2016年9月29日木曜日

バリスタの巨匠の半生

どこかでスーパーマリオが話題になってましたが、今月の「総合解説」で紹介しているスーパーマリオは、バールで美味しいコーヒーをいれ続けている、髭にも白髪が混じるマリオです。

実際にマリオという名前が存在するイタリアでは、その人が尊敬に値する人だと、スーパーマリオなんて呼ばれちゃったりするんですね。

『ガンベロ・ロッソ』がスーパーマリオと呼ぶのは、カンパーニア州アヴェッリーノのサン・トンマーゾ地区にあるエッソのガソリンスタンドのバールのバリスタ、マリオ・マルティーノ氏のことです。

写真を見る限りガソリンスタンドに併設された、おしゃれでもシックでもない、あまりにもローカルな店ですが(こんな店)、『ガンベロ・ロッソ』の『バール・ディ・イタリア』では、最高のトレ・キッキを獲得してます。

ネットでサービスステーションの評価を見ると、サービスも人もいいしコーヒーも美味しい、と高評価。

それにしても、ガソリンいれたついでにトレ・キッキのコーヒーが飲めるなんて、贅沢な暮らしだなあ。

この記事は、マリオがスーパーマリオになるまでの話で、訳していてとても面白かったです。
イタリアのバリスタの方々への尊敬の念が、一段と高まりましたよ。

彼の半生は、南イタリアの一地方の町のバリスタには、こうやってなるんだろうなあと思い描いていた通り。

1955年、マリオはアヴェッリーノの隣町で生まれました。
初めてコーヒーをいれたのは、10歳にもなっていない時でした。
さすがはカンパーニアの小学生。
でも、プロの世界は、厳しいのです。
コーヒーマシンの前に立つなんて、百年早いよ、坊や。
という訳で、当時の彼に与えられた仕事は皿洗いと配達でした。
そこで、この小学生は、午前中は学校に行き、午後は町の主だったバールで、何年もかけてスチーム作りとカクテルを覚えたんだそうです。

なんだかバリバリの昭和の職人のようですねえ。
バリスタの学校に行った訳でもなく、ただひたすらに経験を積んだ文字通りのたたきあげ。

しかも、彼は兵役があった時代の人で、兵役を終えて仕事を探す時に、バールで働くのが好きだったので、エッソのバールで働くことにしたのだそうです。
そして32歳の時に、経営者のバラッタ家から店を引き継ぎました。
スーパーマリオは、50年のキャリアの中で500万杯のコーヒーをいれたそうです。


今どきのバリスタ。

barista


未来の巨匠かな。

Baby Barista


イタリアのバリスタチャンピオンがカップッチーノをいれる動画
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“スーパーマリオのコーヒー”の記事は、「総合解説」13/14年8月号に載っています。
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2016年9月26日月曜日

『アウトゥンノ』

今日は入荷したての本、『アウトゥンノ』のご紹介です。














秋のイタリア料理ばかりを1600点も収録している本です。

839ページもある分厚い本で、写真はありませんが、リチェッタの読みやすさは驚くばかり。
すいすい読めます。
その最大の理由は、イタリア語の料理名が明快で、料理をイメージしやすいからだと思います。

恒例の序文をざっと訳してみました。

「秋の料理は強い香りと味に満ちている。
森の活気、夏の最後の太陽、最初の薄い霧、新ワインの鮮やかな赤い色、熟した果実の芳醇な香り。

Nebbia
tagliolini_tartufo_bianco
Funghi
Benvenuto Autunno


秋は大地を再発見する季節で、大地の産物が最高に美味しくなる季節だ。
ぶどうは収穫を迎え、森では栗やきのこが見つけられるのを待っている。
トリュフも高貴な香りを放っている。
カボチャも旬を迎える。
ニョッキやポレンタ、ミネストラ、ジビエの季節も到来だ。
最初の寒さが訪れると、強いコクのある味が欲しくなる。
秋はイタリア各地で、伝統料理がオリジナルの組み合わせと出会う季節だ、
この本は、前菜からドルチェまで1600点のイタリア料理の秋のスペチャリタを集めた」


