今日は今月の「総合解説」で取り上げた地方料理の中から、イタリア料理の定番中の定番、カルパッチョの話です。
この料理は、イタリアの伝統料理にしては珍しく、誕生の経緯がはっきりしています。
とても有名な話なので、今さらと思うかもしれませんが、『サーレ・エ・ペペ』の記事で、基本的なところを再確認。
まず、考案者はハリーズバーのオーナーのジュゼッペ・チプリアーニ氏(1900-1980)。
赤い生の牛肉に黄色いソースをかけたこの料理は、ルネサンス時代のヴェネチアの大画家、ヴィットリオ・カルパッチョの絵の特徴である艶のある赤と黄色のコントラストからインスピレーションを得て、ジュゼッペによってカルパッチョと名付けられた、というのは、今やイタリア料理界の伝説。
カルパッチョは、今や日本では生肉の赤よりマグロの赤の代名詞となりましたが、今回は黄色いソースの話。
これはまあマヨネーズです。
削ったパルミジャーノではなかったんですね。
彼の自伝『l'angolo dell'Harrys Bar』によると、正確にはマヨネーズを牛乳少々で軽くしてウスターソース数滴で調味したものです。
彼はこのソースを“salsa universale/サルサ・ウニヴェルサーレ”、つまり万能ソースと呼んでいました。
しかもこのソースを肉にかける方法は、“アッラ・カンディンスキー”、カンディンスキー風、というテクニック。
カンディンスキーと言えば、抽象絵画の元祖。
これは『K』という作品だそうです。
↓
そしてこれがハリーズ・バーのオリジナルに忠実にカンディンスキー風にソースをかけたカルパッチョ。
↓
ん?これはひょっとして?
そうこれは、お好み焼きに芸術的にかけられたマヨネーズそっくり。
あれはまさに、西洋料理の世界ではカンディンスキー風と呼ばれる技法だったのです。
恐るべし関西人。
カルパッチョも世界中に広まるにつれてオリジナルのリチェッタがどんとん姿を変えていっています。
ここらへんで、オリジナルを振り返ってみるのも面白いかも。
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“チプリアーニ風カルパッチョ”の記事とリチェッタの日本語訳は、「総合解説」13/14年6月号に載っています。
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2 件のコメント:
私も最初はこの様にマヨネーズでした、マヨネーズもいろいろ変身させると面白いかったでした、
今では肉のカルパッチョは禁止なんでが、保健所の方と相談して周りを焼ききればいいとのことでした、タタキですね。
vittorioさん
イタリアは生肉はよくても、内臓は火を通しても禁止だった時があったりで、国によって色々なんですね。
マヨネーズも基本、手作りですよね。
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