に広まった。
この料理は柔らかいヒレ肉とフォアグラの組み合わせに、ロッシーニの故郷の名物で、この天才が昔から慣れ親しんでいたトリュフの香りを加えたもの。
つまりオリジナルのリチェッタは、ロッシーニの故郷、つまりペーザロの食材が不可欠の傑作だった、という結論へと、誘導されていきます。
もっと詳しく言うなら、トリュフはアックアラーニャなどの中央アペニン山地ではよく採れる、タルトゥーフォ・ネロ・ディ・プレジャートが最適だそうです。
アックアラーニャは白トリュフで有名ですが、黒も採れます。
↓
ロッシーニはトリュフのことをきのこのモーツァルトと呼んでいましたが、それはアックアラーニャのトリュフのことだったのかも。
この料理と組み合わせるワインは、イタリア人ならもちろんイタリアワイン、というか、ペーザロのワイン。
記事で提案しているのは、ヴァルトゥーリオというペーザロ県の造り手のオルモ(サンジョヴェーゼとモンテプルチャーノ)。
おまけの動画はミラノのリストランテ・トゥルヌド。
動画は変な雰囲気ですが、店名にもなってるトゥルヌドが名物の店。
ロッシーニ風を初めとして色んなトゥルヌド料理を出しています。
↓
ところで、ロッシーニは外食が大好きで、店に入るとメートルやソムリエだけでなくすべてのカメリエーレの腕を取って挨拶し、席に着く前に厨房に入ってシェフに敬意を表したという友人が明かすエピソード、珍エピソードの宝庫のロッシーニにしては、いい話だなあ。
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“ロッシーニ風トゥルヌド”の記事とリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2015年11月号に載っています。
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2018年3月16日金曜日
春のイタリア料理、その2
春のイタリア料理の話、もう少し続けます。
今回取り上げる本は、季節ごとの料理が載っている
カルロ・カンビの『ミリオーリ・リチェッテ・デッラ・クチーナ・レジョナーレ・イタリアーナ』
↓
チーメ・ディ・ラパ
↓
海では、甲殻類、イカやタコ、小魚が大きくなります。
ブルスカンドリ、グアンャーレのスパゲッティ
↓
チーメ・ディ・ラパのオレッキエッテ
↓
イタリアにいんげん豆がなかった時代からありました。
船乗りに取っては、乾燥して長期保存ができる貴重なビタミン源でもあったのです。
古代ローマ人や、ティレニア海沿岸地域ではチェーチをたくさん食べていたことが知られています。
チェーチのトルタは春の前菜の代表的な1品でした。
ポイントは、上質のチェーチの粉を使うこと。
“チェーチのトルタTORTA DI CECI”
材料;
チェーチの粉・・200g
ぬるま湯・・500ml
生イースト・・1キューブ
小玉ねぎ
EVオリーブオイル、塩
・ぬるま湯にイーストと塩一つまみを溶く。
・チェーチの粉をぬるま湯で溶いて柔らかい生地にする。
・数分こね、覆いをして2時間発酵させる。
・直径30㎝の型に油を塗ってチェーチの生地を広げる。小玉ねぎの輪切り2~3つかみをのせて油をかける。
・190℃のオーブンで30分焼く。
チェーチの粉の料理といえば、リグーリア、トスカーナのファリナータ。
↓
そしてシチリアのパネッレ
↓
野菜のフリットも美味しい季節。
日本の天ぷらとも比較されるイタリアのフリット。
↓
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2018年3月14日水曜日
春のイタリア料理
日に日に暖かくなってきて、春が待ち遠しい今日この頃。
今年のイースターは4月1日とちょっと遅めですが、春を待つのも楽しいものです。
季節の変わり目の恒例は、ジョルジョーネさんのリチェッタの紹介。
ウンブリアで農園とオステリーアを切り盛りするジョルジョーネさんの春のメニューはなんでしょう。
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2018年3月12日月曜日
コンソルツィオ、トリノ
10月号の「総合解説」で訳したのは、『オステリエ・ディ・イタリア』から、10年前にオープンしたトリノのコンソルツィオ(HP)のリチェッタ2点でした。
とても人気の評判の良い店のようですね。
リチェッタを訳した感想は、「この店の内臓料理はお勧め」です。
もちろんワインもチーズも様々なピエモンテの食材も素晴らしそうなのですが、内臓料理を“クイント・クアルト”と名付けるセンスの良さや、他の有名店では見かけないような内臓を使う冒険心、探求心は素晴らしいです。
それにしても、ピエモンテは牛肉料理のメッカですね。
イタリアの地方料理に牛肉料理はあまり多くないので、牛肉料理が豊富というのは貴重な存在。
さらに、元々ピエモンテは内臓料理の宝庫。
ピエモンテ風フリット・ミスト
ファッソーネ牛
グラン・ボッリート・ミスト
夏の高原で放牧されるピエモンテ種のメス牛の牛肉
さしが入っていないヘルシーで柔らかそうな赤身肉が絶望的に不足している今日この頃の食生活。
美味しいチーズになるミルクも出すピエモンテのメス牛は和牛より魅力的なのです。
今ではランゲ地方はピエモンテ牛の産地としても有名。
イタリアの北と南は、食文化がかなり違いますねえ。
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クイント・クアルトを含む“コンソルツィオ”のリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2015年10月号に載っています。
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2018年3月9日金曜日
ランゲのシェフたち
ランゲ地方の注目店、その2です。
まずはラ・チャウ・デル・トルナヴェント。
ラ・モッラのリストランテ・マッシモ・カミアの“鹿肉のコスタータのサワーチェリー添え”。
セッラルンガのグイド。
セッラヴァッレ・ランゲのコッチネッラ
グリンツァーネのカステッロ
おまけ。
ロエーロのカナーレのエノテーカのダヴィデ・パッルーダシェフ。
どの地区にも優秀なシェフがいますねー。
次回は、ピエモンテの内臓料理の話です。
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“グルメ旅~ランゲ”の日本語訳は「総合解説」2015年10月号に載っています。
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2018年3月5日月曜日
エンリコ・クリッパシェフ
「総合解説」では毎月、食べ歩きの役に立つようなグルメ情報を訳しています。
