2017年12月29日金曜日

巨星墜つ


2018年の最後になって、イタリアから訃報が飛び込んできました。
イタリア料理界の巨匠、グアルティエロ・マルケージ氏が12月26日、亡くなりました。
87歳でした。
イタリア在住のsegnalibroさんによると、“全国版ニュースで流れて驚きました。
もういいお年だったし、奥様が亡くなられてから、落ち込まれていたとか
とのこと。

イタリアで最初の3つ星シェフとして一世を風靡し、イタリア料理の新しい扉を開いた人として、このブログでも度々取り上げてきました。
パイオニアであると同時に後輩の育成にも熱心で、多くのマルケージ・チルドレンを育て上げました。
美食の国のトップシェフとして、世界で一番有名なイタリア料理人でしたよね。
世代交代がますます加速しそうだなあ。

彼の代表作、金箔とサフランのリゾット



このリゾットは、作り方は米の産地の伝統的なリチェッタを守りながら、洗練された創造力に溢れた2次元的盛り付けで圧倒する、新しいイタリア料理でした。

全盛期がバブルと重なっていたので、個人的にはバブルの象徴のようなイメージのシェフでした。
でも、マクドナルドが出店する度に反対運動がおこるような国で、先頭に立って革新的なことをする勇気ある人でもありました。
R.I.P シェフ。

のんびり美味しそうなパスタのリチェッタでも紹介して今年を終えようと思っていたのですが、思いがけないニュースで、予定は大幅に変更です。
それでは、良いお年をお迎えください。


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2017年12月27日水曜日

恒例、新年のレンズ豆

今年もレンズ豆を食べる季節がやってきました。

標高1000~1500mの高地に育ち、人間が栽培をした最初の植物の一つで、イタリア産レンズ豆の代表的産地カステッルッチョのあるシビッリーニ山地の高原では、何世紀にも渡って、レンズ豆、小麦、牧草の三毛作が行われていたのでした。
春の初めに畑を耕し、3月から5月半ばにかけて種を撒き、7月から8月にかけて収穫。

12月31日の真夜中12時を過ぎると、イタリア中の人がレンズ豆を食べます。
そうすると幸せと財産を運んでくれる、と信じられているからですが、
下の動画によると、なにやら面倒な手続きがあるようです。
例えばその一つがオイルは加えない、ということ。
幸運が油で溶け出て行っちゃうからだそうです。



もっとお手軽に幸運を呼ぶのは、新年になる直前にぶどうを1粒食べる、ということ。
生でもレーズンでもいいそうです。

油を加えないのは美味しくなさそうなので、寒い今年はレンズ豆のズッパのリチェッタをどうぞ。



年末年始の料理と言えば、カッペッレッティ・イン・ブロードも名物料理ですが、今年はタリオリーニ・イン・ブロードなんてどうでしょう。
見た目はラーメンですが、ブロードはしっかりイタリアン。



タリオリーニ・イン・ブロードの話、次回に続きます。


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2017年12月25日月曜日

アニョロッティ・デル・プリン

今月の「総合解説」の書籍の翻訳はピエモンテ料理。
1001スペチャリタ』からは、前菜とプリーモのうんちくを、グリバウドシリーズ『ピエモンテ』からは前菜とプリーモの定番地方料理のリチェッタを、『オステリエ・ディ・イタリア』からはオステリア・ボッコンディヴィーノのリチェッタを訳しました。

前回のブログで、カルボナーラの具のラビオリ・デル・プリンを紹介しましたが、ラビオリ・デル・プリンという名前。違和感ありませんか?
デル・プリンというのは「つまんだ」という意味。
これはピエモンテのアニョロッティというパスタのランガ・アスティジャーナ地方のバリエーションです。
なので、アニョロッティ・デル・プリンと呼ぶのがより正確。
詳しい話は「総合解説」のアニョロッティの欄を見ていただければ分かります。
ラビオリとアニョロッティの違いなどについても書いてあります。
前回のブログの料理はローマ人が作ったので、ラビオリだったのですね。
それにしても、つまむと言う製法は、よくありそうで意外と独特なもの。
ラビオリとアニョロッティ・デル・プリンの違いは、深く考えたことなかったのですが、2枚の生地で具を挟んでカッターで切り分けたり型で抜いたりするのがラビオリの製法。
デル・プリンは上片はカッターで切って、左右は指でつまんで潰す、つまり、カッターで切った時より薄くなる訳です。

デル・プリン



ラビオリ



デル・プリンじゃないアニョロッティ



ラビオリとアニョロッティは同じものですよね。
ラビオリは上下の生地を接着して閉じます。
アニョロッティ・デル・プリンのほうが生地は薄いし、具は少量。
小型でぱくっと口に入りそう。

ちなみにアニョロッティの発祥地はモンフェッラート。
一説によるとアニョロッティという名前を付けたのはモンフェッラート公。
考案したのは彼の料理人、アンジェロット。



モンフェッラートの中心はアスティ。
アスティは美食の町。

締めはアニョロッティ・デル・プリンのセージバターがけ





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“ピエモンテ料理”リチェッタの日本語訳は「総合解説」2015年8月号に載っています。
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2017年12月22日金曜日

ローマの注目の若手シェフ

ローマの注目の若手シェフ、イル・ティーノのダニエレ・ウサイ氏と、オステリア・フェルナンダのダヴィデ・デル・ドスーカ氏のリチェッタの訳を「総合解説」にのせました。

まずはウザイシェフのパスタの動画をどうぞ。
麺は“手打ちのセモリナ粉と卵黄のラビオリ・デル・プリンのカルボナーラ詰め、ランゲのトリュフがけ”です。
 


シェフはローマの人ですが、ランゲのトリュフがテーマの動画なのでパスタはラビオリ・デル・プリンを選んだようですね。
ピエモンテの名物パスタにローマを代表するパスタソースを詰めるという楽しいアイデア。
パスタは00番275g、セモリナ粉25g、卵黄8個。
仕上げにピエモンテ人なら薄く削ったトリュフをかけますが、そこはローマ人のDNAに突き動かされたのか、ペコリーノのようにおろして散らすという手法。
主役はトリュフより具のカルボナーラ、つまりグアンチャーレと卵黄とペコリーノというわけです。

もう1品。平麺の手打ちパスタに黒トリュフ、そして生の卵黄のせ。
これもカルボナーラのバリエーション。
卵黄を崩してパスタにからめる食べ方です。




極太麺をソースでしっかりマンテカーレして、サービングフォークとレードルを使って巻いて縦長にこんもりと巣の形に盛り付けるというテクニックは、グランシェフたちのパスタを一段とエレガントに見せる盛り付けとして度々取り上げています。

今回訳した二人のシェフも、この盛り付け方で、ウサイシェフは生ガンベロ・ロッソのクネル、デル・ドゥーカシェフはスカンピのクネルをのせています。

デル・ドゥーカシェフとオステリア・フェルナンダ
 ↓


彼もパスタは巣の形に盛り付けていますね。

「総合解説」て訳したパスタのリチェッタで使っているのは、ベネデット・カヴゥリエーリのパスタ。
初めて聞きました。
プーリアのパスタメーカーなんですね。

アイモ・エ・ナディアのリチェッタ





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“ローマの注目の若手シェフ”の記事の日本語訳は「総合解説」2015年8月号に載っています。
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2017年12月20日水曜日

アリッチャのポルケッタ

ポルケッタは、発祥地の候補地がイタリア中部全域に広がっていて、どの地方の料理と言い切れない料理です。
おそらく、初めて食べた場所を発祥地と信じるケースが多いでしょう。
私は多分、ローマに来た時に食べた、ガイドブックに載っていたお勧めの店のポルケッタが初ポルケッタだったと思います。
当然しばらくはラツィオ料理だと思っていましたが、その後ペルージャ在住の人に勧められて食べた市場のポルケッタが、まったく別ものと思えるくらい美味しくて、それ以来、ウンブリア料理と思うようになりました。
ぺルージャのアンティカ・サルメリア・グラニエリ・アマートのポルケッタ。
 ↓
Porchetta

1001スペチャリタ』によると。ポルケッタはウンブリア、ラツィオ、マルケ、アブルッツォといったイタリア中部に古くからある料理ですが、マルケでも州の名物食材の1つと見なされています。
豚の飼育はすでに古代ローマ時代には各地で行われていました。
ポルケッタ作りはロマーニャ地方やヴェネトにも広まっています。
特に収穫祭には必ず登場するお祭りの料理として、イタリア中に広まりました。
言い換えれば、イタリアを代表するストリートフードの一つです。

Porchetta


ラツィオのカステロツリ・ロマーニ地区には、古代ローマ以来のポルケッタ作りの伝統を受け継いでいる町があります。
アリッチャという町です。

アリッチャのポルケッタはIGP製品。
イタリアが誇るメイド・イン・イタリーの食材です。



ジューシーな肉とパリパリの皮。
この店はフェンネルシードではなくもっと高価なフェンネルの花を使っているのが自慢。
アリッチャでは、1950年以降、毎年9月に、有名なポルケッタの収穫祭が行われています。



ポルケッタのパニーノをバルコニーからまくんかい!!
超絶楽しそう!!
アリッチャのポルケッタは脂肪が少なく風味がよいメス豚だけを使用し、昔ながらの製法で職人のポルケッターロが作ります。
さらにこの地方のポルケッタのパニーノの大きな魅力の一つが、パンの美味しさ。
以前にこのブログで、確かブルスケッタに最適のパンとして紹介したと思うのですが、ジェンザーノかラリアーノのパーネ・カゼレッチョ。
これに挟んで食べれば最高!!

