2017年7月31日月曜日

ペコリーノ・ロマーノしょっぱい問題

今日はペコリーノ・ロマーノの話。
ガンベロ・ロッソの記事からです。

Pecorino Romano Fulvi Cheese


ペコリーノ・ロマーノの話といえば、いつもの話題は、
約2千年の歴史があるローマの伝統的なチーズなのに、ほとんどサルデーニャで作っている、ということと、
なんでこのチーズはあんなにしょっぱいのか、ということ。

ペコリーノ・ロマーノの95%はサルデーニャ産。
もうほぼ完全にサルデーニャの製品ですよね。
でも、サルデーニャはローマより羊の飼育に適しているし、サルデーニャの人たちは、羊飼いのDNAを持って生まれてくるようで、羊を扱わせたら名人揃い。
サルデーニャ産でも何の文句もありません。
ペコリーノ・ロマーノはイタリアの輸出量の多いチーズトップ5に入っていて、羊のミルクとしては第1位。
しかも、その約1/3はアメリカに輸出されているそうです。
ところが、ペコリーノ・ロマーノは今、転換期を迎えていて、生産量が減少し、廃業する老舗メーカーも現れています。
輸出量か増えても、対ドルユーロ安のせいで利益は相殺されています。
しかも、「分子料理の大流行の反動で、ローマ料理への回帰が起きている」、と(ローマ料理というか、イタリア地方料理と分子料理は水と油ですよね)せっかく追い風が吹いているのに、
数年前の青舌病の流行、ここ数年の雨が多い天気のために野生の状態で飼育されている羊の活動量が減り、ミルクの生産量が20パーセント減少、などの数々のマイナス要因があります。
長雨が羊のミルクの量の減少につながるなんて、知らなかったなあ。

ペコリーノ・ロマーノしょっぱい問題は、特に外国人には受け入れられないくらい深刻ですよね。
あの塩気は、ローマの伝統の味だそうです。
ペコリーノ・ロマーノは元々調味料のように使われていました。
単独でチーズだけを味わうためには作られていないのです。
ところが、ペコリーノ・ロマーノの現在の主な消費者は北イタリア人やアメリカ人。
皮肉なことに、このチーズがアメリカに広まったのは、塩分が多くて長期間保存できたから。
でも、彼らが好むのは、マイルドでフレッシュな味。
これは多分、日本の消費者も同じですね。
というわけで、管理組合では塩気の弱いタイプも造るようにしました。


ペコリーノ・ロマーノのサラトゥーラ
 ↓



伝統の味も、こうやって消えていくんですね。
確かに、ペコリーノ・ロマーノは今、転換期かもしれません。
今のうちに伝統の味を味わっておかないと・・・。




-------------------------------------------------------
“ペコリーノ・ロマーノ”の記事の日本語訳は「総合解説」2015年3月号に載っています。
[creapasso.comへ戻る]
=====================================

2017年7月27日木曜日

イタリア目線の鶏肉のマレンゴ風

今日は鶏肉のマレンゴ風の話。

Pollo alla Marengo


この料理をイタリア料理と呼ぶのには賛否両論だとは思いますが、一応、マレンゴというのはイタリアの地名(ピエモンテ)なので、イタリアの要素も少しは入っている、ということでよろしいでしょうか。

ナポレオン由来の料理のため、注目を浴びやすく、歴史的な逸話が多い料理、というわけで、後世にいろんなエピソードを生み出した面白い料理です。
とにかく、劣勢だったナポレオン率いるフランス軍が、オーストリア軍に逆転勝利したとたんに、ヨーロッパ中のあらゆる料理書がこぞってこの料理のエピソードを取り上げたようで、その大部分が、フランス目線で描かれています。

ブログで以前とりあげたことがあります。
その時の内容はこちら

7年も前のことでしたが、昔からイタリアではイタリア目線の歴史が伝わっていたようです。
今回は『サーレ・エ・ペペ』の記事から、その一部をご紹介。
まず、食材は戦場であり合わせのものをかき集めて作った、というのがフランスの一般的な説。
ところがイタリアでは、容赦ないです。
ナポレオンの料理人デュナンが、各国の軍隊に蹂躙されてひどい食糧難だった地元の農家を急襲して、鶏を徴収していった、と伝わっています。
さらに塩がなかったので、鉄砲用の硝石の粉で調味したんだそうです。
これ、食べ物?
というレベルですが、なんとこんな料理をナポレオンがえらく気に入ったんだそうです。
ひょっとして、これ、ナポレオンの味音痴をバカにしてる?
確かに、ナポレオンは料理に興味がなかったというのは有名な話。
イタリア目線だと、この料理の質素なところが気に入ったのだろう、という解釈になっています。
うん、バカにしてるね。