そして最初のリチェッタは、白トリュフとパルミジャーノの重ね焼き。

スライスした白トリュフとパルミジャーノをフライパンに重ね、オリーブオイル、塩、こしょうで調味して数分火にかけ、レモン汁をかけてすぐにサーブする、という超簡単なのにスペシャルな一品。

パヴイアからピアチェンツァにかけてのパダナ平野の一帯で、テガミーノ・アッラ・ロディジャーナとして知られる一品。
オイルをかけてフライパンで焼く代わりにバターをのせてオーブンで焼いてもOK。

料理はアルファベット順です。
秋にぴったりのAから始まるパスタはなんでしょう。
答えはアニョロッティです。
アルバ風、ピエモンテ風など、バリエーションも豊富。
肉は、白肉(子羊、鶏、豚、子牛)、赤肉(牛、ジビエ)に分類。
さらに魚、ポレンタ、野菜、サラミ、パン、ピッツァ・・・と続き、最後はドルチェ。

一番最後のリチェッタは、ヴィーノ・コットです。
これはぶどうをジューサーにかけて、ぶどうの汁と皮をむいたいちじくをとろ火で3時間煮込んで裏漉ししたもの。
ビンやジャーに詰めて保存します。


秋というと、ピエモンテのイメージ。






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2016年9月23日金曜日

手打ちフジッリ

今日は「総合解説」に新しく加わった記事、中級のテクニックを紹介する“スクオラ・ディ・クチーナ”から、手打ちフジッリの話。

手打ちフジッリって、確かに普段お目にかかることのない手打ちパスタです。
ダイスを通して押し出す乾麺のフジッリとは、基本的な作り方がまったく違います。

乾麺のフジッリ

Park Chow - Lunch

その断面

fusilli


ガルガネッリの型を使って筋をつける方法だと、これに近いフジッリになります。

Fusilli


で、今回訳したリチェッタのフジッリは、まるで今どき女子の憧れの縦ロールのような、見事なゆるふわ系ロール。
これだけきれいにくるくるだと、いったんからめとられたら、ムール貝のようなごろごろの具も、絶対に逃げ出せませんよー。

麺を平らに伸ばしてから棒に巻き付けるのできれいな長い縦ロールになります。

写真はこちらのページの上段中央にあります。

偶然ですが、今月の「総合解説」7ページには、同じく編み棒系のアッケローニ・アル・フェッレットのリチェッタと写真もありますので、ぜひ見比べてください。

このパスタもフジッリの一種で、編み棒でカールさせる代表的なパスタですが、麺を平らにしないで細長い棒状に伸ばしたところに上から棒をのせて押し込んで転がしながらカールさせるのが特徴です。
この方法だと、2種類のフジッリができます。





どちらも棒を使って生地をカールさせる、いう原理は同じなのですが、作り上げるパスタのイメージが違うと、こうも別のものができるんですね。

この独特な形のパスタにはどんなソースが合うのか、来月号の「総合解説」には、フジッリのリチェッタも載せましたので、ぜひご参考に。


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“スクオラ・デイ・クチーナ”と“シチリアのサルデーニャ料理のチェーナ”の記事の日本語訳は「総合解説」13/14年8月号に載っています。
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2016年9月20日火曜日

アーリオ・オーリオ

最近めっきり涼しくなってきましたねー。

北イタリアに住む年金暮らしのご隠居が、友人夫婦が夏に日本に遊びに行こうとしたら、旅行社に、夏は季節が良くないからやめたほうがいい、春か秋にしなさいと言われた、と言ってました。
確かに、猛暑に台風にと、日本の夏は、高齢の旅行者には厳しそうだなあ。
それにしても、その旅行社、なかなかできる。

そんな厳しい夏も過ぎて、いよいよ食べ物が美味しい秋が到来ですねえ。
今年は、その名も『秋(アウトゥンノ)』というお勧め本も入荷しました。
あとは台風が行ってくれるのを待つだけ。