カステッリ・ロマーニは、フラスカーティもあるし、ローマから近いし、ワインは美味しいし、フラスケッタ(オステリア)もあるし、ポルケッタを食べに訪れてみるのも楽しそう。

アリッチャのフラスケッタ





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“アリッチャのポルケッタ”の記事の日本語訳は、「総合解説」2015年8月号に載っています。
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2017年12月18日月曜日

ピッツァ・マルゲリータが広めたトマト栽培


今月の「総合解説」は8月号です。
イタリアの料理の分野の8月の話題は、何と言ってもトマト。
毎年夏になると必ずトマトが話題の記事が登場します。
もうそろそろネタ切れか、とも思うのですが、なんと今年の8月号にも初めて聞く話題が・・・。
「食物の歴史の中でトマトの発見はフランス革命に匹敵する」と信じているイタリアの人々。
そもそも、トマトはいつどこで発見されて、いつイタリアに伝わったのか、
こんな入門編の質問ですが、最近、すごく気になるのが、時代交渉がされていないドラマの食事風景。
中世ヨーロッパが舞台の話で(日本のドラマで中世ヨーロッパが舞台の話なんてないけど、アニメのファンタジーの世界は、この時代がよく舞台になりますよね。
そもそも妄想の世界なんだから、時代考証なんかまったく必要ないのですが)、真っ赤なソースをかけた料理が画面に1秒映っただけで、この時代にトマトはまだヨーロッパにはないでしょと指摘したくてたまらなくなるのは職業病です。
でも、日本のアニメが世界中に広まっている昨今、同じシーンを見て同じことを考えるナポリっ子は、少なくないはず。
とにかく、トマトがヨーロッパに広まってヨーロッパの料理が赤くなったのは意外と最近。

ヨーロッパに伝わったトマト
 ↓


2015年の『サーレ・エ・ぺぺ』の8月号のトマトの記事は、いきなりこんな文章から始まります。

「今から5世紀前、メキシコのティノチティトランの市場で、ベルナルディーノ・デ・サグアンという修道士が、トマトの味見をした。

なんのこっちゃと思いましたが、一応、この修道士のことをwikiで調べると、メキシコに派遣されたスペイン人修道士で、現地の歴史や習慣をまとめた百科全書的な本を書いたことで知られている人でした。
トマトを初めて食べた時のことも書かれているそうです。

ナポリの言葉でトマト料理のリチェッタが書かれるようになったのは18世紀末のこと。
毒があると信じられて南米の原住民でさえ食べていなかったトマトが、どうやって食用になったのかははっきりとはわかっていませんが、
少なくとも南イタリアでは、度々飢饉に襲われたナポリの貧しい民衆が、必要にせまられて食べるようになったのがきっかけではないかと考えられています。
アメリカではリンカーンをトマトで暗殺しようとしたなんて噂まであります。
ちなみにリンカーンが大統領になったのは、1861年、暗殺されたのは1865年のことです。

イタリアではトマトの栽培が南イタリアに広まり、19世紀末にチリオによって缶詰が製造されるようになると北イタリアにもトマト料理が広まりました。
そこにさらに強力なきっかけとなったのが、マルゲリータ王妃がピッツァを食べたいと所望して作り出されたピッツァ・マルゲリータです。
どこの国でも愛される王族は社会現象を巻き起こします。
王妃の好物がピッツァだなんて、当時のピッツァ業界は狂喜乱舞したでしょうね。
イタリアでは、このピッツァがきっかけでトマトの栽培がポー河流域やリグーリアにも広まっていったのだそうです。
ちなみにピッツァ・マルゲリータが誕生したのは1898年のこと。

マルゲリータ王妃
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ピッツァ・マルゲリータ
 ↓






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“トマト”の記事の日本語訳は「総合解説」2015年8月号に載っています。
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2017年12月15日金曜日

最新の地方料理のヒット、ボンベッテ

今月の地方料理はプーリアの“bombette”です。
ボンベッテ?
ミニ爆弾?
聞いたことないなあ、と思ってプーリア料理の本を調べてみましたが、どこにも載っていません。
『サーレ・エ・ペペ』の記事によると、ストリートフードから生まれた肉屋の惣菜らしいので、ストリートフードを調べてみたら、『ストリート・フード・アッラ・イタリアーナ』にとても面白い話が載っていました。


多分、プーリアに住んでいる皆さま以外は、見たことも聞いたこともないイタリア料理だと思いますが、そもそも、プーリアのイトリアの谷(アルベロベッロ近くのロコロトンドやマルティーナ・フランカあたり)などにあった伝統、肉屋が店の横に厨房を作って、そこで肉を調理して売っていたという習慣がベースになっています。

イトリアの谷
 ↓


この地方の店内で肉を焼いて売っている肉屋、fornello pronto
 ↓


40年ほど前、マルティーナ・フランカのある肉屋が、炭焼き総菜の中に“ボンベッテ”というメニューを加えました。これが始まりです。

ボンベッテ
 ↓


豚の肩ロースでカネストラートなどの地元の食材を包んで串焼きにしたものです。
この料理がスローフードのイトリアの谷担当者の目に留まり、大々的なプロモーション活動が始まったのです。
それは、スローフードが参加する食のイベントの場で披露する、というものでした。
こうしてマルティーナ・フランカのお肉屋さんのメニューは、たちまち全国区になり、国際的になったのでした。
そして今ではプーリアの地方料理として認知されつつあります。
なんとも現代的な地方料理の誕生物語ですね。

現代のヒット商品は、すぐにコピーが出回ってえげつないことになりますが、この料理は珍ししくルーツがはっきりしています。
この料理を広めるのに貢献した人々。
 ↓




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“ボンベッテ”の記事の日本語訳は「総合解説」2015年8月号に載っています。
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2017年12月13日水曜日

南の高級きのこからハイジまで

今月の「総合解説」の食材は、8月に旬を迎えるイタリアの食材。
え、今12月?
まあ、毎年夏は必ずやってくるって。

というわけで、8月が旬のイタリアの食材ってなんでしょう。
珍しいところでは、オーヴォロ・ブオノovolo buono。
和名はセイヨウタマゴダケ。



ほんとに卵にそっくりですねー。
ポルチーニより珍重されている天然物のきのこ。
きのこにしては珍しく、中部~南部の森に育ちます。
トリュフより貴重かも。
日本では育たないらしいですが、そっくりのタマゴダケモドキという毒キノコもあるそうなので、採取には十分注意が必要。
上質な味で、生で食べるのが主流。

つぎはイワナ、サルメリーノ il salmerino。



名前はよく聞きますが、その実態は川魚ということぐらいしか知らない。

次はフォンティーナ。



ご存じ、ヴァッレ・ダオスタの名物チーズ。
この地方(アルプス)では8月は、山小屋のチーズ屋が営業を開始する季節。


フォンティーナと言えば、フォンドゥータ。



ハイジの世界はスイスが舞台だけど、フォンティーナの産地はそこと隣接している地方です。
実写版映画『ハイジ』
どのシーンも素敵・・・。



イタリア語版もありました。





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“8月の食材”の日本語訳は、「総合解説」2015年8月号に載っています。
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2017年12月11日月曜日

ピエモンテの平野

“グランデ・クチーナ・レジョナーレ・イタリアーナ”シリーズ

ピエモンテ』


の翻訳、ピエモンテの地形のバリエーションとその特徴について。
その3。

“その先に広がる平野”

ピエモンテの東は、ロンバルディアへと続く平野が広がっている。
歴史的に、ノヴァーラからマッジョーレ湖までは、長い間ミラノ公国の一部でロンバルディアだった。
マッジョーレ湖では、右岸も左岸も魚は同じリチェッタで調理した。
ノヴァーラ、ヴェルチェッリ、ロメッリーナの米作地域は
ロンバルディアとピエモンテの間で長年に渡って何度も所有権が移り変わり、その結果、米やカエルやガチョウがベースのこの地方の料理の味は均一化された。
長期間にわたって異なる文化が出会い、遠くの世界からやってきた豊かで様々な伝統が一点に集中した結果、とても個性的な食文化が生まれた。
ピエモンテ料理はとても優美でありながら、その魂は農民の暮らしに根を張った、強い味と本物の食材の料理なのだ。

