2011年2月24日木曜日

ブルー・ディ・ブーファラ

北の水牛の話を続けます。
『ア・ターヴォラ』の解説です。

前回は、北イタリアで飼育されている水牛のモッツァレッラの話でした。

北のモッツァレッラは、伝統や主流という点を付きつけられると、南(カンパーニア)のモッツァレッラは超えられない。
それは厳然とした事実。
でもそれでは、北で水牛を飼育していても、なんだか面白くないですよねえ。
南の人にも文句のつけようがないようにするには、どうしたらいいのか。

その答えは単純です。
北の伝統や主流を使えばいい、です。


北イタリアの代表的な水牛の飼育地、ロンバルディア。
ロンバルディアには、どんなチーズがあるでしょう。

ゴルゴンゾーラ、マスカルポーネ、グラナ・パダーノ、パルミジャーノ・レッジャーノ、タレッジョ、ビット・・・。

メジャーなものだけでもたくさんあります。
あまり知られていないものはもっとあります。
チーズ作りの伝統の厚みという点では、南をはるかにしのいでいます。

これらの製法を、水牛のミルクにも用いてみればいいじゃないか。
という訳で、実際、ロンバルディアでは、マスカルポーネやバターなど、様々なチーズが水牛のミルクから作られています。


そんな中でも個性的で注目されているのが、ブルー・ディ・ブーファラBlu di Bufala。
ロンバルディアの水牛のミルクから作られる青かびチーズです。

こんなチーズ(食べている動画です)

産地は、イタリアでもっともDOPチーズの多い町、ベルガモ。
日本にも入っているようですね。

作っているのは、カゼイフィーチョ・クアットロ・ポルトーニ。
webページはこちら

2001年に、北イタリアで最初に水牛の飼育を始めた農家から水牛を購入して、水牛の飼育を始めたのだそうです。
2005年に、モッツァレッラ以外の、ベルガモの伝統と結びついた、かつ水牛の特徴を生かしたチーズ作りに挑戦。
そして2006年に、水牛のチーズ専門の造り手、カゼイフィーチョ・クアットロ・ポルトーニとしてスタート。
2007年の時点で900頭の水牛を飼育。
現在は25種類以上の製品を製造しているそうです。


現在、ヨーロッパの水牛の約85%がイタリアで飼育されています。
でも、北イタリアにいるのはその1割弱。
しかも常に南イタリアからプレッシャーを受けていている環境。
そんな状況を知って食べれば、ベルガモの水牛のブルーチーズも、単なる変わり種チーズ以上の味になるのでは。



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関連誌;『ア・ターヴォラ』2007年11月号
ブルー・ディ・ブーファラを含む“ベルガモのチーズ”の記事は「総合解説」'07&'08年11月号に載っています。

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2 件のコメント:

くるり さんのコメント...

この話、あまりにも深すぎてコメントできない。しかし南の大地主制ということが例えば建築物の歴史にも関わってくるので。農業史(というか政治)というのは見逃せないポイントなんですよね。
全然関係ないのですが、最近知人に南のワインの産地と行き方について尋ねられたので、色々説明しているうちに、結果「日程もロスするし、かなり困難だからやめた方がいい」と言ってしまいました。「じゃあ、あなたはそこまでしてどうして行くのか?」と聞かれて、「うーん、好きだから」としか答えようがなかった(笑)

prezzemolo さんのコメント...

くるりさん
やっぱり食材って、背景や歴史抜きには語れない、というか、調べれば調べるほど複雑で面白くて、個人的についつい深みにはまっちゃいます。
最初は、水牛のブルーチーズか、珍しいなあ、ぐらいだったのですが、その背景は、小説にでもなりそうなほど波乱万丈でした。ここに書いたのはほんの一部です。

南のワイン産地ですか。
少しぐらいの苦労はいとわないぐらいの情熱と目的意識がないとたどり着けないですよねえ。
世界遺産のカステル・デル・モンテに行くだけでも大変だったんだからなあ。
あの時は私も絶対行く!と燃えてましたっけ(笑)

バッカラはノルウェーとイタリアを結ぶ干物貿易の主役で、この航路は1450年作成の世界地図にも記載されるほど重要でした。

(CIR12月号)によると、ヴィチェンツァでは、この料理はCが1つなんだそうです。普通はバッカラはbaccalàでも、ヴィツェンツァでは、Cがひとつのバカラ。んなばかな、と思ったけど、地元のこの料理の専門家たちは、C一つで呼んでました。会の名前の刺繍もC一つ。リチェッタはP.11...