秋の日本もいいですよ。
お待ちしてまーす。

Kinkakuji-temple 鹿苑寺金閣


さて今日は、今月の「総合解説」で訳した料理の中で、一番印象に残った料理名をご紹介。
初めて訳した時はまったく気が付かなくて、二度目で、あっと気が付いたら、もう忘れられなくなりました。
後からじわっと来る料理名です。
それは、
「タリオリーニ・アーリオ・オーリオ・ボッタルガ」

気が付きましたか?
ちらっと見ただけでは、すんなり読めて、なにも気づかない。
でも、よーく読むと、
そう、これは、アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノのアレンジ版です。
元々のリチェッタは、アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノにボッタルガを加えたものだけど、ペペロンチーノをボッタルガに変えたって、いいんです。

そう考えると、いくらでも応用できそうですよね。
でも、ごろの良さを考えると、ボッタルガは、字数的にもぴったり。

しかも、アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノを作って、仕上げにおろしたボッタルガとレモンの皮のすりおろしを散らすだけ、という超お手軽パスタ。

アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノにボッタルガを加える人は、たくさんいるみたいですが、その料理を、いさぎよくアーリオ・オーリオ・ボッタルガと呼ぶとは、センスあるなあ。

ボッタルガの他にも、何かあるかな、と思って大好きな、有名シェフのパスタの本、『パスタ』を見てみました。

そしたら、ありました。
まずは、イスキア島のリストランテ・イル・メログラーノの料理、
“イカのリングイーネのアーリオ・オーリオ・ポモドリーニ”。
これは、ヤリイカのパスタだったらアーリオ・オーリオ・カラマレッテ、とも応用できます。

大御所のドン・アルフォンソもありましたよ。
ここでは、さらにひねりを加えて
“スパゲッティ・アーリオ・オーリオ・アリーチ・エ・ノーチェ”。
4つ目の素材も加えて、さらにごろよく仕上げてきました。
まるでラップのようなテンポのよさ。

それにしても、アーリオ・オーリオのように超簡単なリチェッタは、料理書に載ることは滅多にないので、グランシェフのアーリオ・オーリオのこのリチェッタは、なかなか貴重かも。
本の解説によると、この料理は古い伝統料理でクリスマスイブの定番なんだって。

あれ、カンパーニアの伝統料理?

ついでなので、“アーリオ・オーリオ”のうんちくを少々。

スローフードの“リチェッテ・ディ・オステリア”シリーズの『パスタ』によると、唐辛子で辛さを利かせる前のアーヨ・オーヨ(ajo ojo)は、ラツィオの農村部で広まった料理ですが、発祥地となるとラツィオ、アブルツォ、カンパーニア、カラブリアの各地の間で論争があるそうです。

一説によると、あまり強くない味で、フライパンであおる必要のない、ゆでたスパゲッティにただかけるだけでいい熱いオイルのソースが欲しいと思って考え出されたのだそうです。
にんにくを半分に切ってボールの底にこすりつけ、この中にゆでたスパゲッティを入れて熱いオリーブオイルをかけ、仕上げにイタリアンパセリと唐辛子のみじん切りをちょちょいと散らすだけ。

究極のズボラパスタですねえ。
なんでこんな料理の誕生したいきさつがいやに詳しく伝えられているのか、かなりうさんくさい話ではありますが、オイルにトマトを加えるとロッソバージョンになります、なんてもっともらしい解説もあって、そこそこありそうで説得力もあるなあ。

まあ、どうやらアーリオ・オーリオは、いかに手を抜いて美味しく作るか、ということをつきつめていったらこうなった、みたいなもんなのでは。
ただし、本に載っているリチェッタは、ここまで手抜きではありません。
それにしても、カルボナーラといい、アマトリチャーナといい、カーチョ・エ・ペペといい、ローマの農村部からは、どうしてこんなに伝説的なパスタが次々生まれたのでしょうねえ。