しかも、世界中に広まったのは、この料理を有名な戦いのシンボルにするために、エスコフィエが考案した料理だとでも言いたそうな結論。

イタリアとフランスでは、ナポレオンの業績の解釈にも違いがあるようで、隣の国でも正反対のイメージがあったりするんですね。
ところが面白いのが、この料理、アメリカではナポレオン抜きでチキン・マレンゴと呼ばれて、家庭料理としてやたら人気があるみたい。

チキン・マレンゴ
 ↓


プーレ・マレンゴ
 ↓


ポッロ・マレンゴ
 ↓



なるほど、どの国の食文化に属するか、厳密に分類できない料理なので、アレンジの幅も広い料理なんですね。


-------------------------------------------------------

“鶏肉のマレンゴ風”の記事の日本語訳は、「総合解説」2015年3月号に載っています。
[creapasso.comへ戻る]

=====================================

2017年7月24日月曜日

3月が旬の食材、マンダリーノ・タルディーヴォ、モエケ

今日は、「総合解説」3月号の記事、“今月の食材”を、ビジュアル解説。
イタリアで3月が旬というと..、どんな食材があるのでしょう。

まず最初はマンダリーノ・タルディーヴォ。

マンダリーノは英語ならマンダリン・オレンジ。
みかんの一種。
ヨーロッパには中国から、15世紀にポルトガルやスペイン経由で伝わりました。


タルディーヴォは晩生(おくて)。
遅く熟す品種です。
イタリアでは3月に熟します。

こちらはシチリアはパレルモのチャクッリで栽培されている晩生マンダリーノ。
wikiによると(こちら)、日本からアメリカに伝わったみかんと同じ品種だそうです。
スローフードの保護食材で、アロマが強くて糖分が高く、皮がとても薄いのだそうですよ。
管理組合に所属するわずかな生産者のみが作っているマンダリーノです。
シチリアでは皮をカンディートにする利用方法が広まりました。
 ↓



シチリアでカンディートと言えば、カッサータ。
 ↓





タルディーヴォの代表的な野菜、ラディッキオ。
 ↓
Venice, street market


次はアーリオ・オルシーノ。
野生のにんにく、行者にんにくのヨーロッパ産の亜種です。
下の動画はロンバルディアのヴァルキアヴェンナでの収穫風景。
イタリア各地の森の湿った場所に育ちます。
春の北部の山岳地はにんにくの香りがつきものなんだって。
冬眠明けのクマが食べて元気になる山草。
 ↓



さらに、ベネチア名物のソフトシェルクラブ、モエケもこの季節のもの。




3月にイタリアにいるなら、パレルモでチャクッリのタルディーヴォのカンディートで作ったカッサータを食べて、ベネチアでモエケを食べるなんてどうでしょう。


-------------------------------------------------------
[creapasso.comへ戻る]
=====================================

2017年7月20日木曜日

「ドロミテの植物」

イタリア在住のsegnalibroさんから、近況報告です。
素晴らしい写真。
涼しさのおすそ分け。
それではどうぞ。



トレッキング日和の好天が続いています。

dolomiti 1

dolomiti 2



大自然は素晴らしいのですが、景色でお腹いっぱいにはなりません。
山に来てから、新鮮なお野菜や果物が入手しづらくなりました。
いや、あるにはあるんです。でも、このお値段でこの品質だと思うと、なかなかおててが伸びないのです。

今年は青紫蘇の種をまいたのですが、数本発芽したものの、育ってはくれませんでした。
ストラディバリウスは、ドロミテ産の西洋トウヒを使用と聞いて、なるほど、成長が遅いから質の良い木材が育つのだと感心していたのですが、紫蘇は是非とも育って欲しい!
ちなみに、1000本の木があっても、ストラディバリウスになれたのは3本あるかどうか、なのだそうです。

春先には、こんな山菜を見つけました。

dolomiti 3

dolomiti 4

フキノトウとワラビいや、ゼンマイ?
採って食べてみたかったのですが、ご近所さん誰一人食べたことがないとの事で、冒険はやめておきました。日本のものとは違うのかしら?

山に来て一番カワイイと思ったお花がこちら。

dolomiti 5


シラタマソウ。wiki先生によると、ピエモンテやアペニン山脈中部のウンブリアやマルケの辺りでは、この新芽を食べるとの事。
ご近所さんも、これは好きな山菜だそうで、新芽を茹でてニョッキに練り込み、バターとパルミジャーノでシンプルに食べるのがオススメとのことでした。
シラタマソウは、この辺りの方言でsciopetinチョペティンと言い、お花をプチっと潰す時の擬音語が由来なのだそうです。

春先、雪解け後すぐに楽しむ山菜がこれ(写真はお借りしています)


dolomiti 6


Radicchio di montagna 山のラデッキオ。標高1000m以上に自生する野生のラデッキオの新芽です。成長すると、子どもの背丈ほどになるそうです。
サラダにしたりフリットにしたり、調理方法はいろいろですが、地元民のオススメは酢水で茹でて、オイル漬。お店には売っていないので、自分で採るしかないですね。食べてみたーい!

