2015年12月21日月曜日

マレンマとアックアコッタ

今日のお題は“マレンマ風アックアコッタ”です。

この料理は、個性的なスープが多いトスカーナ料理の、代表的なスープ料理の一つ。
トスカーナ各地で作られている農民料理ですが、正確なルーツは不明で、地方ごとに違ったアックアコッタがあります。
ちなみに、トスカーナ料理のお勧め本、『イル・グランデ・リーブロ・デッラ・ヴェーラ・クチーナ・トスカーナ』には、4種類のアックアコッタが載っています。
アックアコッタの中でももっともよく知られたマレンマ風は、珍しく、そのルーツがはっきりしている料理です。

今月の「総合解説」でも取り上げた『ア・ターヴォラ』の記事の中で、一番印象的だった一文は、

「マレンマのアックアコッタのことをマレンマについて知らない人に話すのは難しい」

というもの。

トスカーナ料理にかかわる人なら、マレンマ地方というのはかなりお馴染みのはずですよね。
トスカーナのティレニア海側の、州の1/4を占める広大な地方です。
質素な地の食材を駆使して、濃い味の料理を作るという、イタリア人が尊敬してやまない料理哲学で料理を作り出してきた地方で、最近では美味しいワインの産地としても有名になりました。
昔は湿地帯でマラリアの発生源で、生きるのも大変な地方だったというのが、一般的なイメージ。

かつては、ダンテの『煉獄』にも、マレンマが悲劇の舞台として登場するほどで、昔から、苦しみや悲しみがつきものの土地でした。
でも、トスカーナ民謡、“マレンマ・アマーラ”に歌われるマレンマは、意外なことに、そこに住む住民にとっては、みんなが嫌うマレンマでも愛してやまず、ここに戻れなくなるのが怖い、という、故郷への愛情に満ちたもの。
さらに、マレンマ風アックアコッタとは、トスカーナ版カウボーイで、マレンマ種の馬を飼育する牧童、ブッテリと呼ばれる人々の料理だったことが知られています。

マレンマ・アマーラ
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ヨーロッパ最後のカウボーイ、ブッテリ。
 ↓



19世紀前半に干拓が始まり、現在では一部は国立公園となり、豊かな自然に満ちたアグリトゥーリズモのメッカとして人気の地となりました。






干拓と共に、マレンマ牛を飼育する牧童たちの仕事はなくなり、今は観光客相手のアトラクションなどをしています。
でも、マレンマ風アックアコッタは、彼らが作り出したものなので、そのリチェッタの中にはブッテーリの伝統が残っています。
マレンマのことを知らないと理解できない料理でも、少しでも知るととても面白い料理です。

アマレンマ風アックアコッタの話、次回へ続く・・・。


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“マレンマ風アックアコッタ”の記事とリチェッタの日本語訳は「総合解説」13/14年3月号に載っています。
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2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

マレンマ地方、フォロニカから南へ行く海岸は松林がきれいな所。たまたま入ったレストランで私が日本人だとわかるとシェフが突然、広尾のブッテロを知っているかと尋ねてきました知っていると答えるとシェフは友人だから行ったらよろしく伝えてくれと。広尾の「ブッテロ」マレンマのカウボーイ」から来る名前だったのです。
italiamama

prezzemolo さんのコメント...

そうなんですか。
思入れが伝わってくるいい名前ですね。

よもぎはドイツ語ではベアムート。かっこよくてお餅につける名前じゃないよね。トリノでパティシエが白ワインとよもぎから作りだしたのがベルモット。

今日のお題は、メイド・イン・イタリーの食材です。(CIR2022年1月号P.37の記事) その食材は、ベルモット。ピエモンテ州トリノで誕生したフレーバード・ワインです。 白ワインにスパイスとハーブを加えて香りをつけたもの。 ところで、ベルモットはドイツ語の“ヨモギWermut”が...