シンプルな料理ほどアレンジはいくらでも。
究極のズボラ料理てもミシュラン3つ星のシェフが作ると、ここまでリッパにできます。




ちなみにこの店のajo ojoはスパゲッティ・アーヨ・オーヨ・セッピエ・エ・ピゼッリで、€60と
とびきり高級。



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“タリオリーニ・アーリオ・オーリオ・ボッタルガ”のリチェッタを含む“シチリアとサルデーニャ料理のチェーナ”の日本語訳は、「総合解説」13/14年8月号に載っています。
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2016年9月15日木曜日

ヒメジのリヴォルノ風

前回の

「シチリアの家庭では、マジパンは冷蔵庫に常備していることが多い」

に続いて、もう一つ、今月の「総合解説」の中で強く印象に残る言葉がありました。

それは、“ヒメジのリヴォルノ風”の記事の中の一文です。
リヴォルノと言えば、先月は、リヴォルノ風カッチュッコの話を取り上げています。

トスカーナの街ですが、魚料理が美味しいところなんですね。

で、印象に残った言葉は、


「(南地中海で捕れた)ヒメジは1ケースで奴隷一人分、と言われるほど高価だった」


古代ローマ時代の話です。

Coppa di Triglie!

だけど、ヒメジ1ケースって、あまりピンと来ないので、奴隷の値段について、ちょっと調べてみました。
奴隷の価値は、時代や場所によって変わるので、はっきりいくらと言うことはできません。
あくまでも参考程度ですが、わかりやすかったのは、牛1頭より高くて馬1頭よりは安い、というたとえ。

いくらなんでもヒメジ1ケースで売られた奴隷は、不憫だなあ。
まあ、それほどの高級魚で、当時は皇帝の宴席に登場するような、特別な食材だったという訳です。

とにかくローマ時代から高級魚として人気があったヒメジですが、砂場のヒメジより岩場のヒメジのほうが美味しい、というのも、イタリアではよく言われていること。

ヒメジのリヴォルノ風は、16世紀後半にリヴォルノのユダヤ人コミュニティーの中で生まれた料理というのも興味深い話です。
記事にはさらりと書かれていましたが、かつてリヴォルノは、地中海各地で宗教的な迫害を受けていた人々を受け入れていたそうです。
魚とトマトの組み合わせは、ユダヤ料理の特徴でした。
リヴォルノにトマトを伝えたのはスペインやオスマン帝国から逃げてきたユダヤ人だとも言われています。
それが広まって、今では、トマトをたっぷり使う魚料理がリヴォルノ料理の特徴と言われるほどです。

カッチュッコの話の時は、地中海各地から漁師が集まる街、という話でしたが、それだけではない、多国籍な街だったのですね。

そもそもカッチュッコもユダヤ料理がルーツなんだとか。
イタリア料理の中には、イタリア人もユダヤ料理がルーツだとは知らないものがたくさんあるそうですよ。

ヒメジのリヴォルノ風
 ↓



続きはこちらこちら


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“ヒメジのリヴォルノ風”の記事とリチェッタの日本語訳は、「総合解説」13/14年8月号に載っています。
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2016年9月12日月曜日

シチリアのアーモンドミルク

今日は今月の「総合解説」を訳していて、一番印象に残った文章をご紹介。

それは、“シチリアとサルデーニャ料理のチェーナ”という、ちょっとご馳走な家庭の地方料理を提案した記事の、シチリア料理のコースを説明する文章の中に出てきました。

このコース、プリーモは編み棒で作る手打ちパスタにシチリア風ペストのソース。
セコンドは牛肉のブラチョーレとメッシーナ風カポナータ。
そしてドルチェはシチリアならではのアーモンドのビスコッティ。
素朴で文句なしのシチリアの味のコース料理です。

この写真は料理とは関係ありませんが、右側のトレーにのっているのがアーモンド(マジパン)のビスコッティ。

IMGP1758


その文章は、このドルチェのリチェッタの最後の部分に登場しました。
それは、こんな文章です。

「アーモンドのビスコッティには通常アーモンドミルクを添える。
アーモンドミルクは、ピッチャーに水1.5リットルを入れてマジパン250gを溶かす。
シチリアの家庭では、マジパンを冷蔵庫に常備していることが多い。
マジパンは皮むきアーモンド125gと粉糖125g、牛乳少々をミキサーにかける。
冷蔵庫で数日保存できる」


