2011年6月30日木曜日

イタリア料理のマトウダイ

マトウダイの話、その2です。

マトウダイは地中海全域で獲れる魚。
イタリアでは、デリケートな味の上質の白身魚として好まれています。
でも、その外見に対する評価は、美しいものをこよなく愛する国民性からか、かなり辛口。
『ヴィエ・デル・グスト』でも、「グロテスク」、「笑える」、「体の1/3は巨大な頭」、「口角が下がった口は間抜けに見える」と容赦なし。
背びれの派手な棘が鶏のとさかのようにも見えるので、ペッシェ・ガッロpesce gallo(ガッロは雄鶏)と呼ぶ地方もあります。


↓これはむしろ怖い。






イタリアのマトウダイ料理は、基本的にはシタビラメやカレイと同じ調理の仕方。
ムニエルはイタリアでも一般的ですが、これはやはりフランスが元祖。
それでは、イタリア料理だとどういうものがあるのでしょうか。

まずは、スローフード出版の“リチェッテ・ディ・オステリーエ・ディ・イタリア”シリーズ、『ペッシェ』からいくつかどうぞ。


マトウダイのマルサラ煮 Filetti di pesce gallo al Marsala
(トラーパニ/シチリア)
材料:2人分
マトウダイ・・1尾(約1㎏)
小麦粉
マトウダイの粗で取ったフメット・・2カップ
マルサラ・セッコ・・リキュールグラスで1杯
EVオリーブオイル、塩
・魚を切り身にし、厚みを開く(切り離さない)。
・洗って水けをふき取り、薄く小麦粉をつけて油で両面を焼く。
・マルサラとフメットをかけて塩をし、弱火で水分が半分になるまで煮る。




マトウダイのカルリーナ風 San Pietro alla Carlina
(オリジナルはハリーズバーの創始者ジュゼッペ・チプリアーニの娘、カルラ・チプリアーニが考案した料理/ヴェネチア)
こんな料理
材料:4人分
マトウダイ・・1尾(約2㎏)
ソース用トマト・・4個
塩漬けケッパー・・60g
小麦粉
バター・・120g

・魚を切り身にして骨を取る。
・薄く小麦粉をつけ、バター50gで3~4分焼いて塩をする。
・ケッパーをは塩抜きして刻んでおく。
・トマトは皮をむいて刻む。
・オーブン皿に薄くバターを塗り、焼いた切り身を並べる。ケッパーとトマト、小片にした残りのバターを散らし、240度のオーブンで4~5分焼く。




マトウダイとじゃがいもの煮込み San Pietro in umido con patate
(テーラモ/アブルッツォ)
材料:4人分
マトウダイ・・1尾(1.2㎏)
じゃがいも・・600g
ミニトマト・・10個
にんにく・・1かけ
プレッツェーモロ
EVオリーブオイル、塩
・魚は頭をつけたまま掃除する。
・鍋に油を引いて魚を入れる。その上に薄すぎない輪切りにしたじゃがいもをのせる。
・塩をしてプレッツェーモロのみじん切りを散らし、油を回しかける。
・魚がかぶる程度に水を加え、蓋をして強火で20分煮る。時々鍋をゆすって焦げ付かないようにする。
※プーリアではマトウダイとじゃがいもに白ワインをかけてオーブンで焼く。
材料にはトマトとにんにくがありますが、リチェッタには出てきません。
忘れたのかも。




最後はwebから。

マトウダイの卵のスパゲッティ Spaghetti con uova di Pesce San Pietro(シチリア)
webページはこちら
材料:4人分
スパゲッティ・・350g
マトウダイの卵・・100g
プレッツェーモロのみじん切り・・小さじ1
にんにく・・1かけ
赤唐辛子・・1本
EVオリーブオイル、塩
・パスタをアルデンテにゆでる。
・にんにくのみじん切りと赤唐辛子を油で軽くソッフリットにする。
・ソッフリットに小さく切った魚卵、プレッツェーモロのみじん切り、塩少々を加えて数分炒め、ゆで上がったパスタを加えて強火でなじませる。必要ならゆで汁を加える。
※小エビと殻を取ったアサリを加えてもよい。




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関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』2009年1月号
“マトウダイ”の記事は、「総合解説」'08&'09年1月号に載っています。