今月は、ランゲ地方。
ランゲ地方
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ランゲの食文化
↓
世界遺産にもなった美しい地方ですね。
ワイナリー、白トリュフ、ジビエなど、美味しい出会いもたくさんあります。
この地方の産物は、土壌と関わりが深いので、その土がどうやって形成されたかを知るのが一流シェフへの最初の一歩。
特に海なし県のピエモンテの土壌は、海との結びつきもあって、知れば知るほど興味深い地方です。
ピエモンテの地理
↓
ランゲ地方が他の地方と抜きんでて違うのは、各分野の専門的な研究がしっかりなされていて、料理人を養成する機関も充実していて、食文化に対する自治体と企業の支援が驚くほど厚い地方だということ。
豊かな地方は他にもありますが、その富が食の分野の発展にたっぷり使われている、と感じるのは、ルネサンス時代のフィレンツェのメディチ家のような存在が、現代のピエモンテのワイナリーだからなのでは、とひそかに思っています。
今月のランゲの記事で、最も注目度が高かったのは、エンリコ・クリッパシェフ。
記事にもある通り、彼はロンバルディアのブリアンツァ出身。
そんな彼が、リストランテ・ピアッツァ・ドゥオモをあえてランゲ地方の代表的な街、アルバに開いたと言うことは、ランゲの恵みに魅せられた結果と、さらに伝統にとらわれずに新しい発想で料理を作りたい、という意思の表れと言うことができるのでしょう。
ランゲの土壌の成り立ちから研究しているクリッパシェフ。
彼の有名料理、“インサラータ21・・・31・・・41・・・51”は、こんな料理。
↓
凄い料理ですね。
ランゲの各地にある素晴らしい環境の彼の畑で育てた野菜を好きなだけ使った料理なんですね。
まさにインサラータ・ピュー・ピュー・ピュー(笑)。
サラダを語りだすと止まらない。
そいえば彼はマルケージ・チルドレン。
イタリアの一流シェフの系譜が受け継がれています。
アルバのピアッツァ・ドゥオモ。
↓
クリッパシェフのポップ版スーパーオステリア、ラ・ピオラ。
ランゲのレストランの話、次回に続きます。
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“グルメ旅~ランゲ”の記事の日本語訳は「総合解説」2015年10月号に載っています。
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2018年3月2日金曜日
コッピア・フェッラレーゼ
今日のお題は、コッピア・フェッラレーゼ。
この写真の奥に見えている横に伸びたX状の物体です。
以前にもブログで取り上げたとがありますが(こちら)、これはパンです。
フェッラーラを初めとする地元の人々に熱愛されているこのパンは、コッピア・フェッラレーゼという名前です。
ついついフェッラレーゼと略してましたが、普通はコッピアが略称なんですね。
パスタ・ドゥーラという生地のこのパンは、薄い皮がカピカピに乾いていて硬く、中の白くてしっとりしたクラムとの対比が絶妙です。
ルネサンスのフェッラーラの権力者、エステ家の宮廷で生れました。
エステ家の儀式担当官で、イタリア料理史の重要人物の一人、クリストフォロ・メッシスブーゴによると、1536年のカーニバルのために作られたそうです。
2001年にIGP製品に認定されたのに、規定が厳しすぎて守れる造り手がわずかしかいないという、いかにもイタリアの頑固な職人が作りそうなパン。
フェッラーラ方面に行ったら忘れずに味見を。
その際は、にんにく風味の地元のサルーミ、ツィーア・フェッラレーゼとミネラウルウオーターのボトルも忘れずに。
「総合解説」ではこの角を1本ずつに分けて、パルミジャーノのクリームをつけてグリッシーニのように食べる食べ方を紹介しています。
↓
コッピア・フェッラレーゼ
↓
パスタ・ドゥーラと呼ばれるだけあって、とにかく生地が硬そう。
でも、複雑な造形をするにはぴったりなんですね。
パンのアーティチョークもお見事。
下の動画のタイトルは、フェッラーラの世界で一番美味しいパン。
↓
どんなに美味しいパンなんだろう、とすごく期待して食べたけれど、口の中の水分全部持って行かれるパンでした。
以上、フェッラーラの人に強烈に愛されているパンの話でした。
次回は、イタリア人に熱愛されているもの、コーヒーの話です。
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“コッピア・フェッラレーゼ”の生地の日本語訳は「総合解説」2015年10月号に載っています。
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2018年2月26日月曜日
バッカラ・マンテカート
今日のお題は、北東イタリアを中心にイタリアで広く普及しているノルウェー産の魚です。
その魚は、そう、バッカラ。
タイセイヨウダラです。
カンパニア州の町の市場のバッカラ。
↓
バッカラがイタリアに広まった過程は、何度も訳したことがあります。
キリスト教がらみなので、イタリアでもよく知られた話のはず。
イタリアのバッカラのふるさとは、ノルウェーのロフォーテン諸島。
↓
ヴェネチア共和国のピエロ・クイリーニ艦長が難破してロフォーテン諸島のロスト島に流れ着いたのが始まり。
ロスト島
↓
この人口約600人のロスト島の主要産業はストッカフィッソ作り。
ストッカフィッソは干ダラのこと。
ちなみにバッカラはタラの塩漬けで、ストッカフィッソは風と天日で干したもの。
脂肪分が少ないので傷む心配がなく、味も変わらず、長期間完璧に保存できる北の海の恵みです。
ロスト島のストッカフィッソ作り
↓
ヴェネチアの艦長はノルウェーから60本のストッカフィッソを贈られてイタリアに帰って来ました。そしてキリスト教の歴史的な会議、トレント公会議によってストッカフィッソはイタリア中に広まります。
宗教改革に対するカトリックの自己改革の源となったこの会議で、キリスト教の断食の規則が定められました。
断食と言うのは肉や動物性脂肪を取ることを禁じられた日のことです。
ストッカフィッソの戻し方
↓
バッカラ・マンテカートの説明は、バッカラとストッカフィッソの説明から始まって、バッカラと言う名前だけれどストッカフッソを使うということを毎回確認。
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Cが2つのバッカラではなくCが一つのバカラのヴィチェンツァ風
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ヴェネチアのバッカラ・マンテカートのチッケッティ
↓
おまけ!ヴェネチアでバッカラ・マンテカートと言えば、バカロ巡り。
楽しすぎ~!