手作りマジパンやアーモンドミルクが冷蔵庫に常備されているって、いかにもシチリア的で、なんか素敵だなー。







アーモンドミルクの作り方は色々あるんですね。

アーモンドの様々な味わい方がシチリアで広まったのは、この島がアーモンドの産地だから。
アーモンドは紀元前にフェニキア人によってシチリアに伝わりました。
シチリアとアーモンドの深くて長い関係がよく分かる動画
 ↓



アーモンドの殻を食べてる羊や牛とか、アーモンドの枝の薪で焼くピッツァとか、超美味しそう。

アーモンドミルクが飲みたくなってきた。
アーモンドクッキーと一緒に飲んでみようかな。

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“シチリアとサルデーニャ料理のチェーナ”の日本語訳は、「総合解説」13/14年8月号に載っています。
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2016年9月8日木曜日

クロマグロのヴィテッロ・トンナート

今日からは、新しい「総合解説」13/14年8月号のビジュアル解説です。
まず最初の定番地方料理は、ヴィテッロ・トンナート。

ピエモンテの、というかイタリアの代表的な夏の料理ですが、この料理の背景には、意外と深いイタリアの食生活の真の姿がありました。

まずこの料理、なかなか特殊なものでした。

vitello tonnato


子牛とマグロというその名の通り、肉と魚の組み合わせ。
しかも北イタリアの海のないピエモンテで、マグロ料理とは。
マグロはピエモンテ人にとって、どう考えても珍味です。

この料理は、近代イタリア料理の父、ペッレグリーノ・アルトゥージが19世紀末に出版した本、『La scienza in cucina e l'arte di mangiar bene』のリチェッタがイタリアに広まりました。

極東で魚を食べている国民からすると、ヨーロッパ人は、普段は肉ばかり食べていそうなイメージですが、『クチーナ・イタリアーナ』の記事によると、19世紀のイタリアの庶民にとって、肉はまだ特別な機会に食べるもので、食べたとしても、内臓などの質素な部位が中心だったそうです。
ただ、16世紀以降、ピエモンテには牛肉がたっぷりあり、他の地方よりは食べる機会が多かったようです。

それにしても、問題はマグロです。
中世には現在よりマグロの数自体は多かったし、トスカーナあたりでもマグロが捕れました。
しかも、クロマグロ。
マッタンツァと呼ばれる、現在はマグロとともにほぼ消滅した原始的な漁で捕ったクロマグロの中トロを、塩漬けや干物にして、金持ちの北イタリアの領主様の食糧庫まで届けたのです。

料理にはバッカラのように戻して使いました。
まだ、ツナ缶はない時代です。

ヴィテッロ・トンナートは、子牛とマグロという高級珍味を使った、貴族のための料理だったんですね。
それが、19世紀になってマグロのオイル漬けが出回るようになり、アルトゥージの本によってリチェッタも広まって、庶民も食べることができる料理になっていった訳です。

貴族料理としてのヴィテッロ・トンナートを食べてみたかったら、クロマグロの中トロのオイル漬けあたりを使ってみるということですね。





サルデーニャ産クロマグロの中トロのオイル漬けは、300g1800円ぐらいで販売されています。

逆に一番現代的にしたかったらマヨネーズを加えます。
もちろん伝統的なヴィテッロ・トンナートにマヨネーズは入りません。




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“ヴィテッロ・トンナート”の記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年8月号に載っています。
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2016年9月5日月曜日

アナカプリとラビオリ・カプレージ

今日は「総合解説」のグルメガイドから、アナカプリの話です。

カプリ島の主な居住地区は、カプリ地区とアナカプリ地区、というのは、この国際的な高級リゾート地の基本情報。
他に、マリーナ・グランデやマリーナ・ピッコラ地区などがあります。