ピエモンテの43%は標高600m以上の山で、そこでは放牧が広まった。
ふもとの丘陵地帯と平野では、市場のニーズに答えるために革新的な技術を取り入れて、土地の個性を活かした農業が発展した。
ランゲ、ロエーロ、モンフェッラートといったワイン王国や、果物のサルッツォ、野菜のアレッサンドリア、平野では、ノヴァーラ、ヴェルチェッリ、アレッサンドリアの米。
オステリアや家庭で作られていた昔ながらの味や食材が、最新の農業と出会って現代の暮らしに取り込まれていきながら、地方ごとの個性的な料理や使用方法が生まれていく、そうして作り上げられたのがバラエティ豊かなピエモンテ料理なのだった。
(終)


なるほど、様々な地形や歴史的要素から生み出されたピエモンテ料理は、その要素のどれも無視できない重要な要因となって出来上がっていました。
多民族の異文化を貪欲に吸収して出来上がった料理だったのでした。

『ピエモンテ』の解説はまだ続きますが、続きはまたの機会に。

海のない州のアンチョビ好きから始まった今回の話。
最後は、ノヴァーラに住むご隠居の話。
暇になると電話をかけてきて、何かいい話はないかと聞かれるので、からかい半分に、「そういえば、ピエモンテには海がないよねー」と言ったら、「マッジョーレ湖がある!!」と即座に反論されました。

あの細長ーい湖の左半分は、ピエモンテの人に取っては海なんですね。
失礼しました。





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グリバウドシリーズ『ピエモンテ』のリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2015年8月号に載っています。
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2017年12月8日金曜日

ピエモンテのアペニン山脈の向こう

“グランデ・クチーナ・レジョナーレ・イタリアーナ”シリーズ

ピエモンテ』


の翻訳、ピエモンテの地形のバリエーションとその特徴について。
続きです。

“アペニン山脈の向こう”

ピエモンテの南には、もう一つの山脈、アペニン山脈がある。
この山脈も州を分断するものではなく、ピエモンテとリグーリアの間の通路となっている。
遠い昔から、アペニン山脈の両斜面はつながっていた。
古代ローマ時代の区分のリグーリア地区には、現在のピエモンテがかなり含まれていた。
その住民は先住民のリグリア人だった。
当時の集落は中世にも受け継がれ、モンフェッラートの大公は、その支配権をポー河支流のタナロ川流域から海まで広げた。
19世紀にはサルデーニャ王国がその力をリグーリア、ピエモンテまで広げた。

この地域では物流を通して食文化も同じものが広まった。
アニョロッティ、チェーチの粉、豆のズッパ、にんにくと香草で料理に風味づけをするリチェッタなどは、その昔、ランゲ地方を横断していた塩の道を通って広まった。
この道を通ってリグーリアの商人は、塩だけでなく、オイルやアンチョビも運んだ。
バター、チーズ、小麦は物々交換用の商品だった。
これらはピエモンテを代表する名物料理、バーニャ・カウダの食材だ。
(続)

リグーリアとジェノヴァの間にあるアペニン山脈の夜明け。

Italy, Appennino Ligure Mts.


山脈を超えた先にあるのはリビエラの海。この町はポルトフィーノ。

Portofino, Liguria, Italia

山のふもとと言う名前のピエモンテ。
山は向こう側とピエモンテを隔てる壁ではなく、フランスや地中海への門でした。
海のない州ピエモンテで、アンチョビがこんなに愛された理由が少し分かったかも。


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2017年12月6日水曜日

ピエモンテとアルプスの向こう

ピエモンテ料理の話をしていますが、ピエモンテ料理はバリエーションが豊かなのが特徴の一つ。
ピエモンテでバリ―ション豊かなのは地理もです。
各州の料理の特徴を、とても的確に分析しているのが、グリバウド社の地方料理シリーズ、ラ・グランデ・クチーナ・レジョナーレ・イタリアーナ”シリーズです。

イタリア人向けの地方料理の解説なので、かなり深くて、その一方で、このシリーズの特徴である読みやすくて分かりやすい精神が貫かれていて、外国人には目からうろこの視点で地方料理を分かりやすくとらえているの本です。
本気でイタリア料理を造っている外国人にはぴったりの本です。

リチェッタは読みやすいし「総合解説」に日本語訳もたくさん載せているのですが、州の歴史や地理、文化の解説は、機会があれば訳してきました。
今回は、ちょうどこのピモンテの本が再入荷したので、地形について説明している部分を訳してみます。


まずはピエモンテの地形をざっと説明した動画をどうぞ。



ざっとどころか、すごく学術的なピエモンテの地理の解説でビックリ!
地理が絶望的に苦手だった私に言えるのは、ピエモンテの歴史は地理の歴史と結びついています、と言いながら、いきなり、2憶年前の話から始まった、ということ。
しかも当時は海によって陸が北と南に分かれていました。
沿岸には火山があって、どうやらこれがピエモンテの土壌の基礎なっています。
1憶3千万年前に、南北が接近して押し合い、押し上げられた土壌が垂直に切り立って、山脈になり、丘陵ができ、という訳です。
1億年前に地殻変動は落ち着いたかに見えた・・・、あたりでもうほぼ限界。
その後の氷河期だかの話は、記憶にない・・・。
料理の話に戻ります。
最初の章は、文字通り訳すとアルプスの向こう、という意味ですが、これはつまり、フランスの別名です。

“アルプスの向こう”
アルプス山脈を通って、何世紀にも渡って人間や商品、文化や思想が行き来してきた。
この山脈は障壁ではなく、歴史的なある地域への門だった。
サヴォイアだ。

紀元1000年頃にはすでにアイデンティティーが出来上がっていたフランスとイタリアにまたがるこの国は、16世紀末になって首都をシャンベリからトリノに移し、ピエモンテ一帯に勢力を広げていく。
この地域の大部分の伝統は、今でもフランスとの結びつきを感じさせる。
ピエモンテは他の州と比べてもフランスとの共通点を強く感じる。
前菜の豊富さは、フランス人のアントレ好きと通じる。
パスタは比較的限られている。
ピエモンテではソースを芸術にまで高めるほど情熱を抱いている。
料理用語も、フュメ、シヴェ、ココット、ボネなど、フランス語がピエモンテなまりになったものが多い。
(続)

アルプスのこっち側、フランスのシャンベリはサヴォワ県の県都。






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2017年12月4日月曜日

バーニャ・カウダとアルゼンチン

もうすぐ発売の「総合解説」の書籍の翻訳は、ピエモンテ料理です。
うんちくの宝庫『1001スペチャリタ・デッラ・クチーナ・イタリアーナ

からは、色んな面白いうんちくを訳しました。

オステリエ・ディ・イタリア新版


からは、スローフード発祥の店、ボコンディヴィーノのリチェッタを訳しました。

まずは、『1001スペチャリタ』から、前回話題にしたバーニャ・カウダのおまけ。
この料理はイタリア移民によって南米に伝えられて、ある国で大ヒットしました。

その移民と言うのが、ちょっと意外なことに、ピエモンテからの移民だったんです。
移民と言えば南伊の現象という先入観持ってましたが、北伊の人も、海を渡っていたんですね。

で、移民した国はアルゼンチンです。
サッカーは全然詳しくないのですが、メッシの名前はさすがに聞いたことありました。
この人、イタリア系アルゼンチン人だったんですね。





毎年7月に開催されるアルゼンチンのバーニャ・カウダ祭りは大きなお祭り。
アルゼンチン人、楽しいです。

パニッシャというリゾットのうんちくは、初めて聞きました。
パニッシャがノヴァーラの名物リゾットで、いつかノヴァーラで食べようと思っているのなら、知っておいた方がいいかも。
 ↓
Paniscia alla novarese

Taverna "Come una volta" a Vercelli

1つ上の写真のリゾットはパニッシャpanisciaで、下のリゾットはパニッサpanissaです。
私、正直言って、ちょっとなまった程度で、2つの料理は同じものだと思っていました。
ところが、この2つは作る場所も、材料も違う、別の料理だったのです。
パニッシャはノヴァーラの料理、パニッサはヴェルチェッリの料理です。
パニッシャには豆、トマト、キャベツ、サラミなど、色々な材料が入りますが、パニッサは豆と米がベースのシンプルなリゾット。
ノヴァーラでパニッシャ食べようとしてパニッサくださいと言わないようにね。

ところで、ボッコンディヴィーノのリチェッタは、ピエモンテ料理はacciugheから始まる法則の通り、アンチョビのヴァニェット・ロッソが1品目でした。
フランス系イタリア料理として紹介したフランもありました。
トピナンブールのフランでした。