↓
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“ヴェネトのバッカラ料理”の記事とリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2015年10月号に載っています。
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2018年2月23日金曜日
ファッロのパスティエーラ
今日のお題はファッロ。
「総合解説」用に“ファッロのパスティエーラ”のリチェッタを訳しながら、これ考えた人エライ!と思ってました。
ご存知の通り、ファッロはイタリアではその価値が再評価されている話題の古代小麦です。
パスティエーラに入れる牛乳で煮た小麦の粒の代用品にしても、何の問題もないですねー。
多分、ナポリ料理専門の人は、こんなこととっくの昔に知っていたのでしょうが、見事に秘密は守られてきたようです。
ファッロの利用価値は、無限に広がりますねー。
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パスティエーラ
↓
ナポリの復活祭のドルチェ、パスティエーラと言えば、リコッタクリームの中の小麦の粒のプチプチの食感が、激しく病みつきになるドルチェです。
実は、3年前にブログでパスティエーラの話題を取り上げた時、もうすでに、「ファッロで代用する」、という話もしていたのですが、実際に代用したリチェッタは初めて訳しました。今月の「総合解説」に載せましたので、ぜひどなたか作ってみて下され。
昔のナポリでは復活祭の時期になるとパスティエーラ用小麦の行商人が登場したそうですが、さすがに現代では、スーパーで瓶詰めの水煮小麦を買います。
プーリアにも小麦の粒を使ったドルチェがあります。
↓
ザクロの粒も加わって、プチプチ感マシマシですね。
そういえば、今年の復活祭は4月1日だそうですよ。
春が近づいていますねー。
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“ファッロ”の記事とリチェッタの日本語訳は「総合解説」2015年10月号に載っています。
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2018年2月19日月曜日
パスタ・リゾッタータ
今日のお題は「総合解説」から、体が温まりそうなショートパスタ。
まず1品目は、ペンネッテのリゾッタータ。
パスタ・エ・ファジョーリと、発想は一緒ですね。
寒い時期のパスタはソースにとろみをつける。
パスタをゆでるテクニックによってとろみをつける場合と、食材でとろみをつける方法がありますが、
テクニックの場合はリゾットと同じ、マンテカーレです。
リゾットと同じ要領で、パスタを少量の煮汁で煮ながらマンテカーレし、パスタのでんぷんをゆで汁に溶け込ませてとろみをつける作り方です。
温かさととろみが加わって濃厚なパスタになります。
基本のリゾッタータ
↓
とろみを出す食材は、パスタがアルティジャナーレなら、より高いマンテカーレ効果が期待できます。
↓
イグレス・コレッリシェフのレッスン
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とろとろの仕上がりですね。
さすがはグランシェフです。
寒い時期はリゾッタータのパスタを作るのには最適の季節ですね。
アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノはリゾッタータのパスタの定番ですが、仕上げにパスタを少量のゆで汁でマンテカーレするというテクニックを応用して煮汁に赤ワインを加えれば、とても印象的な赤いパスタになります。
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“秋のショートパスタ”のリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2015年10月号に載っています。
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2018年2月16日金曜日
リゾット・アル・サルト
今日のお題は、リゾット・アル・サルト。
こんな料理。
これはまたお焦げが多めで、一段と香ばしそう。
中華のおこげのイメージがあるので、ヘタすると中華料理と比べてしまいそうですが、
サフランのリゾットは美味しい鶏のブロードをたっぷり吸っているので、あんかけなどのソースは必要ありません。
リチェッタはとてもシンプルなので、作る人の腕次第で、アレンジも自在。
トラットリア・デッラ・ペーザのリゾット・アル・サルト
↓
こちらはオッソブーコ添え
↓
B級な料理だけに、ミラノで食べるなら、美味しいと言われる店で食べたいもの。
「総合解説」では『サーレ・エ・ペペ』誌お勧めの店も紹介していますので、参考にどうぞ。
その中の1軒。
リストランテ・テスティーナ。
下の動画でも、リゾット・アル・サルトを作ってます。
秋はきのこを付け合わせにすることもあるそうです。
他にもロンバルディアやミラノの伝統料理が充実しているそうです。
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“リゾット・アル・サルト”の記事とリチェッタの日本語訳は「総合解説」205年10月号に載っています。
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2018年2月14日水曜日
カスターニャとマッローネ
「総合解説」10月号発売しました。
最初の記事は、10月の旬の食材。
1ページの記事ですが、毎月、新しいことを教えてくれます。
今月知ったのは「栗」のこと。
イタリア語で栗はcastagnaとmarrone。