スノッブなブランド天国のカプリと、対照的な、大自然と静寂のアナカプリ。
訪れた人はおそらく誰もが、この島に別荘があったら夢のようだなあ、と思うはず。
この島の観光の目玉、青の洞窟も、アナカプリにあります。
でも、青の洞窟は行ったことがある人も多いと思うので、ここではアナカプリのもう一つの、マイナーな名所、ヴィッラ・サン・ミケーレの動画をどうぞ。
ここは、この島にすっかり魅せられて、ここに別荘があったらなあ、と思った数多くの外国人の一人で、その夢を実現させた数少ない一人の家です。
スウェーデン人の医師で作家で、アナカプリの重要人物だった人の夢の家。




さて、料理ですが、カプリ料理と言えば、インサラータ・カプレーゼとトルタ・カプレーゼですよね。
あと、リモンチェッロあたりも名物。
パスタは、「総合解説」にリチェッタを載せましたが、カプリの家庭で一番ポピュラーなのが、ラビオリ・カプレージなんだそうですよ。
詰め物はフレッシュチーズのカチョッタ・カンパーナ、卵、マジョラム。
記事は丸く抜くのが一般的なよう。

カプリ料理
 ↓


ラビオリ・カプレージはナポリ風詰め物のラビオリによく似てます。
 ↓



ナポリでラビオリを食べるという発想はなかったのですが、フレッシュチーズの具の丸いラビオリはこの地方の典型的な料理なんですね。

さらに「総合解説」では、ラビオリ・カプレーゼにかけるカプリの生トマトソース、キウメンザーナも紹介しています。
基本的なトマトソースですが、島の食材で作ると、典型的な地中海の味になるのでしょう。
島の漁師の間に広まったトマトソースだと言われているようです。
次回カプリに行くことがあったら、サルサ・キウメンザーナをかけたラビオリ・カプレージを食べるべし、とメモ、メモ。


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アナカプリの記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年7月号に載っています。
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2016年9月1日木曜日

キッチン付きボッテガ

今日は「総合解説」の記事、“食品セレクトショップの料理”で紹介した、キッチン付きボッテガのビジュアル解説です。

キッチン付きボッテガとは、イートイン用のテーブルを併設したり、店内にビストロをオープンさせた食料品店。
地元の特別な食材を買いながら店の料理で味や調理方法、他の食材との組み合わせを知ることができて、料理が気に入ったら食材を店で買って、家で作ることもできる。
高級食材をカジュアルに提供し、買い物がてら夕食に出かけるという現代のライフスタイルにもマッチした店。

まず1軒目は、ヴィチェンツァのアルツィニャーノで4代続く肉屋さんに併設されたレストラン。
肉屋さんだけあって、自慢の食材は独自のルートで買い付けるリムーザン牛。




次は、ヴェネトで100年前からアルティジャナーレのチーズを作っている店。
チーズバーとレストラン併設。

ガイド付きのチーズのデグスタツィオーネというコースがあります。



ジェラートマシンの大手、カルピジャーニ社との共同開発の新製品、チーズマスター。
ミルクからフレッシュチーズができちゃう機械。




この他に、ナポリの家族経営の魚屋をミラノに開いてカンパーニアの食材と組み合わせた魚料理を出す店や、フェラーラで、エミリア地方のスペチャリタを販売しながら自家製パスタやサラミなどを出す店。シチリアの星付きシェフが開いた、レストランのソースやパスティッチェリーアなどテイクアウト料理を売る店など、どんな業種でも、アイデア次第でキッチン付きポッテーガができるもんですね。




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“食品セレクトショップの料理”の記事の日本語訳は「総合解説」13/14年7月号に載っています。
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マリア・ルイジアの小さな街、パルマのバターとグラナの娘、アノリーニ。本物は牛と去勢鶏のブロードでゆでます。

昨日の最後にサラっと登場したアノリーニですが、このパスタ、(CIR12月号P.5)にもリチェッタが載っていました。クルルジョネスの次の料理です。花の形の可愛い詰め物入りパスタ、なんていうのがこのパスタの印象ですが、イタリア人は、こんな風に思ってるんですね。 「マリア・ルイジアの小...