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2011年6月27日月曜日

マトウダイと聖ペトロ

今日は魚の話。
『ヴィエ・デル・グスト』の解説です。

今日取り上げる魚はマトウダイ

Zeus faber  - John Dory
学名はZeus faber



↓イタリア語では、ペッシェ・サン・ピエトロPesce San Pietroと言います。






サン・ピエトロとは、バチカンのサン・ピエトロ大聖堂の名前の由来にもなっている聖人、聖ペトロのこと。



Basilica di San Pietro
サン・ピエトロ大聖堂


Basilica di San Pietro
たいていの日本人は気にもとめませんが、大聖堂の前には鍵を持つ聖ペトロの大きな像があって、キリスト教徒の皆さんの人気の記念写真スポットとなっています。


サン・ピエトロ大聖堂は、聖ペトロの墓の上に建てられたと言われています。
なにしろ聖ペトロは、イエスの12使徒の筆頭で、天国の鍵をイエスから受け取ったとされ、初代のローマ教皇とみなされている大物。
この聖人にまつわる伝説はたくさんあります。

例えば、意味は知らないけれど聞いたことがある言葉、「クオ・ヴァディス」。
これは聖ペトロが、迫害から逃れてローマを離れようとした時、ローマに向かって歩くイエスを見て言った「どこへ行くのですか」という言葉のラテン語。

また、最後の晩餐でイエスがペトロに言う予言、(イエスの弟子かと問われた時)「鶏が鳴く前に、あなたは三度私を知らないと言うだろ」という話を知っていれば、『聖☆おにいさん』で、警察からのイエスの身元確認の電話に、本当にイエスが困っているのか、それともオレオレ詐欺か疑ったペトロが、「知らないって3回言ってニワトリが鳴いたら本物じゃね?」というセリフで噴き出せます。
(『聖☆おにいさん』を知っている人なら分かってもらえるはず!)

そんな聖ペトロの言い伝えの1つに、マトウダイが登場する話があるんですねえ。

ある町で、キリストと弟子の一行が、役人に税を払えと言われます。
そこでキリストはペトロに、海に行って魚を釣ってくるように言います。
その口の中に硬貨が一枚あるから、それを納めるように、と予言するのです。
ペトロが言われたとおりに魚を釣って見ると、本当に口の中から銀貨が!

その魚には、その時ペトロがつまんだ指の跡が、黒い円形になって両面に1つずつ残ったのだそうです。
きっと片手でつまめるほど小さなマトウダイだったんですね。


マトウダイの話、次回に続きます。



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関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』2009年1月号
“マトウダイ”の記事は、「総合解説」'08&'09年1月号に載っています。

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2011年6月23日木曜日

ゴルゴンゾーラとノヴァーラ

ゴルゴンゾーラの話、その3。

ゴルゴンゾーラの名前の由来にもなっている町ゴルゴンゾーラは、ミラノ近郊にあるロンバルディアの町。
現在ここではゴルゴンゾーラは造られていません。
ゴルゴンゾーラ造りがもっとも盛んなのは、ピエモンテのノヴァーラです。
ロンバルディアに隣接するノヴァーラ県には、約40ある造り手のうち13軒が集中しています。
管理組合もここにあります。
造り手のリストはこちら


ちなみに、ノヴァーラでゴルゴンゾーラと共に有名なのが米。
ノヴァーラや隣のヴェルチェッリは、イタリアを代表する米の産地です。
だから、ゴルゴンゾーラのリゾットは、ノヴァーラの自慢料理でもあるわけですね。
ノヴァーラには、“ワイン、米、ゴルゴンゾーラの信者会”もあります。


↓ノヴァーラの特産品と料理
1:00頃にちらっと写るのが名物リゾットのパニッシャ。






ゴルゴンゾーラの大手の造り手はたいてい、ドルチェとピッカンテの他に、マスカルポーネ入りやくるみ入りのゴルゴンゾーラも造っています。

↓ゴルゴンゾーラ&マスカルポーネ






ゴルゴンゾーラとマスカルポーネの組み合わせは定番の一つ。
鉄板の組み合わせは、くるみと洋梨とゴルゴンゾーラ。
セロリとゴルゴンゾーラも一般的ですよね。
管理組合では、野菜なら、セロリ、ミニトマト、パプリカ、ラディッシュ、カボチャ、フルーツなら、いちご、洋梨、キウイー、いちじく、りんごを相性の良い組み合わせとして挙げています。