これはボッコンディヴィーノのトリッパのポレンタ添え
 ↓
Osteria Boccondivino, Bra, Italy


ボッコンディヴィーノはスローフード運動発祥の店で、新しいタイプのオステリアの理想的姿と言われる店。
店のwebページはこちら



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2017年11月30日木曜日

ピエモンテのフランス系イタリア料理


クレアパッソのホームページと連動して、ピエモンテ料理の話題が続いていますが、一番最初に感じたのは、塩漬けアンチョビの重要さ。
ピエモンテへのアンチョビの供給源はリグーリアとフランスのプロヴァンス地方でした。
ピエモンテの商人は昔から財力があったようで、外国の食材も豊富に入ってきていたのですね。
ちなみに、本によっては、スぺイン産のある品種のアンチョビが一番、とか書いてあります。
ピエモンテの人、アンチョビにはかなりこだわりがありそう。

リグーリアの昔ながらの手作り塩漬けアンチョビ
 ↓



アンチョビを使う代表的ピエモンテ料理、バーニャ・カウダ。
 ↓


この料理の名前は熱いソースと言う意味(諸説あり)のフランス語で、ピエモンテ料理がフランスの影響を受けたフランス系イタリア料理ということを感じさせます。
さらに、1001スペチャリタ・デッラ・クチーナ・イタリアーナ』によれば、

この料理は、畑の野菜を手づかみでにんにくたっぷりのソースに浸して大勢で食べる農民料理で、サヴォイア家の宮殿の貴族たちには敬遠されたんだそうです。
名前はフランス語でも魂は強烈なイタリア料理。
それにしてもピエモンテ料理はフランス料理の影響が強いですね。

そんな料理の一つがフラン。
代表的なのはズッキーニのフラン。




どこから見ても貴族様が好きそうな上品な1品。
フランの調理方法はイタリアの農民も大好きで、ピエモンテ中に広まりました。


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2017年11月27日月曜日

アンチョビ・アル・ヴェルデ

今、「総合解説」のためにピエモンテ料理のリチェッタを訳しています。
そのために、ピエモンテ料理の本を何冊か読みました。
そしてあることに気が付きました。
だいたい料理書に載る料理は、アルファベット順で、分類は前菜からです。
なので、どの本もaから始まるある前菜が最初の1品となります。
この料理が、見事に、面白いくらいどの本も一緒なんです。
もしピエモンテ料理の本がお手元にあったら、ちょっと見てみてください。
それは多分、acciughe al verdeですよ。
 ↓
Acciughe al Verde

ピエモンテと言えば、山のふもとという言葉がその名の由来になっているわけで、アルプスとアペニン山脈に囲まれています。南はポー河流域の平野、北にはマッジョーレ湖があります。
ランゲ地方など、ワインの産地として有名なのは丘陵地、州都のトリノはイタリアとフランスの結びつきの中心となった国際都市。米の栽培量はヨーロッパ一。
とまあ、なんでもある州なんです。
ところが、そんなピエモンテにも唯一、ないものがありました。
海です。
そうなんです。
ピエモンテには海がないんです。
そんなピエモンテの料理の本が、アンチョビのヴェルデソースから始まる、というのは意味深ですね。
このアンチョビは生ではなく塩漬けです。
山を挟んでお隣のリグーリアから届きます。
リグーリアのアンチョビで思い出すのが、チンクエテッレのモンテロッソ。
チンクエテッレは海が荒れやすく、海への道路も不便で、皮肉なことに、魚は地元の町にはあまり行き渡っていないのでした。
そんな中で、モンテロッソのアンチョビだけは、産卵のために海面下に群れを成して現れるので採りやすく、塩漬けアンチョビは地元の名物として知られるようになったのでした。
リグーリアからの行商人が売り歩いたりや南ピエモンテの商人がフランスの沿岸地方から仕入れたアンチョビは、ピモンテの名物前菜になるほど広まりました。
海のないピエモンテでアンチョビを食べたいと思う観光客はあまりいないかもしれませんが、この料理のもう一つのポイントはヴァニェット・ヴェルデと呼ばれるグリーンソース。
イタリアンパセリのソースですが、ピエモンテ名物の肉料理、ボッリート・ミストに欠かせない肉用のソースにもなります。







このアンチョビ料理に合うワインはガヴィかグリニョリーノだそうです。



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2017年11月23日木曜日

『カッチャジョーネ』

寒くなってきました。
ジビエの季節になると思い出すのが、『cacciagione』という本。



イグレス・コレッリシェフなどが料理を作った力作です。

イグレス・コレッリシェフ
 ↓


ちょっと専門的すぎるかなと思って、問い合わせがあった時にだけ案内していたのですが、出版元で品切れになっているのに気が付きました。
今あるのが数少ない貴重な在庫です。

この本の料理は貴重なジビエを使った高貴な料理ばかり。
硬いものを噛まなくなり、甘くて弱い味を好むようになった現代人の食卓から、ジビエは姿を消しつつあります。
イタリアも例外ではありません。
入手方法も処理も難しいジビエは、料理人も敬遠しがち。
でも、だからこそなのか、この本の料理はどれも本物に見えます。
一流の料理人の究極の料理は、ジビエなのかもしれません。

池、草原、森、丘陵、山と、生息地ごとに種類の豊富なジビエを最適な食材との組み合わせで料理した本です。

ジビエの一般的で伝統的な調理方法は、
・ブラザート(まず肉を焼いてからブロードやワインなど少量の水分を加えて蓋をしてじっくり煮る)
・ストゥファート(水分を加えないかごく少量しか加えないブラザート。食材を自らの水分で煮る)
・ウミドまたはストラコット(最初に焼かないプラザ―ト)
・シヴェ(仕上げに動物の血を加えるブラザート)
・サルミ(仕上げに煮汁を裏漉しして濃いソースにいる)
・フリカッセア(卵とレモン汁を攪拌して仕上げに加えたブラザートかスゥファート)
・アッロスト(フライパンやオーブン、炭火で焼く。中はジューシーに、表面はこんがり焼き色をつけてカリッと焼く。経験だけでなく針を使ったりして内部の温度を測る。“アル・ブルーal blu”は、肉の中央部分の温度は65℃以下。肉は柔らかい。“アル・サングエal ssangue” は68~70℃。肉は押すと柔らかい。78℃前後だと中はピンク色。押すと弾力がある。85℃以上はベン・コッタben cotta。触ると固い。)

と説明されています。

ホームページにリチェッタの翻訳のページを新しく作りました。
なるべく多くの本のリチェッタを訳していくつもりです。
リクエストもお待ちしてます。


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カッチャジョーネ
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2017年11月20日月曜日

ローマでイタリア中のストリートフードを食べ歩くガイドブックに最適の本

新着書籍『パオロ・リッツォのSTREET FOOD』の紹介です。


『STREET FOOD』の本は、『STREET FOOD all'italiana』というなかなかいい本が既にありますが、


同じタイトルでもかなり違う本です。
まず、何と言っても、著者のパオロ・リッツォ氏は、新聞などで活躍するカメラマンです。
なので、料理のうんちくなどには興味なし、すべては写真で語っています。
プロのカメラマンというのは、写真から言いたいことが伝わるような写真を撮るのですね。
バッカラのフライなんて、どこの事件現場かと思うような臨場感。
中でも一番食べてみたい!!と思ったのは、“ピッツァのパストラミ・ホットサンド”。
こんなホットサンドです。

ピッツァビアンカを鉄板でカリッと焼いて2段に切り、片側に自家製マヨネーズ、もう一方に自家製マスタードを塗ります。
マヨネーズの上にレタスと薄く切ったトマト、きゅうりのピクルスをのせます。
その上に厚めにスライスしたパストラミをのせます。
ピッツァをかぶせて出来上がり。

ニューヨークのデリのメニューかとも思いますが、ローマのバール・デル・カップッチーノ・ディ・サントロ(via arenula,50 Roma)の1品です。

 

ピッツァ・ビアンカはローマのソウルフード。
ピッツァ・ビアンカでパストラミをサンドするという発想。
思いついた人、素晴らしい!!