私が唯一チャレンジしたのが、サンブーコの実のマルメラータです。


dolomiti 7




5-6
月頃には至る所にお花が咲いていて、ジャムなんて作り放題食べ放題なんじゃないか、でもご近所さんと争奪戦になったらどうしよう、などと思っていました。
しかし、熟してる実は枝からポタポタ落ちて、収穫時は服も靴も爪も赤く染まり、その上、周りに生えているイラクサのトゲに刺されて、収穫が大変。
また、完熟していない実は、種に毒性があるから使わないように選別したりと想像以上に面倒で、結局1回しか作りませんでした。
なるほど、みんな採らずに放置している訳だわ。
ちなみに、上記のシラタマソウのニョッキには、イラクサの新芽を一緒に練りこんでも美味しいのだそうです。

先日、山で一番会いたかったお花にやっと出会えました。

dolomiti 8


野生のエーデルワイス、生まれて初めて見ました。
まだまだ山でやってみたい事はありますが、そろそろ山を降りようと思います。
1
年間の山生活終了です。


segnalibroさんが、こんな素晴らしいところに住んでいたなんて、初めて知りました。
というか、どこだ!?
山生活は終了でも、イタリア生活はまだ続きますよね。
近況報告楽しみにしてますので、平地の話も聞かせてねー。


-------------------------------------------------------
[creapasso.comへ戻る]
=====================================

2017年7月13日木曜日

グラニータとクレモラータ

前回は、イタリアンソーダという名前のアメリカ生まれの夏のドリンクの話をしましたが、今日は、一説ではそのイタリア版ルーツと考えられているものをご紹介。

シチリアのジェラートのクレモラータです。





グレモラータより濃くてフルーツのジャムを凍らせたようなものだそうです。
新しい製品なんですね。

クレモラータは、果物の果肉を凍らせて崩します。
基本はグラニータと同じですが、違うのは果肉がたっぷり入っているところ。
クレモラータに最適なのは桃、スイカ、桑の実、フィーキ・ディ・インディアなど。
一方、グラニータは、コーヒーのような液体から作るのにぴったり。
ちなみに、シチリア西部ではグラニータのことをグラモラータと呼んだそうです。
それがクレモラータとグラニータが混同された原因。
グラニータはシチリア発でイタリア中に広まった、シチリアが誇る冷たいドルチェ。

暑くなると冷房ガンガン利かせた中で冷たいものばかり食べて、結局夏バテまっしぐら。
食べる代わりに動画でも見て涼みましょう。



おまけの動画
グラッタケッカ





-------------------------------------------------------
[creapasso.comへ戻る]
=====================================

2017年7月10日月曜日

イタリアンソーダ

今日は「総合解説」2015年3月号の発売日です。
この暑さの中で料理をするのは大変ですが、料理の翻訳も、できればあまり暑苦しい料理は遠慮したい気分です。
その点、3月号はナポリ料理の翻訳が中心だったのでだったので、海辺のレストランで冷えた白ワインを飲みながら食べるのがぴったりな料理ばかりで、取りあえず、夏バテは回避されました。

ニュートンの魚料理シリーズを眺めていると、ヴェネト、ナポリ、シチリア、リグーリアと、イタリア旅行に行きたくなるような場所ばかり。
“・・・・ディ・マーレ”なんて、言葉の響きだけで、もう美味しそう。

インサラータ・ディ・マーレ。
 ↓


アンティパスティ・ディ・マーレ
 ↓



地中海料理大学の授業だそうです。
どんな学校なんでしょうか。
ホームページはこちら
2009年ソレントに創立されて、カンパーニア州がスポンサー。
南イタリアの料理界が後ろ盾のようですね。




おまけの動画。
アメリカで流行しているらしいイタリアン・ソーダ。
イタリアンクリームソーダとも言います。
実はアメリカ生まれのドリンク。
イタリアにこんなソーダがあると聞いたことはないなあ。
でも、イタリアンソーダという言葉の響きは、美味しそう。



グラスにストロベリーシロップとピーチシロップ、ココナッツシロップなどを入れて氷とソーダを加えます。そこにホイップクリームかヘビークリームを加えて出来上がり。




-------------------------------------------------------
[creapasso.comへ戻る]
=====================================