Cena, pera , noci e gorgonzola
ゴルゴンゾーラ、洋梨、くるみの夕食



プリーモピアットでも、リゾット、パスタ、ニョッキ、ポレンタとオールマイティー。

ピエモンテ州、イタリア米協会、ピエモンテぶどう栽培者協会公認の本、『Riso』より、ゴルゴンゾーラのリゾットのリチェッタをどうぞ。


ゴルゴンゾーラのリゾット Risotto con il Gorgonzola
材料:6人分
米(ヴィアローネ・ナーノ)・・360g
ゴルゴンゾーラ・ドルチェ・・300g
玉ねぎ・・小1個
バター・・40g
白ワイン・・100ml
沸騰した鶏のブロード・・1.5リットル
生クリーム・・大さじ3
・玉ねぎをみじん切りにしてバターで炒める。
・玉ねぎに色がついたら米を入れて数分炒める。
・ワインをかけてアルコール分を飛ばし、熱いブロードを少しずつかけながらリゾットに煮る。
・煮上がる直前に小さく切ったゴルゴンゾーラを加えてよく混ぜ、塩味を調える。
・仕上げに生クリームを加えてマンテカーレする。



次は、ゴルゴンゾーラのメーカーのwebページより。

お手軽なゴルゴンゾーラとハムのトースト。
原文はこちら


ゴルゴンゾーラとハムのトースト Toast farcito al prosciutto
材料:4人分
耳を取ったサンドイッチ用食パン
ゴルゴンゾーラ・・80g
スライスハム・・60g
新ズッキーニ・・小1本
新にんじん・・1本
バター・・80g
・パンを10cm角に切る。
・ズッキーニとにんじんを縦に薄くスライスする。
・パンにゴルゴンゾーラを塗り、ハムと野菜をはさんでサンドイッチにする。
・ぬらしたラフィアかタコ糸で縛り、バターで両面を揚げ焼きにする。






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関連誌;『サーレ・エ・ぺぺ』2008年1月号
“チーズ風味”の記事のリチェッタは、「総合解説」'08&'09年1月号に載っています。

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2011年6月20日月曜日

ゴルゴンゾーラの造り方

ゴルゴンゾーラの話、その2です。

今回は製造方法について。
ゴルゴンゾーラは、消費者の嗜好に合わせて、昔に比べてよりマイルドで青カビの量も少なくなっているそうです。

DOPの作り手は、大企業から家族経営まで合わせて約40。
現在は総生産量の31%が外国向け(20世紀前半は60%以上)。

ゴルゴンゾーラの製法は、
まず、殺菌した牛乳を30度に熱し、Penicillum roquefortiと言う青カビの胞子、スターター(乳酸菌)、子牛のレンネットを加えます。
約30分して固まったらカッティング。
カ―ド(凝乳)を布で包んでホエイを切り、さらに筒型の穴あき枠に入れて、裏返しながら24時間ホエイを出します。
これを湿度96%、20~22度で4~5時間置き、塩や塩水をまぶします。
そして熟成。
約1週間過ぎた頃からチーズに穴をあけて、カビが均一に発育するようにします。
熟成は最低2ヶ月で、長く熟成させると辛口で水気の少ない強い味のゴルゴンゾーラになります。
辛口のゴルゴンゾーラ・ピッカンテは、熟成期間が長く、温度やカビの種類、塩の量もドルチェとは違います。
ピッカンテの一般的な熟成期間は90~110日。

辛口でカビの量が多いゴルゴンゾーラは、“フェルメンタツィオーネ・ナトゥラーレ fermentazione naturale”とか、“デル・ノンノ del nonno”、“アンティーコ antico”と呼ばれます。
ナトゥラーレタイプは、カードを布に包んで一晩置いておき、その間に天然のカビをつけたもの。
初期のゴルゴンゾーラは、言い伝えにもあるように、一晩置いたカードに翌朝搾った牛乳のカードを加えて作っていました。
この製法は、“ドゥエ・パステ due paste”と呼ばれますが、現在では姿を消しているそうです。


↓ゴルゴンゾーラが出来るまで






ゴルゴンゾーラの話、次回に続きます。


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関連誌;『サーレ・エ・ぺぺ』2008年1月号
“チーズ風味”の記事のリチェッタは、「総合解説」'08&'09年1月号に載っています。