本の表紙になっているパンにパンを挟んだみたいなサンドイッチは、シチリア名物のパーネ・エ・パネッレ。



具はチェーチの粉の生地を揚げたもの。
表紙の1品を作ったのは、ローマにあるモンド・アランチーナというシチリア料理の惣菜店。
webページはこちら



著者はローマ生まれなのでした。
取材した店もほぼ全てローマ。

ローマで美味しいストリートフードの食べ歩きをしたい人必携のガイドブックと言える1冊です。


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パオロ・リッツォのストリートフード
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2017年11月16日木曜日

カンピダーノ風マッロレッドゥス

クレアパッソのホームページで、このところ2005年11月号の「総合解説」の記事を紹介しています。
12年前の記事ですが、11月号は豚肉料理のオンパレードでした。
その中で、サルシッチャのラグーのパスタのリチェッタには、こんな解説文が。

「簡単にできるサルシッチャのラグーはマッロレッドゥスの定番サルサ。
オリスターノでは炒ったフェンネルシード入りのサルシッチャで独特の香りのラグーを作る。」

まず、簡単だと言うサルシッチャのラグーのパスタの作り方。

作り方は、
1.トマトは皮と種を取って刻む。サルシッチャは皮をむいて小さく切る。
2.玉ねぎのみじん切りを油でソッフリットにし、サルシッチャを加えて崩しながら炒める。トマト、サフラン、塩、こしょうを加え、湯少々をかけながら40分煮る。火から下ろしてちぎったバジリコを加える。
3.パスタをアルデンテにゆでてラグーとたっぷりのペコリーノであえる。

確かに、手間と時間のかかるラグーにしては簡単。

マッロレッドゥス・アッラ・カンピダネーゼ
 ↓


マッロレッドゥスについては、以前のブログをご覧ください。
カンピダーノの方言で子牛はmalloru。
malloreddusは、小さな子牛という意味の、硬質小麦粉とサフランの筋付きニョッケッティ。

このパスタは、サルシッチャのラグーの典型的な料理。

カンピダーノの羊飼い
 ↓


20匹の羊を飼って生活している。

サフランの収穫



サルデーニャにサフランが伝わったのはフェニキア人の時代。
古くから栽培されてきた。
現在では島の農民と羊飼い文化の伝統の象徴となっている。
収穫と加工はても難しく、素人が簡単にできるものではない。
イタリア産サフランの66%はサルデーニャ産。
そのうち86%がメディオ・カンピダーノ産。

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2017年11月13日月曜日

イタリアの輸出を牽引するのは食品とワイン

総合解説」7月号を発売しました。
今月紹介しているシェフは、アントニア・クルグマンシェフです。




女性シェフが少ない創作料理の道をただ一人で突き進む、知的で勇敢なシェフ、と評判のようですが、訳す方は超大変でした。
食材のこだわりが凄いというか、聞いたこともない食材ばかり使う人です。
頭の良さはストレートに伝わってきましたよ。
ただ、知らない食材の組み合わせなので味のイメージがつかみにくく、どんな味なのか、食べた人に感想を聞きたくなります。

もう一つ、興味深かった記事は、ガンベロ・ロッソがミラノ万博をきっかけに、外国のインポーターを意識して作ったガイドブック『トップ・イタリアンフード&ビバレッジ』。



日本でもプロモーション活動をやっているようですが、イタリア食材の一番の得意先はドイツなんですね。
でも、インパクトが大きかったのは、2014年、フランスやイタリアを抜いて世界一のワイン消費国になったアメリカへのワインの輸出量が1位の国は、イタリアという事実。ちなみに2位はオ―ストラリア。
アメリカ人に人気なのは、キアンティとブルネッロ・ディ・モンタルチーノ、バローロ、ピノ・ビアンコ、プロセッコなんだそうです。
アメリカへの輸出は着実に増えていますが、食品とワインの輸出量全体も増えているようです。
ちなみに、輸出量の伸びが一番多いのは断トツでやっぱり中国でした。

これは2015年の記事なので、アメリカの新しい大統領やイギリスのEU離脱など、反グローバリゼーションの動きはどう影響してくるのか、今後も気になります。


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“アントニア・クルグマン”、“イタリア産食品の輸出事情”の記事は「総合解説」2015年7月号に載っています。
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2017年11月9日木曜日

冬のイタリア料理


立冬を過ぎて、北風が枯葉を飛ばして落ち葉掃除が大変な季節になりました。
季節の変わり目に必ず読みたくなる本が、カルロ・カンビの本、『ミリオーリ・リチェッテ・デッラ・クチーナ・レジョナーレ・イタリアーナ』です。

地方料理を季節ごとにまとめた面白い本。
さて、冬はどんな料理があるかな~。

まず最初に、イタリアの冬の料理についてまとめているのですが、それを読んで感じるのは、イタリアも日本も同じだね、ということ。
まず、冬のメインイベントはクリスマスと新年。
それと冬の間は不足しがちな栄養、カロリーやビタミンCをしっかり摂れる料理が大切。
暖かいスープ。
イタリアならではだなあと思うのは、トルテッリーニへのこだわり。
旬の野菜はラディッキオ、ビエトラ、キャベツ、トリュフ、ヘーゼルナッツやクルミ、オレンジやミカンなどの柑橘類など。
チーズは高原の草を食べた牛の最後のミルクから作って熟成させた香り高いもの
肉は一年中あるサルミとは違ってこの時期に出回るフレッシュな豚肉やサルシッチャ。
魚はバッカラ、ストッカフィッソ、ウナギ。

そんなことをふまえて、
前菜はレバーのクロスティーニ、オレンジのサラダ(シチリア)、野ウサギのパテ(黒トリュフ入り)、ファッロのケーキ(ファッロは鉄分を多く含む)、
プリーモは、カッペッレッティ・イン・ブロード(代表的クリスマス料理)、パッサテッリ・イン・ブロード(ロマーニャ地方の冬の料理)、サルシッチャと黒キャベツのピチ、ポレンタ、リボッリータ、リゾット・アッラ・ミラネーゼ、タリアテッレ・アッラ・ボロニェーゼ、
セコンドは鴨のオレンジ風味、バーニャ・カウダ、ボッリート・ミスト、赤ワインのブラザート、ピエモンテ風フリット・ミスト、
ドルチェはボネ、カッサータ、
取りあえず、ごく一部ですが、こんなところです。

オレンジのサラダ



パッサテッリ・イン・ブロード



ブラザート



ボネ




ピエモンテ料理の季節が到来です。



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2017年11月6日月曜日

アッバッキオ・アッラ・カッチャトーラ


このところ、シチリア料理を訳していました。
そこで改めて認識したのが、シチリアには肉がベースの伝統料理が少ない、ということ。
特に、土地は耕して畑にすることが多かったシチリアでは、牧草地にして牛や羊を放牧する、ということをしなかったため羊飼いの文化が育たなかったのでした。
羊飼いの飼育方法は、夏は山の高地に移動して、秋になると、平野に下りてくる移牧。
戻ってくる時期は地方によってさまざまなようですが、11月半ばという地方もあります。
そろそろですかね。



こんなに可愛い羊や牛や牧羊犬が行列してたら、見物しに行きたくなるなー。

この時期の料理の一つが、ローマのアッバッキオ・アッラ・カッチャトーラ。
アッバッキオは2か月齢以下の羊で、体重は8~10㎏。
たった2ヶ月で、悲しい運命ですね、くすん。
時間が経つと臭みが出るので、旬の時期だけ作る料理でした。
今ではローマの名物料理として広まっています。
アッバッキオのローマ風とも言います。
いつものにんにくとローズマリーにアンチョビを加えて、別物のように美味しくした1品。



アッバッキオ・ロマーノのPV
 ↓


アッバッキオの数が減っている現状では、普通の子羊肉を使ったアニェッロ・アッラ・ロマーナのほうが一般的かも。


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2017年11月2日木曜日

ヴォギエーラのにんにく

今日はにんにくの話。
 近所のスーパーではスペイン産にんにくを山のように売っていますが、 イタリアにも、外国で知名度の高いにんにくがありました。
まだ日本でお目にかかったことはないですが。
ヴォギエーラのにんにくです。

aglio e peperoncini


見た目は、普通のにんにくとなんの変わりもないように見えますが、特徴はその、甘くてデリケートな味なんだそうです。
管理組合ではジェンティーレなにんにくと表現しています。
直訳すれば、優しいにんにく。

産地はフェッラーラの近くのヴォギエーラという町。
粘土質の土壌、穏やかで乾燥した気候のパダナ平野で栽培されるこのにんにくの収穫は、
6月初めから7月末。
収穫したら葉鞘を三つ編みにします。
収穫祭も行われます。
この直後はフレスコのにんにくが出回ります。
それ以降はセミ・セッコかセッコ。



このにんにくを浸して香りをつけたワインやスパイスを使った地元の名物サラミは、ツィーア・フェッラレーゼ。
アーリオ・オーリオにもこのにんにくが欠かせません。

ツィーア・フェッラレーゼ
 ↓


分厚い腸に詰めるんですね。
通は、この脂が好きなんです。




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“ヴォギエーラのにんにく”の記事の日本語訳は「総合解説」2015年6月号に載っています。
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2017年10月30日月曜日

エンツォ・コッチャのピッツァ

このブログは、販売中の最新の「総合解説」の解説が中心ですが、最近、15年前の「総合解説」の面白い記事を見つけたので、それをクレアパッソのホームページに載せています。
ローマのトラットリアを紹介しながら庶民的なローマ料理も紹介するという記事で、ローマに行く予定がある人には、とても役に立つのでは。
ローマの内臓料理の15年前の状況という、懐かしい話題もあります。

