2016年3月14日月曜日

ローマ人に人気だったアスコリのオリーブ

「総合解説」、5月号発売しました。
5月号の特集記事は、『サーレ・エ・ペペ』の記事、サルデーニャのパンです。
パーネ・カラザウを初めとする個性的なパンの作り方が、豊富な写真付きで詳細に説明されています。
参考になる貴重な写真が一杯の記事なので、サルデーニャのパンに興味がある方は、『サーレ・エ・ペペ』5月号をぜひ見ていただきたいです。
少しですが在庫もあります。
詳細は後日、改めて。

今日は今月の「総合解説」で一番最初に取り上げている地方料理の話です。
マルケ料理です。

地方料理を州ごとに写真付きでコンパクトにまとめた“ラ・グランデ・クチーナ・レジョナーレ・イタリアーナ”シリーズの『マルケ』では、この料理が表紙を飾っています。
マルケ料理を代表する料理、オリーヴェ・アッラ・アスコラーナです。

それにしても、この可愛い料理に、壮大な歴史があったなんて、思ってもいませんでした。
古代ローマ時代から、偉大な人々のお気に入りの料理だったんですねー。

イタリア料理の場合、大物の古代ローマ人にちょっとでも気に入られると、文書の形で後世にその話が伝わって、半永久的にエピソードが語り継がれるという、とてもラッキーな結果になります。

イタリア料理は、どちらかというと、宮廷や貴族の料理とは無縁の家庭料理がルーツのものが多いので、主婦の行動範囲と経済圏の狭い地域の中で広まりました。
だからイタリア料理は地方料理の集合体ということができます。

ところが、ここに古代ローマ人がからんでくると、とたんにこの理論は崩壊します。

なにしろ地中海全域を支配して、ヨーロッパ中に大きな影響を与えた帝国です。
その中心地、ローマとなると、地元の食文化どころか、征服した広大な地域の貴重な食材が流れ込んで、大都市のデパ地下みたいななんでもあり状態。
このアスコリ風オリーブも、地元の主婦が地元で採れたオリーブを美味しく食べる方法として考え出したのでしょうが、そもそもアスコリのオリーブは生産量が少なくて、地元以外にはあまり広まりませんでした。
でも、大粒で柔らかくて甘いアスコリのオリーブが、手に入れにくいこともあって貴重度がアップしたのか、古代ローマ人にいたく気に入られて、有名な詩人や政治家プリニウス、果ては皇帝ネロの名までファンリストに登場して、すっかり高級料理になってしまいました。

現存する最古のリチェッタが19世紀末のアスコリの貴族の館の料理人が書いたもので、当時は最も富裕な階級が特別な機会に作るような料理だったというのも、うなずけます。

古代ローマで人気があった料理は、地方(ラツィオ)料理というよりイタリア料理の元祖と言えるのではないかと私は考えていますが、どうでしょう。

記事によると、農家の主婦が作っていた最初のアスコリ風オリーブの詰め物は、野草だったそうですが、今は数種類の肉のミックスです。

今ではこの料理は、代わりになるオリーブが色々あるためか、マルケだけでなくイタリア中に広まりました。
現代の家庭ではこの料理をどんな風にアレンジしているのでしょう。


家庭料理の本、『マンマ・ミーア』には、“オリーヴェ・リピエーネ”という名前で、詰め物をして揚げたオリーブのリチェッタが載っています。
それによると、オリーブは手に入りにくいアスコラーネとは書かずに、甘くて柔らかいグリーンオリーブ、詰め物は牛肉と豚肉となっています。
レバーやトマトペーストは加えませんが、他はだいたい「総合解説」のリチェッタと同じ。
つまり、材料で多少手を抜いても、とても手間暇かけて作る料理です。
なので、作るときはたっぷり作って冷凍する、というアドバイスもあります。






最後のほうにオリーブの種の取り方の説明があります。
リンゴの皮をむくように、と言っています。
始めてそれを聞いて以来、オリーブの種を取るときはスパイラルに切るのが習慣になっていますが、かなり大粒でないと、きれいに切れないものですね。





包丁、野菜は切りにくそうだけど、肉はよく切れてますねー。
パン粉は細かくないと、別物になります。


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“アスコリ風オリーブ”の記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年5月号に載っています。
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バッカラはノルウェーとイタリアを結ぶ干物貿易の主役で、この航路は1450年作成の世界地図にも記載されるほど重要でした。

(CIR12月号)によると、ヴィチェンツァでは、この料理はCが1つなんだそうです。普通はバッカラはbaccalàでも、ヴィツェンツァでは、Cがひとつのバカラ。んなばかな、と思ったけど、地元のこの料理の専門家たちは、C一つで呼んでました。会の名前の刺繍もC一つ。リチェッタはP.11...