2016年1月7日木曜日

リゾットと米


『サーレ・エ・ペペ』誌の“リゾット・アッラ・チェルトジーナ”の記事では、この料理をこんな風に説明しています。

この料理は
「昇華されたリゾットの技が必要で時間もかかるため、作るのをためらうシェフも多い」

なんだかずいぶん大げさな。
そもそも、リゾット作りに特別な技が必要?
この疑問の答えになりそうなことが、同じ「総合解説」の“リゾット”の記事にありました。
これも『サーレ・エ・ペペ』の記事ですが、それによると、

「リゾットの基本的な調理は、まず米を炒める。
玉ねぎのみじん切りとバターのソッフリットで米を炒めるというのは、無名の天才料理人の発明だ」

とあります。
なんだか、リゾットに対する姿勢が、根本的に違うような。
伝統料理のバックグラウンドを知らない外国人は、とかく表面的にとらえがち。
イタリア料理において、リゾットは、パスタ、ピッツァと同等の柱なんですよね。
煮物の鍋に残った汁に冷ご飯を入れてリゾットと呼ぶ発想は、そこにありません。

まず米を油で炒めて表面に膜を作ることによって、米は煮崩れしなくなります。
だから、沸騰したブロードを少しずつかけながらじっくり煮て、柔らかくしながら歯ごたえを保つというリゾット独特の米の硬さを作り出すことが可能になるわけです。

「最初に炒めないとお湯でゆでた米と同じ状態に煮上がる」

確かに、ごもっともです。
深く考えたことなかったですが、リゾットの調理方法は、火が通っているのに一粒一粒存在感のある歯ごたえを残すもの。
もちろん、この調理方法を活かすために、イタリアの米の生産者は、大粒で煮崩れしにくいというリゾット用の米をわざわざ作りだしたのです。
日本の米では、リゾットの米のアルデンテは、簡単には生み出せないわけです。

リゾットの主役は、まぎれもなくお米ですね。
そして具は、当然ながら、手に入りやすい畑の野菜。さらに川の多い水田地方の川魚など。
その後は、パスタやピッツァとよく似た歴史をたどります。
海沿いの地方で、魚や甲殻類を使ったアッラ・マリナーラやアッラ・ペスカトーラとスプマンテというのが流行し、イカ墨の黒、トマトの赤、香草の緑、フルーツの香りなどが加わって、何でもありになったのです。
そしてそっくり同じ現象が、世界中に広まりました。
この時点で無国籍料理化していますね。

さらに記事では、大学でリゾットを研究している学者の、コんな説も紹介しています。

「リゾットはイタリア料理の発明の一つで、イタリアの食文化、習慣、農業、経済と結びついている。
アラブ、オリエント、スペインの影響を受け、サヴォイア家の料理人を通してフランスの宮廷にも広まった」

いやー、壮大ですねー。
リゾットを語るときは、このくらいの敬意を持ってのぞまないと。

さて、リゾット・アッラ・チェルトジーナですが、リゾットの壮大なバックグラウンドを知って、少しはこの料理のすごさが分かるかも、という訳で、次回に続きます。

寿司に適したヨーロッパ産の米を作る努力も始まっています。





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“リゾット・アッラ・チェルトジーナ”と“リゾット”の記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年3月号に載っています。
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