今年から、「総合解説」では地方料理の本のリチェッタを訳して載せています。
最初に取り上げたのは、ラツィオ料理、そして次は、カンパーニア。
カンパーニア料理は訳していて楽しい料理ばかりで、2ヵ月程度で訳す予定だったのに、結局、4か月かけました。
そして最後の4ヵ月目に取り上げたのが、ピッツァです。
詳しく言えば、アルバ・ペゾーネの本、『ピッツァ』です。

この本は、エンツォとチーロ・コッチャ兄弟のリチェッタを詳細に取り上げていますので、訳もこの二人のピッツァを集中的に訳しました。
その中で一つ気になっていたのが、ピッツァ生地の伸ばし方。
これは言葉で説明するよりも、動画を見る方がイメージが伝わりやすいです。



ピッツァ大使と呼ばれているだけあって、外国人にピッツァの作り方を教えるのはお手の物のよう。
イタリアの人はピッツァイオ―ロでなくてもピッツァの端の膨らみにとてもこだわりますよね。
彼の技は、言葉では説明しにくいけれど、生地は端が見事に膨らんでいますね。

解説にも載せましたが、材料の水の説明に、“10~14℃のナポリの水”、とありました。
ここまで詳しい説明は見たことがありません。
きっと世界中で質問されてきたのでしょう。
他の説明もとても詳細です。
マルゲリータの旬の季節とか、マルゲリータのバリエーションとか、発想が新鮮でした。
彼のマルゲリータはイタリアでも有名ですが、その特徴は、カチヨカヴァッロ・ポドリコだそうですよ。
他の店とは違う地元の上質のチーズを使っているようなので、ナポリに行ったら、彼のマルゲリータをぜひご賞味ください。

ラ・ノティッツィア
 ↓



彼のピッツァの中で興味深かったのは、クラッチャという、クラテッロに似た生ハムが度々使われていること。
サルミフィーチョ・ロッシの製品で、詳細はこちら
パルマの製品ですが、かなりお気に入りのよう。
イタリア中の食材を吟味しているんですね。


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“アルバ・ペゾーネの『ピッツァ』”の訳は「総合解説」2015年6月号に載っています。
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2017年10月26日木曜日

ジョルジョーネ『レ・オリジニ』

今月の「総合解説」は、チッチョ・スルタノシェフと、もう一人シェフのリチェッタを載せています。
その人は、ジョルジョーネさん。

以前このブログでも取り上げたことがあります。こちら

1冊目の料理本が売れて、2冊目を出したようです。
そのリチェッタを数点載せました。
記事の中で一番印象に残った言葉は、
「自分は料理人chefと言うより亭主osteだ」
という言葉。

天然で単純と自らを分析するジョルジョーネさんは、1冊めの本の表紙と全く同じ赤いラコステのポロシャツと特大のジーンズのオーバーオールという姿で『ガンベロ・ロッソ』の表紙を飾っていました。


















1品めの料理は、“水牛のサルティンボッカ”。
リチェッタの出だしから、
「水牛の肉は低脂肪なので太る心配はない」
やっぱり気にしてたんですね。
でも、気が大きくなったのか、水牛の肉の上にはどーんと太っ腹に、チンタ・セネーゼのラルドをのせています。
しかも、大変お気に入りのようで、このラルドは絶品だから、半分に切って1枚は肉の下に敷き、もう1枚は肉の上にのせて、ラルドでサンドイッチにするんだ、カロリーが気になったら1枚だけでもいいけど、私は2枚使うね。
とにかくこのラルドはうまいんだ。

と、強烈にチンタ・セネーゼのラルド推し。

車エビのラルド巻き。
ラルドは背脂の塩漬けだから、これ使ってる時点で肉が低カロリーなんてむなしい響き。
 ↓



でも食いしん坊はサンドイッチにしちゃうんだね。

この料理で使う水牛は、ナポリではannutoloと呼ばれる1歳の水牛。
カンパーニアの肉とトスカーナのラルドで作るローマ料理。
ちなみに彼の店はウンブリアにあります。

2冊目の本のテーマは、シェフが子供時代を過ごした各地の料理。
たとえ水牛の肉もチンタ・セネーゼのラルドも手に入らないとしても、この自由な発想は誰でも取り入れられそう。

2冊目の本のお披露目。
相変わらず“優しい巨人”は人気者のようです。
 ↓


ポロシャツは紫色。
0:45あたりにちらっとサルティンボッカが写ってます。


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“ジョルジョーネ”の記事の日本語訳は、「総合解説」2015年6月号に載っています。
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2017年10月23日月曜日

チッチョ・スルタノシェフ

今日は・チッチョ・スルタノシェフ(シチリアのラグーザ・イブラのリスランテ・ドゥオモのシェフ)の話。

「総合解説」2015年6月号では、『ガンベロ・ロッソ』に載った彼のリチェッタを訳しています。
記事ではシェフのことを、「伝統料理の影響が強いディープなシチリア南部で創作料理を作るシェフ」と紹介しています。
すごく革新的な印象を受けますが、彼のリチェッタを見ると、確固たる伝統の上にアレンジを加えていて、地元の食材への神経質なまでのこだわり方などは、相当保守的です。
それでいて完成した料理は、文句なく革新的。
このタイプの料理を作るシチリア料理の巨匠的存在。



グランシェフのリチェッタはどれもとても興味深いですが、今回のリチェッタでは、“tra la campagna e il mare/畑と海の間”と名付けられた料理、副題が“シチリア風スパゲッティ・アルティジャナーレ、アーリオ・オーリオのウニ風味、ワイルドアスパラガス添え”というのがとても面白かったです。

同じ料理ではないけれど、かなり似たリチェッタの“ウニとアスパラガスのスパゲッティ・アルティジャナーレ”
 ↓


スパゲッティ・アルティジャナーレという言い方は、グラニャーノのパスタに使われるのをよく目にしますが、これは完全に手打ちパスタ。
普通、手打ちパスタは自家製パスタと言ったりしますが、アルティジャナーレは、技術のある職人が作ったという意味の、手打ちパスタより1段上の印象。


スルタノシェフのスパゲッティは、普通のスパゲッティと同じように作りますが、粉はシチリア産のセナトーレ・カッペリのセモリナ粉を使用しています。
セナトーレ・カッペリはイタリアで生み出された世界中の硬質小麦のルーツで、かつてはイタリア中で栽培されていた硬質小麦。
薪で焼いたパンのような香りと、腰の強さが特徴で、高級パスタの材料でもあります。

このパスタをゆでてアーリオ・オーリオとウニ風味にするのですが、リチェッタを読むと、スモークオイルolio affumicatoというのも使っています。
燻製風味のオイルでしょうか。
初めて訳しました。

セナトーレ・カッペリのパスタは腰と風味が強いせいか、シンプルなアーリオ・オーリオにするケースが多いですよね。
アーリオ・オーリオは、シンプルでかつ、質素なイタリア料理の代表選手。
最上質の小麦粉を使って一流シェフが作る料理が、質素というのはなんとも皮肉ですが、スモークオイルであえたスパゲッティは、外見上は、お腹を空かせた息子のためにマンマが作るボリュームたっぷりでシンプルなアーリオ・オーリオそのもの。
ところが燻製の香りがするんですねー。
この時点でかなり食べてみたいです。
アスパラガスもかなり手をかけて濃厚なクリームにしてパスタの下に敷きます。

素朴と言えば、シチリア料理の代表的なプリーモ、イワシのパスタもこてこての伝統料理ですが、とてもモダンな1品に仕上がっています。
 ↓



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“チッチョ・スルタノ”シェフのリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2015年6月号に載っています。
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2017年10月19日木曜日

肉と年齢

今日はイタリア便りです。
Segnalibroさんは、今日も引っ越し先で新しいイタリアを見つけたようです。
日本の常識とは全然違う北イタリアの食生活。
それではどうぞ。

☆  ☆  ☆


山を下りて数カ月経ちました。
少しずつ新しい町にも慣れてきて、最近の楽しみは週に一度のメルカートです。
魚肉野菜、台所用品にお花にお洋服、ありとあらゆるものが売られていますが、ここの市場の片隅では、明らかにペットではない生きた動物達が売られていて、しかも普通に購入していく人達がいる事にとても驚きました。

mercato settimanale

購入された生体は、スーパーでもらうような段ボール箱に入れられ、カッターで箱に小窓を開けもらって、そのままお持ち帰りされます。
毎日のように食べるお肉なのに、自分で用意するのを想像するだけで怖くなる私は、購入者を尊敬のまなざしで見てしまいます。

この町のスーパーでは、お肉売り場も豪快なオープンキッチンです。

macelleria 1

SORANAという牛肉がたくさん売られているのですが、ソラーナって何?
肉売り場のおじさんに聞くと、出産を経験していない若いメス牛のことだと教えてくれました。
子牛Vitelloとか成牛Manzoとか、年齢によってお肉の呼び名が変わるけれど、それの一種?
そういえば、羊肉と言えばラムとマトンしか知らなかった私が、初めてニュージーランドに行った時、ラムとマトンの間にホゲットと呼ばれる年齢の羊肉があり、地元の人はラムよりホゲットを好む、と聞いたのを思い出しました。
調べてみると、イタリアでは、16~22か月の未経産のメス牛のお肉をSoranaとか Scottonaと呼ぶそうで、この辺りでは、ソラーナは人気があるお肉のようです。