カスターニャとマッローネ。
なんとなく両者を区別して使っていることは知っていましたが、どう違うのか、その答えがはっきりわかりました。
これはカスターニャ。
野生の栗の木の実です。
↓
それに対してマッローネは栽培用品種の栗。
マッローネはカスターニャより甘くて皮が薄くて丸いのが特徴。
マッローネ・デル・ムジェッロIGP
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底の白い部分の形で見分けられるんですね。
四角いのがマッローネ。
平たく言えば、普通に森に落ちているのがカスターニェで、ブランド品がマッローネ、ということでしょうか。
その他に、ビットとビット・ストリコの違いとか、シナモンの香りのバジリコとか、これは日本ではシナモンバジルと呼ぶんですね。
イタリア語ではバジリコ・カンネッラです。
そしてこれは、トンノ・アラルンガ。
地中海に棲む、ある部分が長いマグロです。
イタリアでも日本でも、その形が名前の由来のようですね。
産卵のために岸に近づく秋に獲れます。
↓
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詳しくは「総合解説」2015年10月号をご覧ください。
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2018年2月12日月曜日
カルロ・クラッコのフィナンツィエーラ
「総合解説」2015年9月号には、カルロ・クラッコの本『クラッコの地方料理』から、ピエモンテ料理のリチェッタを日本語に訳して載せました。
カルロ・クラッコという人は、インテリでハイセンスでナイーブ、というイメージがあるのですが、それはすべて彼の本を読んで受けた印象です。
常に料理に対して熱い情熱を抱いている彼は、語りたいことがたくさんあります。
自分の過去の体験も交えながら詳しく料理を語るので、当然ながらリチェッタはかなり長くなります。
今回も、フィナンツィエーラとフリット・ミストの2つのリチェッタに、5ページを費やしました。
フィナンツィエーラというのは不思議な料理です。
まず、内臓料理なのに、グランシェフたちに愛されて、洗練された料理としても知られています。
クラッコ氏もそんなシェフたちの一人で、アラン・シャペルのこの料理が好きだったと語っています。
シャペル氏は、自分の料理のオリジナルがピエモンテ料理のフィナンツィエーラだと語ったことはないそうですが、クラッコ氏はリチェッタはほぼ同じだとかなり確信していました。
デュカス氏もこの料理を作っていると聞いてモンテカルロを再訪した、とも語っています。
そしてモンテカルロで沸き上がったのが、フィナンツィエーラに、子牛肉は加える必要がない、という考え。
彼によると、臓物以外の材料は、伝統的なリチェッタでは使っておらず、体裁をよくするために後になって加えられたものだそうです。
ただし、甲殻類を加えるアレンジは受け入れています。
クラッコ氏のフィナンツィエーラの第一印象は、“とても美しい料理”だそうです。
料理の写真は本で見るとはっきりと写っていて確かに美しいです。
本をお持ちの方は、ぜひ見てください。
グランシェフが作る美しい料理と思ってフィナンツィエーラを見ると、この料理対する印象が全く変わりました。
伝統的なフィナンツィエーラの材料は、リードヴォー、脳みそ、脊椎、鶏の臓物(肉垂、とさか、キンカン、レバー)などです。
まさかこんな臓物料理を美しいと感じるなんて、意外でした。
マルコ・ロンバルドシェフ Ciau del Tornavento のフィナンツィエーラ
↓
クラッコ氏のリチェッタとは全く違いますねー。
これはピエモンテで食べ比べると面白そうですね。
OSTERIA DEL BORGO di Carrù のフィナンツィエーラ
↓
クラッコシェフのリチェッタは、臓物をソースであまりつなげずに、1つ1つを味わわせる盛り付けです。
さらに彼はリードヴォーが大好きなようで、実は、今回はリチェッタがかなり長くなったのでこの部分は省略しているのですが、リードヴォーについても熱く語っています。
彼のリードヴォー料理を食べてみたいと密かに思っているくらいです。
シェフが自分の好みの食材についてこんなに自由に長々と語る本なんて、あまり見たことありません。
ピエモンテの内臓料理に関しては、次号にも登場します。
こちらの料理も超個性的なので、お楽しみに。
ピエモンテが、こんなに内臓料理大好きな地方だとは、知らなかった~。
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『クラッコの地方料理』のピエモンテ料理のリチェッタの日本語訳は「総合解説」2015年9月号に載っています。
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2018年2月9日金曜日
ズッパ・アッラ・パヴェーゼとパヴィアの戦い
「総合解説」2015年9月号のヴィジュアル解説です。
まずはフィーコディンディア・デッラ・エトナ。
これが栽培されていると知ったのは比較的最近で、フィーコディンディアは、シチリアでは道端にたくさん実っている野生のものを食べていると思い込んでいました。
フィーコディンディアの収穫
↓
フィコディンディアは、イタリアでもシチリア以外では見かけたともなく、こんなに栽培して誰が食べるのだろうと、若干心配になりますが、シチリアに最後に足を踏み入れてからずいぶん年月がたった昨今、画像を見ると、無性に食べたくなります。
そもそもパヴィアはミラノの南にある、ポー河の支流のティチーノ河畔のロンバルディアの街。
↓
ズッパ・アッラ・パヴェーゼ
↓
一見するとスーパー簡単なスープです。
ブロードを作ってあればですが。
このシンプルなスープは、フランスの王様、フランソワ1世のために、レペンティータ農場の農婦が、あり合わせの材料を使って考え出した、という話が伝説となって語り継がれています。