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2011年6月16日木曜日

ゴルゴンゾーラの言い伝え

今日はチーズの話。
『サーレ・エ・ペペ』の記事、「チーズ風味/定番DOPチーズを使った料理」の解説です。

ちょうどリクエストもいただいたので、まずはゴルゴンゾーラから。


Gorgonzola


ゴルゴンゾーラgorgonzolaは、パルミジャーノ・レッジャーノと並んでイタリアが世界に誇るDOPチーズ。
殺菌した牛の全乳のパスタ・クルーダのブルーチーズです。

パスタ・クルーダpasta crudaとは、カード(凝乳)をカッティング後に加熱しないタイプ。
モッツァレッラもこのタイプ。
ちなみに、加熱するタイプはパスタ・コッタpasta cotta。
このタイプの代表的なものはパルミジャーノ・レッジャーノ。
コッタより低温で加熱するタイプはパスタ・セミコッタpasta semicotta。
こちらはフォンティーナやアジアーゴなど。
つまり加熱の温度が高いものほど硬質チーズになる訳です。
イタリアではチーズの分類をする時に、パスタ・コッタやパスタ・クルーダという言葉をよく使います。


ブルーチーズはイタリア語では、フォルマッジョ・エルボリナートformaggio erborinatoと言います。
“エルボリナート”とは、ロンバルディアの方言でプレッツェーモロという意味の“エルボリンerborin”が語源。
青かびの筋が入っている様子が、プレッツェーモロが詰まっているように見えたところからこう呼ばれるようになったようです。

“青かびチーズ”の語源がロンバルディアの方言であることからも分かる通り、ブルーチーズはイタリアでは北部の伝統に属するチーズです。
ゴルゴンゾーラも、ロンバルディアとピエモンテで作られています。
管理組合の所在地は、ピエモンテのノヴァーラ。
ゴルゴンゾーラがメジャーになったのは20世紀に入ってからですが、それは、イタリア中に広まったというより、外国で人気が出たのがきっかけでした。
特に、イギリスではマイルドタイプ、フランスとドイツでは味の強いタイプが好まれました。


DOPになったのは1996年。
でも、10世紀には既に知られていたという歴史の古いチーズです。
10世紀と言えば、日本では平安時代。
ゴルゴンゾーラがどこでどうやって生まれたのか、誰も知らないのも無理からぬこと。

ゴルゴンゾーラDOPの管理組合(webページはこちら)でも、諸説ある誕生伝説のうち、879年にゴルゴンゾーラ村で生まれた、とか、チーズ造りに適した天然の洞穴があるパストゥーロ村で生まれた、と言った説がある、と紹介しています。
どちらもロンバルディアの村。

言い伝えの中でも有名なのは・・・

農家の若者がデートに夢中になって加熱鍋にカードを入れたまま一晩中忘れてしまった。
翌日、それを出来たてのカードに加えてかき混ぜてみたら、完全に混ざらずに隙間が出来て、そこにカビが生えた。

または、
ゴルゴンゾーラ村の宿屋の主人が、カビの生えたストラッキーノを捨てるのがもったいなくて客に出したら大人気になった。

という話。

確かに、これらの話をうまくミックスすると、ゴルゴンゾーラが出来上がります。

管理組合によると、そもそも、よく分からないゴルゴンゾーラの歴史が最初に具体的に見えてきたのは、ストラッキーノ・ディ・ゴルゴンゾーラというチーズが知られるようになってから。
このチーズは、別名ストラッキーノ・ヴェルデとも呼ばれていました。
ストラッキーノとは、夏の放牧地から下りてきた牛の秋のミルクから作るチーズで、その中でも、ゴルゴンゾーラと呼ばれるチーズは、緑色のストラッキーノ、つまり青かびチーズだった、ということを証明している訳です。
中世のゴルゴンゾーラ村は、山の放牧地から下りた牛が帰り道に必ず通る場所でした。
ゴルゴンゾーラ村以外でも広く作られていたチーズにゴルゴンゾーラという名前がついたのは、そのあたりの理由からではないかとも言われています。

ゴルゴンゾーラの話、次回に続きます。



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関連誌;『サーレ・エ・ぺぺ』2008年1月号
“チーズ風味”の記事のリチェッタは、「総合解説」'08&'09年1月号に載っています。