こちらは地元産のワイン、チーズ、お肉が購入できる、協同組合のお店。

vini sfusi

macelleria 2

  
ここのお肉屋さんはスーパーの2~3倍のお値段なのですが、ここの挽肉でラグーを作ったら、美味し過ぎて思わず唸ってしまいました。
1~2週間に一度、1頭の牛をトラスフォームして数日熟成させ、その後、お肉を店頭に並べるそうです。
ハラミありますか、と軽い気持ちで聞こうとした私は、いろいろ想像して思わず口をつぐんでしまい、あるものをいただこう、という気持ちになりました。
ちなみにこの辺りでは、StraecaとかStraeccaと言う名前で牛のハラミがお肉屋さんで売られており、レストランでは、メニューに馬のハラミがあるお店もあるそうです。

先日、いただきます、とおやつを食べようとしたら、何て言ってるの、とイタリア人のお友達に聞かれました。
ありがたく命をいただきます、という感謝の言葉だと説明したら、いたく感激し、ノートに書き留めていました。
感謝の気持ちを忘れずに、今日もお肉をいただきます!


grazie! Segnalibroさん。
スーパーの2、3倍の値段で美味しすぎる挽肉!!
そうそう、アルティジャナーレなものは高いですよねー。
でも、美味しくて、あまりにも別物で、安いのに戻れなくなる。
明らかにペットではない活きた動物達かあ。
10年、20年先にこのシステムにSegnalibroさんがどこまでなじんでるか、楽しみですねー。


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2017年10月16日月曜日

南イタリアの若手ナンバー1、ジュゼッペ・ラチーティシェフ

九州で山が噴火しそうになっていますが、日本もイタリアも火山の国。
ヨーロッパで一番高い活火山は、シチリアのエトナ山です。
 ↓


毎年忘れた頃に噴火のニュースが遠く日本まで飛び込んできますが、このエトナ山は、ヨーロッパのワイン造りの現場でもっともトレンディーな場所になったりする注目の場所です。
6月号の「総合解説」のグルメガイドで取り上げたのが、このエトナ山。
ワインの生産量はわずかでも、それにまつわる観光業の成長が大量の観光客を引き寄せました。
それに伴い、ホテルやレストランも増え、エトナ山は美食の観光地となったのでした。
観光客だけでなく、優秀な料理人も集まりました。
シチリアは貴族文化と農民文化の両方が花開いた島で、高級ホテルやレストランと、トラットリアやオステリアが共存しています。

「総合解説」で紹介したのは、まずはザーシュ・カントリー・ブティック・ホテルのジュゼッペ・ラチ―ティシェフ。

ザーシュ・カントリー・ブティック・ホテル
 ↓




ホテルはカターニアとタオルミーナの中間のリポストという町にあります。
彼の料理はとてもクリエイティブ。
ボキューズ・ドールのイタリア代表にも選ばれていて、シチリアの期待の若手の筆頭です。
南イタリアのナンバー・ワンだという声もあります。





ガーラ・ディ・グストというエトナ山周辺の30歳以下のコンテストで優勝しています。
ちなみに審査員長はチッチョ・スルタノシェフ。

チッチョ・スルタノシェフの料理は「総合解説」6月号でも取り上げていました。
次回は彼の話でも。


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“グルメ旅~エトナ山”の記事の日本語訳は「総合解説」2015年6月号に載っています。
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2017年10月12日木曜日

ナポリのドルチェ

「総合解説」5月号の料理書のレシピの翻訳は、カンパーニア地方のコントルノとドルチェでした。
ニュートンの地方料理シリーズには、ナポリのドルチェだけの1冊があるので(こちら)、地方料理、魚料理と合わせて読めば、ナポリ料理はかなりカバーできそう。

ナポリのドルチェの本の前書きにあった、
「イタリアのドルチェの3本柱は、シチリア、ピエモンテ、そしてナポリのドルチェだ」
から始まるナポリ料理の解説は、とても印象深いものでした。
本の解説のページに訳を載せておきましたので(こちら)、よろしかったら読んでみてください。

「ナポリは、スペインブルボン家のナポリ王国とシチリア王国の首都として栄え、19世紀にはイタリアで最も人口の多い都市となった。
貴族、農民、都市、職人の食文化、この4つの要素を全て持つナポリのドルチェは、イタリアのドルチェのシンボルとして広まった」

個人的には、この4つの要素+家族の結びつきが強いナポリ人気質。
イタリアは20の州全てに 個性的な食文化があり、そのすべてが集まってイタリア料理を形成しているわけですが、特に影響が大きい州が、北のピエモンテ、南のシチリア、そして都市の代表、カンパーニア、正確に言えばナポリ。

ラツィオとカンパーニアの地方料理のレシピを半年かけて訳してきましたが、この作業を通して、ますますナポリ料理の重要性が分かってきました。

ババ、パスティエーラ、スフォリアテッラ、トルタ・カプレーゼ、デリツィアなどなど、ナポリには唯一無二のドルチェがたくさんあります。
訳していて、とても楽しかったです。









ナポリ愛溢れる上の動画のup主さんは、観光客はみんなナポリを素通りしてアマルフィに行くけど、本物のイタリアを知る機会を放棄しているなんて残念だねえ、と書いています。




こちらもナポリ愛を感じるBBCの番組。
ナポリ料理を貴族料理の側面から紹介する切り口がユニーク。


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“ナポリ&カンパーニア料理”のリチェッタの日本語訳は「総合解説」2015年3~6月号に載っています。
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2017年10月10日火曜日

イタリアの3大クラフトビール

先日、イタリアの知り合いから電話があって、
「日本グランプリのニュース見たからどうしてるかなあと思って電話した」とのこと。
「・・・すいません。何のことかわかりません」
車のレースがどうこういってるけど、そんなニュースになるほど大きなレース、何かあったっけ。
車好きの人ならすくにわかるんだろうけど、
北イタリアの年金暮らしのご隠居が、日本人なら知ってるに違いないと思って電話かけてくるレースって、何?
TVのニュースには一切出てなかった気がするけど、鈴鹿で行われた日本グランプリの話題で楽しく盛り上がろうとでも思ったのでしょうか、ご隠居。
結局どこが優勝したのかさえ知りません。
イタリア人と日本人の車に対する温度差、かなりあるなあとおもった出来事でした。

話は変わって、今日のお題は、ビールです。
ガンベロ・ロッソ誌に、「イタリアの主要クラフトビールメーカーは、バラディン、ビッリフィーチョ・イタリアーノ、ランブラーテの3社だ」
とありました。
バラディンのことは度々取り上げているの、今日は後者について。

ビッリフィーチョ・イタリアーノ
 ↓





ランブラーテ
 ↓






どちらもとても個性的。
とやかく言うより飲んでみたい。

どちらも創業が1996年。
この年はイタリアのクラフトビール元年。
この大ブームは20年の間に起きた事なんですね。
バラディンはこの年に醸造所から、造って販売もするブルーパブになっています。

記事ではイタリアで国産ホップを使ってビールを造ることの大変さが説明されていますが、その大変なことをやり遂げる人材や、メーカーと一緒にビール造りに取り組む農家がいたことが、イタリアビールの成功のポイントでした。

イタリアのビールは醸造者が脚光を浴びるクラフトビールbirra artigianaleから、農業と結びついた自然の産物、農業ビールbirragricolaへと進化して国際マーケットで生き残る道を探っています。



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“イタリア産原料のビール”の記事の日本語訳は、「総合解説」2015年5月号に載っています。
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2017年10月5日木曜日

ペコリーノ・トスカーノ

今日の話題はペコリーノ・トスカーノ。

先日、ペコリーノ・ロマーノしょっぱい問題について考えて以来、ペコリーノが気になっています。



ペコリーノ・トスカーノも歴史の古いチーズです。
ローマから製法が伝わったそうです。

でも、ペコリーノ・トスカーノにはしょっぱい問題は起きていないようで、やっぱり純粋にその地方の味の好みなんでしょうか。

とは言え、ペコリーノ・トスカーノにも問題はありました。
ここ数年、生産量が減少していています。
脂肪を減らしてタンパク質を増やすという、栄養価からのアプローチは、現代の消費者に合わせる変化の代表的なものですが、ペコリーノ・トスカーノの生産者が考えたのは、ピスタチオ風味やトリュフ風味の製品を作る、という新製品の開発。
フレーバー付きのペコリーノ・トスカーノがトレンドの最先端と言えるかも。