このフランスの王様、スペインの王様で神聖ローマ皇帝のカール5世と戦ったパヴィアの戦いで敗れて捕虜になり、1年間の捕虜暮らしの後でフランスに戻って、フランスの宮廷に、パヴィアの美味しいご馳走としてこのスープを広めたのでした。
この話は、後のパヴィアの人たちにとても気に入られて、伝説となりました。
戦いがあったのは1525年のことです。
そして約500年後の2015年、ロンバルディアの公式伝統料理に認められました。
ロンバルディアの人々に、かなり愛されている料理ですね。
スペインのテレビ局によるパヴィアの戦いのドラマ化
↓
スペイン人に取って、フランス王が捕虜になるって、ネタとしては抜群のインパクトだったのでしょうね。
王様が捕まるところで終わってますが、この後に、ズッパ・パヴェーゼが登場する場面があったに違いないです。
これも、地元で食べたい料理。
パンと卵に熱々のチキンのブロードをかけたスープなんて、何の変哲もなさすぎて、特に食べたいとも思わなかったのですが、地元では人気のようで、何か特別な秘密があるんじゃないかと思ってしまいます。
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“エトナ山のフィーコ・ディ・インディア”と“グルメガイド~パヴィア”の記事とリチェッタの日本語訳は「総合解説」2015年9月号に載っています。
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2018年2月5日月曜日
『ハリーズ・バー』
先日、クレアパッソのHPでアッリーゴ・チプリアーニ著『ハリーズ・バー』を紹介しましたが、久しぶりに読んだ本の内容がとても面白かったのでちょっと訳してみることにしました。
それでは、序文をどうぞ。
「もし1929年にクレジットカードがあったら、現在ハリーズ・バーは存在していなかっただろう」
私の父、ジュゼッペ・チプリアーニは1900年にヴェローナで生まれた。
その後彼の家族はドイツに移民する。
ジュゼッペの父親のカルロは工事現場の下働きなどをしていたが、
第一次世界大戦がはじまると、ジュゼッペはイタリアに戻ってカメリエーレになった。
そして1928年に、ヴェネチアのホテル・エウロパのバーテンダーになる。
彼の担当の客の中に、ボストン出身の若いアメリカ人がいた。
ハリー・ピッカリングという名のとても裕福な青年だったが、当時はまだ、我々に取ってはラッキーなことに、アメリカン・エクスプレスは発明されていなかった。
ある日このアメリカ人青年は(誰も彼がリッチだとは知らなかった)、突然私の父のカウンターで飲むのをやめた。
そしてティールームのテーブルの間をうつろな目をした憂鬱な顔でぶらつきだした。
私の父は現実的な人間だった。
支払いが確かな客でも客の顔つきから目を離すなと言うことを教わっていた。
一呼吸おいて、父は青年の元に行き、何かあったのかと尋ねた。
青年は少しためらったが、結局すべてを語った。
彼は、彼の厳格で裕福なアメリカ人の叔母とヴェネチアに来ていたが、叔母は怠惰な甥に耐えられなくなっていた。
甥の浪費と酒癖の悪さが彼女を苦しめていた。
ついに彼女はアメリカに帰る決意をした。
しかも一人で、甥には一銭も残さずに。
父は彼に、必要ならお金を貸しましょうか、と申し出た。
ハリー・ピッカリングは答えた。
「本当に貸してくれるんですか?」
父はsiと答え、彼に金を貸した。
こうして、この若くてやや自堕落だが、誠実な顔をした人懐こい青年は、私の父から金を借りた。
当然だが、父は私の母には何の了解も取らなかった。
金額は、1万リラだ。
2年後、青年は借金を返すためにヴェネチアに戻ってきた。
到着するなりすぐに父に会いに行き、全額を返済した。
そしてこう言った。
「そしてこの3万リラはバーの開業資金だよ」
ハリーほどこの店にふさわしい名前はない、と考えた父は、店をハリーズ・バーと名付けた。
もしミスター・ピッカリグがクレジットカードを持っていたら、借金をすることもなく、私の父との金の貸し借りはなかっただろう。
働き者の私の父のキャリアの中で、これは彼が唯一行った取引だった。
こうしてハリーズ・バーは誕生した。
この店のことを家族は単に"バール"と呼ぶ。
そこには、セレブも単なる人間だと考えるヴェネチア人気質が表れている。
私はバールの中で生まれた。
バールがなかったら、私の考え方も行動も違うものになっていたはずだ。
多くの客が好奇心から、この店の歴史を訪ねる。
そしてもっと多くの人が、一日の売り上げはいくらか、客は何人か、ヘミングウエイやオーソン・ウエールズが座った席はどれか。そのほか多くのことを聞く。
私はアダムはバールを経営していたと確信している。
彼が客に彼のバールがどのように生れたか語ったことは、すべて書き留められて世界の初めについての本になった。
私が父がどうやって店を始めたかについて語ったことは、いつか伝説になると確信している。
リチェッタの翻訳は「総合解説」2015年11月号に載せる予定です。
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2018年2月2日金曜日
リゾット・アッラ・ピロータ
前回のブログでは、ヴェローナの米、ヴィアローネ・ナノを取り上げました。
イタリアは、ヨーロッパで最大の米の産地ですが、その中心地は、経済圏の強さからいってもピエモンテで、ヴェネトはやや後れを取っている存在かも。
ヴェネトでも、ヴェローナの限られた地域、イゾラ・デッラ・スカラ周辺でのみ栽培されているヴィアローネ・ナノ・ヴェロネーゼIGP。
ピエモンテのお米は垢ぬけてますねー。
リチェッタを訳す時、その名前の意味が分からないで困ることが時々あります。
リゾット・アッラ・イゾラ―ナと、リゾット・アッラ・ピロータもそんな名前。
島風リゾット?パイロット風リゾット?