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2011年6月13日月曜日

スモークサーモンのイタリアン

スモークサーモンの話、今日はリチェッタ。

スモークサーモンはイタリアの伝統食材ではないので、地方料理でスモークサーモンを使ったものは、まずないです。
でも、地方料理ではなく、いわゆる「イタリア料理」のくくりに入るものなら、色々ありますよね。
たとえばパスタにスモークサーモンが入っていれば、イタリア料理と言えるわけだし。


Lasagne al salmone con crema di ricotta e rucola
スモークサーモン、リコッタクリーム、ルーコラのラザーニャ



1521 Chie's Gourmet Pasta
スモークサーモンとウイスキーのパスタ



スモークサーモンのパスタの大部分は、どうやらアメリカあたりから広まった模様。

そこで、クレアパッソで取り扱っているイタリアの書籍の中から、比較的イタリア的と思えるものをいくつかピックアップしてみました。


■まずは自家製スモークサーモン。

リチェッテ・ディ・オステリーエ・ディ・イタリア”シリーズ(Slow Food Editore)の『ペッシェ』から、ウーディネのオステリーア・アル・マリナイオのリチェッタです。
店のプレイスページはこちら

スモークサーモン Salmone affumicato
材料:8人分
サーモン・・2kg
ローリエ・・2枝
セージ・・1枝
ジュニパー
バター、EVオリーブオイル
グラニュー糖、塩
・サーモンは骨を完全に取り除き、通常の2倍量の塩をして砂糖を散らす。
・12時間マリネする。この間、出た汁を時々集めてサーモンにかける。
・燻製庫でスモークする。
・家庭でスモークする時は、チップと好みの香料(ジュニパー、セージ、ローリエなど)をフライパンに入れて焦がす。
・オーブンの焼き網にサーモンをのせ、火をつけていないオーブンの上段に入れる。下段には熱いフライパンを入れる。
・グリルとフライパンの間は出来るだけあけてサーモンに火が入らないようにしながら40分スモークする。
・オーブンから出して薄い紙(花紙)で包み、最低2日休ませる。
・薄くスライスし、バターカーラーで削ったバターかEVオリーブオイルを添えてサーブする。



■次は前菜。

“サポーリ・イタリアーニ”シリーズ(KeyBook)の『アンティパスティ』から。

いちじくとスモークサーモンのクロスティーノ Crostino di fioroni e salmone affumicato
材料:4人分
スライスしたバゲット・・8枚
いちじく(早生タイプ)・・3個
スモークサーモン・・80g
グリーンレモン・・1個
シブレット(チャイブ)、白こしょう
・いちじくは厚い輪切りにして軽くこしょうを散らす。
・バゲットを高温でトーストし、いちじくを1枚のせる。
・その上に細く切ったスモークサーモンをのせてこしょうを散らし、シブレットとグリーンレモンのいちょう切りで飾る。



■最後はパスタ。

グランデ・エンチクロペディア・イッルストラータ・デッラ・ガストロノミア』(Mondadori)から。

スモークサーモンのタリオリーニ Tagliolini al salmone
材料:4人分
スモークサーモン・・40g
生クリーム・・250ml
ウオッカ(ロシア産かポーランドやフィンランド産)・・大さじ2
タリオリーニ
バター・・大さじ2
・スモークサーモンはスライスして細く切り、バターで2分炒める。
・生クリームを加えて5分煮る。
・ウオッカをかけ、火をやや強めてアルコール分を飛ばす。
・タリオリーニをゆでてしっかり水気を切り、スモークサーモンのフライパンに入れてマンテカーレする。



ちなみに、『ガンベロ・ロッソ』でも有名シェフのスモークサーモンのパスタを2品紹介しています。
どちらもかなり独創的。
凡人には思いつけないその発想は、さすがです。



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関連誌;『ガンベロ・ロッソ』2009年1月号
“スモークサーモン”の記事の解説は、「総合解説」'08&'09年1月号に載っています。
 