2017年7月6日木曜日

ナポリのピッツァとオリヴィエロ・トスカーニ

何でも、世界中で最も広まっているイタリア語はpizzaだそうで。
ピッツァと言えばナポリ。
で、今日はナポリのグルメガイドからビッツァにまつわる話。

まずは、2014年にできたピッツァ国際博物館。
前年にナポリ中心部のムニチピオ広場にオープンした地中海博物館の中にできた2部屋のスペースに、ナポリ・ピッツァイオーリ協会が提供したピッツァ造りの歴史的道具や写真などが展示されているそうです。
こんな展示
はっきり言って意味不明。
博物館の中にはピッツェリアもあって、協会の会員がビッツァを焼いています。

協会と言えば、Verace Pizza Napoletana協会ですが、
設立30年を記念して、フランチャコルタのスプマンテメーカー、コンタディ・カスタルディ、世界的に有名なカメラマン、オリヴィエロ・トスカーニ氏と組んだ写真集『Tu vuò fa' il Napoletano』は、素晴らしいですね。

こんな写真

トスカーニ氏はベネトンの反人種差別キャンペーンの広告で世界中にショックを与えた人。
才能のあるカメラマンの写真は、被写体をこんなに活き活きとさせるんですね。
料理人が腕を組んでどや顔してるポートレトはよくありますが、鼻の下に唐辛子はさんでどや顔してるピッツァイオーロは、初めて見ました。
これ

実はこのピッツァィオーロは、トスカーニ氏なんです。
この写真集のタイトルは日本語にするなら『ナポリかぶれ』。
ナポリよ、ピッツァを発明してくれてありがとう、と言っちゃうトスカーニ氏の人間性も魅力的です。
これは写真撮ってもらった会員は、一生の記念になったのでは。
協会も素敵なことやりますね。
残念ながら、本にはなっていないようです。


-------------------------------------------------------

“ナポリ”の記事の日本語訳は「総合解説」2015年2月号に載っています。
[creapasso.comへ戻る]

=====================================

2017年7月3日月曜日

夏のイタリア料理

暑いですねー。夏真っ盛りに突入したような暑さです。
イタリア料理の世界では、夏の料理にはどんなものがあるかと思って、イタリアの地方料理を季節ごとにまとめたカルロ・カンビ著の『ミリオーリ・リチェッテ・デッラ・クチーナ・イタリアーナ・レジョナーレ』を見てみました。

それによると、イタリアの夏は、ざっと3つに分かれていて、
6月21日前後の夏至から7月初旬の、まだ春の名残が感じられる季節。





夏至の夜明けのコンサート。
 ↓


夏至は夏の最初の1日。
地中海の人々にとって、日本より思い入れがある日のようです。

7月中旬からフェッラゴスト(8月15日の聖母被昇天の祝日)の期間は、夏本番。
夏の恵みを最大限に味わえる時期。

夏は野菜の季節です。
ズッキーニ、なす、トマト、パプリカ、玉ねぎ。
カポナータ、なすのパルミジャーナ、ヴィテッロ・トンナート、カルパッチョの季節。

カポナータ
 ↓



さらに、ケッパーや松の実、イワシといったシチリア料理の食材が美味しくなる季節。
飲食店ではメニューを見直す時期で、前菜やフルーツが増えて、ピアット・ウニコにソルベットやレモンのジェラート、フルーツのトルタを添えて出すようになります。
ソースは定番のリグーリアのペーストからシチリアのトラーパニ風まで、ペーストが大活躍。
プンタレッレやズッキーニの花のフリットも旬です。
チーズはモッツァレッラなどソフトチーズの季節。
メロンを初めとするフルーツも暑い夏に欠かせない食材です。
ピスタチオとヘーゼルナッツも夏が旬。

生ハムとメロンのバリエーション
 ↓


一方、イタリアでは夏のバカンス地には欠かせない魚料理ですが、皮肉なことに水揚げは減ります。
その代わりを務めるのがウニ、甲殻類、タコ、イカなどのシーフード。

フェッラゴストを過ぎると、秋の気配が加わってきます。

バリ市民にフェッラゴストのメニューをききました。
 ↓



土用のウナギみたいなもんかと思ったら、意外と普通でした。

忘れてました。
みんなバカンスに行って、街中はからっぽでした。
 ↓



-------------------------------------------------------
[creapasso.comへ戻る]
=====================================

マリア・ルイジアの小さな街、パルマのバターとグラナの娘、アノリーニ。本物は牛と去勢鶏のブロードでゆでます。

昨日の最後にサラっと登場したアノリーニですが、このパスタ、(CIR12月号P.5)にもリチェッタが載っていました。クルルジョネスの次の料理です。花の形の可愛い詰め物入りパスタ、なんていうのがこのパスタの印象ですが、イタリア人は、こんな風に思ってるんですね。 「マリア・ルイジアの小...