なんかしっくりこないなあ、と思っていたのですが、今回の記事を訳して、ようやくスッキリしました。
まず、イゾラ風は、ヴェローナ県の米の産地、イゾラ・デッラ・スカラ風のこと。
↓
前回も登場した米メーカーの社長さんが作ります。
こちらのページによると、このリチェッタを完成させたのは街出身の料理人。
ヴィアローネ・ナノ米のプロモーションのため、1967年に町公認の料理になりました。
1985年には、もっと華やかでモダンな観光客受けしそうなリチェッタに改定されています。
2つ目の疑問。
ピロータは、パイロットではなく、脱穀係のこと。
前回のブログでも動画で紹介したように、米を脱穀する機械を動かして脱穀した米を集め、後を掃除する係の人です。
脱穀機はピーラpilaで、この係のことをピロータpilotaと呼びました。
イタリアの農民は、農奴と呼ばれる制度で、領主に隷属していました。
領主から借りた土地を耕してその収穫を領主におさめ、領主から許されたものだけを自分たちで食べていました。
例えば豚肉なら赤身が入った脂身、つまり一番価値が低いラルド。
米なら脱穀の間にこぼれ落ちた粒です。
自分たちが汗水たらして作ったものなのに、商品価値のないものしか食べることが許されない、そんな厳しい暮らしの中で、知恵を絞って生み出されたのが、リゾット・アッラ・イゾラーナやリゾット・アッラ・ピロータだったのです。
多少地味なのも仕方がない。
リゾットはマンテカーレする料理なので、米の粒に残った澱粉も味のうち。
この澱粉を残すように精製するのが、ピロータの腕。
ところが、地方料理の分類では、リゾット・アッラ・ピロータは隣のマントヴァ料理。
この料理の歴史は、ロンバルディアの視点でも調べる必要がありそうですね。
スッキリしたはずが、また謎が残ってしまった。
でも、これがイタリアの地方料理です。
リゾット・アッラ・ピロータ
↓
米は日本人には最も身近な食べ物ですが、イタリアにどう伝わって、どう広まっていったのかは意外と知らない。
8世紀にヨーロッパ(スペイン)に米を伝えたのはムーア人(アラブ人)でした。
イタリアに伝えたのは十字軍とか、ナポリ王国を支配したスペイン人経由でムーア人、シチリアにやって来たアラブ人、中東や極東と交易していたベネチア人など、エキゾチックな話が様々伝わっています。
イタリアに根付いた後は、持ち前の職人技と創造力が大いに刺激される食材だったらしく、各地で個性的で興味深い発展を遂げていきます。
イタリアの米は、極めるととても面白い食材です。
ヴィアローネ・ナノ・ヴェロネーゼIGP のリゾット、アマローネ風味。
野菜もブロードもワインもすべて地元産。
↓
ピエモンテの人は米はワインの中で死ぬと言いましたが、ヴェネトの人は米が酔っぱらってると言っていますねー。
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"ヴィアローネ・ナノ"の記事とリチェッタの日本語訳は「総合解説」2015年9月号に載っています。
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2018年1月29日月曜日
ヴィアローネ・ナノの産地イゾラ・デッラ・スカラ
IGPのヴィアローネ・ナノ・ヴェロネーゼの産地は、イゾラ・デッラ・スカラの周辺だけ。
ということが前回のブログのまとめ。
イゾラ・デッラ・スカラ、階段島なんて印象的な名前の地名、初めて聞きました。
ヴェローナ県なのは名前から想像つくのですが、どんな町なのでしょうか。
産地はこんなところ。どうやら島ではないのですね。
↓
ヴィアローネ・ナノ・ヴェロネーゼの精米過程
↓
最新の技術を使ってモダンな工場で精米して、お洒落なデザインのケースに入って販売されています。
でも、イゾラ・デッラ・スカラには、「総合解説」でも紹介している通り、イタリアで一番古くて現役の脱穀機があります。
17世紀に作られたそうですよ。
イタリアの職人魂の一端を見るような、壮大な機械ですね。
巨大な時計のような仕組みだそうです。
動力源は川の水。
西と東で、目的は同じでも、考え出すシステムは全く違ったのですね。
上の動画でコック服を着て、古い脱穀機のシステムを熱く語る彼は、お米のメーカー。
↓
彼は社長さんだったのか。
自称、イタリア米を世界に伝えるアンバサダーだそうですよ。
レストランも経営していて、ヴィアローネ・ナノ・ウェロネーゼを売る体制は万全。
ジャポニカ米の本場、日本にも輸出してます。
というのが自慢のセールストークのよう。
米はこれだけ熱い作り手がいれば品質には問題なさそうですが、問題は料理です。
ヴィアローネ・ナノ・ヴェロネーゼの美味しさを最大限引き出せるのは、リゾット。
実は、イゾラ・デッラ・スカラ風リゾットというのがあるのですが、私はこの記事を読むまで見たことも聞いたこともないと思っていました。
でも、この料理ができたいきさつを読んで、思い当ることが・・・。
次回はリチェッタの話です。
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"ヴィアローネ・ナノ"の記事とリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2015年9月号に載っています。
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2018年1月26日金曜日
ヴィアローネ・ナノ米
いやービックリしました。
近所のスーパーで、ヴィアローネ米を売っていたのです。
ごく普通の小さなスーパーですが、時々とんでもなくニッチなイタリア食材を売りだす変わったスーパーです。
そんな時、『サーレ・エ・ぺぺ』にタイムリーにヴィアローネ・ナノの記事が。
詳細は日本語訳を「総合解説」に載せましたが、訳していて特に印象に残ったのが、
ヴィアローネ・ナノはソースを吸い込みやすい米なので、北イタリアの伝統的手法で作るリゾット、つまり米を炒めてブロードで煮て、柔らかく、クリーミーな"アッロンダall'onda"になるまで木べらでマンテカーレするリゾットには最適
という解説。
ヴィアローネ・ナノIGP管理組合によると、多孔質でソースを吸いやすく、粘りが少ないので粒がくっつきにくく、荷崩れしにくい、という3つの特徴があるそうです。