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2011年6月9日木曜日

ペックのスモークサーモン

スモークサーモンの話、その3です。

今日はイタリアのスモークサーモン料理の話。

まずは前回少し紹介したペック。
日本でもおなじみの、イタリアを代表するデリカテッセンですよね。


↓ペックの総菜コーナー





ペックでは、天然のアトランティックサーモンのスモークを販売しています。
webページ(こちら)によると、300gで70ユーロ、約8,200円。

市場のわずか5%という貴重な天然アトランティックサーモン。
そんな高級品を食べる時は、デリケートな味と香りを邪魔しないシンプルな方法が一番。
ペックでは、スライスして、バターか軽くホイップした生クリームと、フェンネルシード入り黒パン(ライ麦パン)を添える食べ方を勧めています。

こんなイメージですかね。


スモークサーモンを使った一品として紹介しているのは、ラズベリー風味のスモークサーモンとミスティカンツァ(ベビーリーフ)のサラダ。
リチェッタのwebページはこちら

まず、オリーブオイル80g、赤いラズベリービネガー20g、塩、こしょうをホイップしてラズベリーのアスプレットaspretto di lamponiを作ります。
・生クリーム100gとレモン汁20gをホイップしてサワークリームにし、刻んだシブレット(チャイブ)を加えます。
・ミスティカンツァをアスプレットで和えます。
・皿にスモークサーモンを盛り付け、その上にミスティカンツァを盛ります。
・生のラズベリーで飾り、クネル形にしたサワークリームと熱いブリニを添えます。
分量は4人分。


ブリニの作り方は、
・小麦粉200g、そば粉200g、ドライイースト小さじ4、砂糖50g、塩小さじ1/2をボールに入れて混ぜます。
・牛乳600mlと無塩バター115gを熱し、粉の材料の中央に入れます。
・卵4個も加えてこね、最低45分発酵。
・直径10~15cmのフライパンを熱してバターを溶かし、生地を少量ずつ入れて両面を焼きます。
・焼き上がったら布巾をかぶせて保温。


おまけの動画。

↓ペックのワインセラーとオーナー





↓ペックのイタリアン・バー(ワインバー)





↓肉類の売り場




↓チーズ、パスタ、ドルチェ






スモークサーモンの話をするはずが、気が付いたらペックの話になっていました。
スモークサーモン料理の話、次回に続きます。


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関連誌;『ガンベロ・ロッソ』2009年1月号
“スモークサーモン”の記事の解説は、「総合解説」'08&'09年1月号に載っています。
 
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2011年6月6日月曜日

スモークサーモンの定番

スモークサーモンの話、その2です。

スモークサーモンの食べ方のもっともクラシックなものと言えば、ブリニとサワークリーム添え。
これはロシアがルーツ。
ロシアやポーランドなど東ヨーロッパのユダヤ人によって、スモークサーモンは西ヨーロッパに伝わったのだそうです。
アメリカには、スモークサーモンとクリームチーズのベーグルという定番の組み合わせがありますが、そう言えばベーグルもユダヤ料理でしたね。


selected blini
ロンドンのポーランド料理店のスモークサーモン、ブリニ、サワークリーム、ニシン、ビーツ、マッシュルームの盛り合わせ。



Bagel with lox
ニューヨークのスモークサーモン、クリームチーズ、トマトのオニオンベーグル。
ベーグルにはさむスモークサーモンのことは“ロックス”と呼びます。



brunch hollandais
アムステルダムのレストランのブランチ。



paris_0010-saumon-fume
パリのカフェ。



どこの国でも、スモークサーモンを食べる時は素朴なパンとサワークリームやクリームチーズが欠かせないようですね。

ちなみに『ガンベロ・ロッソ』では、イタリア風の食べ方として、マスカルポーネと組み合わせるベックの一品を紹介しています。


ヨーロッパでスモークサーモンの消費量がもっとも多いのはフランス。
国産のスモークサーモンも色々あります。
中でもラベル・ルージュの製品は、厳格な規定で作られた製品としてヨーロッパでは高く評価されています。
そこでおまけの動画。
フランスの簡単なスモークサーモン料理をどうぞ。


↓スモークサーモンのオムレツ





↓スモークサーモンのタルトレット





↓スモークサーモンのルラード






次回はイタリアのスモークサーモン料理を探してみます。


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関連誌;『ガンベロ・ロッソ』2009年1月号
“スモークサーモン”の記事の解説は、「総合解説」'08&'09年1月号に載っています。
 
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2011年6月3日金曜日

スモークサーモン

サーモンの話、その3。
今日はスモークサーモンの話です。

ヨーロッパのアトランティック・サーモンの産地(養殖場)は北ヨーロッパに集中していますが、スモークサーモンへの加工は、他の国でも行われています。
フランス、オランダ、ドイツ、スペインなどもスモークサーモンの生産国。

イタリアで、スモークサーモンの中でも特に評価が高いのは、“スコティッシュ・スモークド・サーモン”。
これは、スコットランド産のスコティッシュサーモンをスコットランドで加工した製品のこと。
もしスコティッシュサーモンをイタリアでスモークすれば、それは“スモークド・スコティッシュ・サーモン”(スコットランド産サーモンのスモーク)という商品名となります。
イギリスの法律で、こう定められているのだそうです。
スコティッシュサーモンを買う時は要チェックです。

イギリスの料理はイマイチ、なんて声も聞きますが、スコティッシュサーモンは、文句なくイギリスが世界に誇るグルメの食材。


↓スコティッシュサーモンの養殖場






それでは、スモークサーモンはどうやって作られているのでしょうか。
基本は、まず切り身にし、塩漬けして余分な水分を取り除き、乾燥させ、そしてスモーク。


↓カナダ(ケベック)のメーカーの天然ベニザケのスモークサーモン。





この動画の製品は、かなり手間をかけて作っていますよねえ。
値段もそれなりなのではないでしょうか。

まず、サケは船で冷凍し、工場で解凍して切り身に。
中骨の身はミンチにしてサーモンパイにします。
塩とスパイスをミックスしてサケにまぶし、マリネ。
塩を洗い落とし、次にメープルシロップを塗ってサケに残っている塩気を中和します。
そしてスモーク。
チップはカエデ、サクラ、リンゴの木の順番で3種類使っています。
スモークは低温で行う“コールドスモーク”。
この工場では10度で最低24時間と、かなり低い温度で長時間かけて行っています。

メープルシロップというのは、カナダならではですね。
一般には、塩に砂糖とスパイスを加えて塩漬けしてからスモーク。


この動画のスモークサーモンは高級品ですが、世の中にはもっとお手軽な値段のスモークサーモンもあるわけで、スーパーに並んでいるのはそういうタイプが主ですよね。
そしてお手頃なスモークサーモンは、違う作り方をしています。

スモークサーモンのコストを下げる最大のポイントは、時間の短縮。
たとえば塩漬けは、塩水を針で注入します。
インジェクションという方法です。
インジェクションとは、注射とか注入という意味。
スーパーの塩鮭もこの製法。

インジェクションは、鮭だけでなく、値段の安いハムやベコーンなどにも行われています。
インジェクションによって塩を注入したスモークサーモンは、乾燥塩をまぶしたものと比べて約9%重さが増えます。

さらに、スモークサーモンの場合はスモークにもインジェクションを用いています。
木を燃やして出た蒸気を凝縮した“液体の煙”、リキッドスモークを塗ったり、注入している訳です。

この方法、普通の塩漬けと比べると、味と安全性に劣ります。
値段か、それとも味と安全か。
高級品と激安品、両方の値段があるものほど、消費者はシビアな選択を迫られているんですね。


イタリアの消費者向けの情報サイトのこちらのページでは、スモークサーモンの選び方について、こう説明しています。

まず、色は品質の良し悪しにはあまり関係ありません。
養殖の場合、色素入りの餌によって色を作り出しているわけですから。

もっと重要なのは、大きさです。
大きさがそろっている製品は、サケのもっとも上等の部位から取った、という証明です。
一方、他と比べて小さいものは尾の近くということです。
同じ理由から、大きすぎるのもよくありません。


次はスモークサーモンの料理の話です。



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関連誌;『ガンベロ・ロッソ』2009年1月号
“スモークサーモン”の記事の解説は、「総合解説」'08&'09年1月号に載っています。

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マリア・ルイジアの小さな街、パルマのバターとグラナの娘、アノリーニ。本物は牛と去勢鶏のブロードでゆでます。

昨日の最後にサラっと登場したアノリーニですが、このパスタ、(CIR12月号P.5)にもリチェッタが載っていました。クルルジョネスの次の料理です。花の形の可愛い詰め物入りパスタ、なんていうのがこのパスタの印象ですが、イタリア人は、こんな風に思ってるんですね。 「マリア・ルイジアの小...