言い換えれば、リゾットに特化した米なんですね(美味しいスープができるという人もいます)。
ヴィアローネ・ナノは、ヴェローナの貴族の所有地やマントヴァの農家、ヴェルチェッリの中世の修道院の農園などで栽培されてきた米です。
でも、IGP認定されているのはヴェローナ南部のイゾラ・デッラ・スカラの周辺で作られたものだけ。
この周辺では有機栽培が盛んで、水田にはコイやアオサギなどがいるそうです。
ヴィアローネ・ナノIGPの産地
↓
有機栽培の水田
↓
水源。米は"泉の真珠"と呼ばれています。
↓
この地方では、一時はヴィアローネ・ナノの栽培量が減少しましたが、現在は現代的な栽培方法と国際的な販売戦略を取り入れて復活しているようです。
次回はヴィアローネ・ナノの本拠地、イゾラ・デッラ・スカラの話。
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"ヴィアローネ・ナノ"の記事とリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2015年9月号に載っています。
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2018年1月22日月曜日
パスタ・エ・ファジョーリのバリエーション
今日は暖まりそうな料理、パスタ・エ・ファジョーリの話。
イタリアの典型的な家庭料理で、見栄えは地味。
この料理はどの地方の料理と決めつけることができないくらい、イタリア中に広まっています。
おらくそれは、この料理が特殊な食材や技術を使わない、純粋な家庭料理だったからでしょう。
私の初パスタ・エ・ファジョーリはローマのトラステヴェレ地区のリストランテでした。
おじいちゃんカメリエレの接客術が素晴らしい店で、トラステヴェレの下町的な雰囲気の中で食べるのに、これほどぴったりな料理はありません。
なので私の中では、パスタ・エ・ファジョーリと言えばラツィオ料理というイメージが出来上がりましたが、もちろん、初めてこの料理を習った場所がポー河沿いの地方だったら、おそらく違う意見になるでしょう。
パスタ・エ・ファジョーリの基本的なリチェタ。
↓
基本の材料は香味野菜、トマトペースト、豆、パスタ。
さらに今月の「総合解説」では、この料理のバリエーションの例をいくつか提案しています。
アイデア次第で、いくらでもバリエーションが広がる料理です。
まず、豆は、その時手に入るもので、一番美味しいものを使うのが基本です。
なので、生の豆が出回る時期には生のいんげん豆を使います。
パスタはショートパスタや短く折ったロングパスタが一般的ですが、手打ちパスタでもOK。
「総合解説」では
・生のボルロッティ豆と小麦粉とセモリナ粉の手打ちパスタ、
・乾燥黒目豆とガルガネッリ、ペスト・ジェノヴェーゼ入り
・乾燥白いんげんとグラニャーノ、イカ入りのマリナーラ
を紹介しています。
イカ入りマリナーラは豆も白いんげんを使って白い料理に仕上げます。
生のいんげん豆でパスタ・エ・ファジョーリ
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”パスタ・エ・ファジョーリのバリエーション”のリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2015年9月号に載っています。
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2018年1月19日金曜日
ポルチーニ
今月の「総合解説」の”きのこ”の記事は、こんな文章から始まっています。
イタリアの1/3は森だ。
きのこの収穫は国民的関心事、なんだそうですよ。
どこかの国に似てますねー。
きのこ狩りが大人気なのは、多分、ポルチーニがあるからではないでしょうか。
こんなきのこが裏山に生えていたら、テンション上がりますよね。
テンション上がった人々
↓
マンマ・ミーア!
ポルチーニがあるとキスしたくなるんですね。
↓
記事はこう続きます。
誰もがバスケットをきのこで一杯にして家に帰る姿を思い描くが、天然物で謎の多いきのこの収穫に保証はない。
はあ、現実を見なさいってことか~。
写真のきのこは、上がポルチーノ・ロッソ、下がポルチーノ・ネロ。
どちらも、ポルチーニの一種です。
一番上の動画のポルチーニもポルチーノ・ロッソ。
ポルチーニの特徴は、乾燥させても歩留まりが良いこと。
長時間の過熱にも耐え、手の込んだ料理に最適です。
フレッシュのものは日本ではトリュフよりレアかも。
イタリア料理人なら、フレッシュのポルチーニを食べるためにイタリアに行った人も少なくないはず。
きのこが地方料理の重要な食材の地方は、トレンティーノ、ピエモンテ、リグーリア、エミリア、トスカーナなど。
きのこ狩りは最高の体験ですが、自治体にお金を払って許可を得た人、毒キノコとの区別がつく人と一緒にね。
きのこ狩りの季節は春遅くから秋。
もう終ってますね。
肉より頻繁にきのこを料理すると言うジェノヴァの、ジェノヴァ風ポルチーニのソース
ポルチーニとポレンタは黄金の組み合わせ。
ポレンタのフリットとポルチーニのトリフォラートの前菜。
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”きのこ”のリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2015年9月号に載っています。
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2018年1月17日水曜日
手打ちファルファッレ
今日は、「総合解説」の今月のリチェッタのビジュアル解説。
まずは手打ちのファルファッレ。
手打ちのファルファッレは、簡単にできてなかなか素敵です。
この動画は初心者向きのちょっとぎこちない作り方。
↓
こちらはちょっと大雑把すぎ。
↓
「総合解説」では、この中間の片手で作る熟練者向きのテクニックを紹介しています。
次はチュッピン。
リグーリアのズッパ・ディ・ぺッシェですが、今ではサンフランシスコ料理のチョッピーノとして有名になりました(諸説あり)。
解説では1人前サイズのシンプルでとても上品な1品に仕上げています。
チュッピンよりチッョピーノという名前のほうが可愛い?
名前で損してる料理だなあ。
最後はポルチーニのコトレッタ。
解説ではIMPANATI/パン粉揚げとしましたが、コンレッテのほうが名前としては美味しそう。
それにしてもこの大きさで肉厚の天然物のきのこ、すごいですねー。
そうそう、ポルチーニにはいろいろな種類があります。
私も初めて知りましたが、今月の総合解説で紹介しています。
この話は次回に。
このページの料理のリチェッタの日本語訳は「総合解説」2015年9月号に載っています。
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2018年1月15日月曜日
9月の食材
「総合解説」9月号はもうすぐ発売。
今日は”今月の食材”のビジュアル解説です。
まずはリクイリツィアliquirizia。
日本語だと甘草/カンゾウ。
英語だとリコリス。
木の小枝にしか見えないこの物体と、それが原料という真っ黒い飴。
イタリアの料理書には度々登場するのでその存在は知っていました。
でも、はっきり言って、これのどこがいいのか全く謎。
好奇心から一度は口にするのですが、すぐに激しく後悔。
カラブリアではDOP食材らしい・・・。
枝かと思ってましたが、使うのは根。
9月に収穫して黒い汁を集め、飴やハーブティー、リキュールなど様々なものに加工します。
9月に収穫するものをもう1品。
イラクサ/orticheオルティケ。
おとぎ話に出てくるなんだか痛そうな棘がある草ですよね。
どんな話だったかは忘れちゃいましたが、とても食べられるようなものではないという印象が、子供心にくっきりと刻まれています。
なんとデンマークで実写化されていました。
超メルヘン。
↓
大人になって、イタリアの料理書にイラクサがかなり頻繁に登場するのに慣れると、イラクサは食べ物という認識になりました。
イラクサをおとぎ話の草だと思っていた頃は食べてみてもいいいかも、とか思っていましたが、棘はあるしアクはあるしで、料理する人は大変かも。
代表的イラクサ料理、リゾット
↓
下ごしらえは手袋をしてやるんですね。
これを素手でやるとおとぎ話の苦行みたいなことになるのかなあ。
最後は淡水魚のtinca/ティンカ(テンチ)
コイ科の魚。
沼から川に移る9月頃は釣りやすい。
ミラノの運河でティンカ釣り
↓
ティンカのオーブン焼き
↓
9月号は明日発売の予定です。
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2018年1月12日金曜日
マガモのラビオリ、レンズ豆と黒トリュフ風味
『カッチャジョーネ』からジビエのパスタのリチェッタ翻訳
ウンブリア、オルヴィエートのリストランテ・イ・セッテ・コンソリ(webページはこちら)のシェフ、アンナ・リタ・シモンチーニさんのリチェッタ。
"マガモのラビオリ、レンズ豆のパッサータと黒トリュフ風味"
Ravioli di germano reale, passata di lenticchie e tartufo nero
材料/4人分
パッサータ;
レンズ豆・・150g
タイム
ラビオリ;
小麦粉・・250g
卵・・4個
塩・・一つまみ
小角切りにしたマガモの肉・・200g
にんじん・・1/2本
葉玉ねぎ・・1/2本
白ワイン・・1/2カップ
セージ、ローズマリー
EVオリーブオイル、バター
黒トリュフ・・50g
塩
トッピング;
グラナ・パダーノ、EVオリーブオイル
・パッサータを作る。タイムで香りをつけた水でレンズ豆をゆでてミキサーで攪拌する。
・ラビオリを作る。にんじん、葉玉ねぎ、セージ、ローズマリーのみじん切りをオイル大さじ4でソッフリットにし、マガモの肉を加える。塩とワインも加えて5分煮る。
・これをミキサーにかけて締まった詰め物にする。
・小麦粉、卵、塩をこねて麺棒で薄く伸ばし、直径12㎝の円形20枚に抜く。詰め物をのせてラビオリ形に閉じる。
・塩を加えたたっぷりの湯で3分ゆで、バターとトリュフのジュリエンヌを熱したフライパンでなじませる。
・皿にレンズ豆のパッサータを敷き、その上にラビオリとトリュフを盛り付ける。
削ったグラナ・パダーノで覆い、オーブンで1分グラティナ―レする。
・仕上げにEVオリーブオイルをまわしかけてサーブする。
レンズ豆と黒トリュフはどちらもウンブリアの貴重な名物。
ジビエとの相性もバッチリ。
イタリアでは様々なトリュフが採れますが、代表的なのは2種類。
1つは10月から12月にかけて育ち、ピエモンテ(ランゲ、モンフェッラート)、ロンバルディア(オルトレポー・パヴェーゼ)、エミリア・ロマーニャ(パルマとロマーニャ地方にまたがるアペニン山脈)、トスカーナ、マルケ、ウンブリア、アブルッツォ、モリーゼの各地で採れる白トリュフ(代表的産地はピエモンテのアルバとアックアラーニャ)。
もう1つは11月から3月にかけて育ち、ウンブリアとマルケにまたがるアペニン山脈、ピエモンテ、ヴェネト、リグーリアで採れる黒トリュフ。
白トリュフは薄くスライスしながらシンプルな料理にかけて生で食べ、黒はさっと加熱してアロマを立たせる。
アンナ・リタ・シモンチーニシェフのオルヴィエト風バッカラのウミド
参考までに、この動画の最初のほうでマガモを切り分けています。
切り落としや小骨はブロードに使います。
肉は香草とワインで2日間マリネ。
マガモのパスタ
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