ペコリーノはイタリア各地で造られていますが、代表的なのは、ロマーノ、トスカーノ、サルドの3種類。
しかもロマーノは大部分がサルデーニャで造られていて、トスカーナで造られているものまであります。
それでもペコリーノ・ロマーノとサルドを味見すると、かなり違って面白いですよね。

ロマーノと比べるとサルドもかなりマイルドですが、トスカーノは3つの中で一番マイルド。
ペコリーノ・トスカーノの製造の中心地はシエナ県のピエンツァ。
ヴァルドルチャの中にあります。
ヴァルドルチャは、シエナ県の4つの宝のうちの一つ。
あと3つは?
1つはピエンツァ。
残りは「総合解説」を読んでください。

ペコリーノ・ディ・ピエンツァ
 ↓


ヴァル・ドルチャ
 ↓


はー、心が洗われますねー。
世界遺産。

ピエンツァ
歴史地区はもちろん世界遺産。
 ↓



今すぐ飛んで行きたい~。


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 “シエナ県”のグルメガイドの日本語訳は、「総合解説」2015年5月号に載っています。
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2017年10月2日月曜日

サラミーニ・カッチャトーラ

今月のメイド・イン・イタリーの食材は、サラミーニ・カッチャトーラ。
名前は聞いたとあるし、多分食べたこともあるはず。
イタリア産として世界中に誇るサラミだったのですね。

サラミーニ・カッチャトーラをざっと紹介する動画2つ。
 ↓




総合解説」にもありますが、このサラミは、元々は農民が狩りの間に食べるために作ったサラミだそうです。
猟師風といっても、作ったのは豚を飼っていた農民と考えるのが自然。

発祥地はイタリア北部。
北のサラミーニ・カッチャトーラはデリケートな味ですが、ラツィオやアブルッツォなどでは強い味が好まれたので、北部と中・南部では味が違うらしいですよ。
このことはペコリーノ・ロマーノの時にも指摘しました。北部と中・南部では、味の好みにも違いがあるようで、面白いですねー。

さらに、歴史問題もあります。
このサラミもペコリーノのように歴史の古いサラミです。
しかし、近年は現代人の嗜好に合わせる傾向が強く、脂肪を減らしてタンパク質を豊かにする傾向があるそうです。

現代人の嗜好に合わせると言っても、原料など基本の製法は変わりません。
イタリア産豚肉100%で、これを挽いて練り、塩とスパイスで調味したら腸に詰めて細長いサラミ型にします。
熟成期間は25日以内。
柔らかく仕上げるのが特徴。

甘くて酸味がないサラミなので、前菜やアペリティーヴォに向いています。
相性が良い組み合わせはニョッコ・フリットやフォカッチャ。
総合解説」ではそば粉入りのニョッコ・フリットのリチェッタを紹介しています。
さらに、パンチェッタの代わりにカルボナーラに入れたり、サルシッチャの代わりにパスタに入れても美味しいんだそうですよ。
元々豚肉ですからね。
色々使えそうです。





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 “サラミーニ・カッチャトーラ”の記事の日本語訳は「総合解説」2015年5月号に載っています。
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2017年9月29日金曜日

イシデとロマーノシェフのラ・パロリーナ

今日は今月の「総合解説」で紹介したご夫婦シェフ、イシデとロマーノのご紹介。
店の名前はラ・パロリーナ。
店の場所はラツィオ、トスカーナ、ウンブリアの州境、と解説には書きましたが、正確にはヴィテルボ県のトレヴィナノという町にあります。
ラツィオ州です。
名物料理が“卵のカルボナーラ”だというのも納得。




動画に登場しているのは奥様。
ご主人はシャイな性格なんだそうです。
奥様はバリバリに活躍中のシェフと勝手に想像してたら、とっても優しそうで謙虚な人。
料理は素朴な地方料理とクリエイティブなアルタ・クチーナのぎりぎりの境目あたり。
自然体で落ち着きます。

イシデの動画はいくつもあるのですが、ロマーノが写っているのは下の動画くらい。
質問にてきぱき答える奥様と、無邪気な笑顔でニコニコ答えるご主人、いいコンビだなあ。



ラ・パロリーナの料理
 ↓


卵のカルボナーラ
 ↓


卵白はメレンゲにして、卵黄は揚げて、グアンチャーレのチッチョリとこしょうを散らした1品。
地方料理と創作料理の境界線上の料理。


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“イシデとロマーノ”のリチェッタの日本語訳は「総合解説」2015年5月号に載っています。
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2017年9月25日月曜日

エミリア・ロマーニャのパスタ、ピザレイ

今月の「総合解説」から、まずはピアチェンツァのパスタ。

ソラマメと生イクラのピザレイです。
こんな料理。

ピザレイは、小粒のニョッキで、ルネサンス時代に流行したパンのニョッキに似ているそうです。
材料が小麦粉とパン粉、というのを聞いただけでも質素な農民料理ということが想像できます。
でも、イクラのおかげてモダンでゴージャスな1品に仕上がっています。



カヴァテッリによく似てますねー。
ピザレイの方がせっかちな人向けかも。


次は同じく今月の「総合解説」の地方料理で取り上げたカッチュッコ・アッラ・リヴォルネーゼ。

そういえば、世界中で水害がおこっていますが、リヴォルノでも、今月初めに大きな被害が出たそうです。




カッチュッコについては何度も取り上げてきましたが、この料理が生まれた由来について、記事にはさらっと新説が取り上げられていました。
この料理は魚の種類が多いことで知られるズッパ・ディ・ペッシェですが、それは、海で死んだ漁師の未亡人のために、その日の水揚げから少しずつ魚を分け与えると言う習慣があったからだというものです。
これだけの団結力があれば、水害も乗り越えていけるはず。
この料理のイメージがちょっと変わりました。




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“ソラマメと生イクラのピザレイ”のリチェッタと“カッチュッコ・アッラ・リヴォルネーゼ”の記事の日本語訳は、「総合解説」2015年5月号に載っています。
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2017年9月21日木曜日

秋のパスタ

台風が過ぎた後、秋が駆け足で近づいているような今日この頃ですね。
最近の異常な夏や冬を経験した後では、快適な春や秋は短いかもしれない、貴重な季節になったなあ、と思うようになりました。

秋のイタリア料理と言えば、お勧めの本は、その名も『アウトゥンノ』です。


そこで今日は、この本の中から、秋のパスタをピックアップしてみました。

アルファベット順なので、一番最初はアニョロッティagnolottiです。
アルバの白トリュフのアニョロッティ。


ピエモンテ風アニョロッティ
 ↓


キャベツが入ると餃子感が増しますねー。

栗のクリームとポルチーニのソースのカッペッラッチ。
 ↓


カッペッラッチは北イタリアの詰め物入りパスタの一種。
フェッラーラあたりが本場で、カッペッラッチという名前は農民がかぶっていた麦わら帽子の名前で、形が似ていたところからつきました。

秋のパスタはラビオリを初めとする詰め物入りパスタ、軟質小麦粉の手打ちパスタ()、白トリュフ、栗、ポルチーニなどのフレッシュきのこ、うさぎやイノシシなどのジビエ、サルシッチャなどの秋の食材のボリュームのあるソースが特徴。

そんなソースに合うパスタの一つ、パッバルデッレ。
 ↓



さらに、料理の名前にアッラ・カッチャトーラ(狩人風)とかアッラ・ボスカイオーラ(木こり風)とかつくと、ぐんと秋感が増します。
パリア・エ・フィエーノも季節的には秋がぴったり。

イタリアの家庭的な秋のパスタの代表はペンネッテ・アッラ・ボスカイオーラ。
 ↓



秋のパスタは秋に食べたいもの。
今年の秋は長く続くといいけど。

秋はニョッキもリゾットもミネストラも美味しい季節。
プリーモ・ピアット全般が食べ時ですね。


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2017年9月19日火曜日

グラニャーノのパスタメーカー、ジェンティーレのフジッリ

昨今のクラフトビールのブームは、世界的な傾向。
ところで、クラフトビールとは、どういう意味なんでしょう。
クラフトには技能とか技と言う意味があります。
イタリア語では、クラフトビールは、birra artigianale。
ビッラ・アルティジャナーレ。

このアルティジャナーレという言葉は、イタリア料理のポイントとなる言葉です。
イタリア料理に接していると、何度となく耳にする言葉です。
辞書で調べると、手工業の、とか職人の、といった意味です。

つまり、機械で大量生産するの反対で、熟練した技を持つ人の手で、一つ一つ手間をかけて作られたもののことです。
製品に作った人の考えがストレートに反映される特徴があります。
イタリアは、こういう職人を尊敬してきた国です。
特に芸術やファッション、車などの分野では、アルティジャナーレの世界的巨匠を大勢生み出してきました。

食の世界にもアルティジャナーレな作り手がたくさんいます。

ノルチャのクラフトビールの一例、修道院ビール




今日紹介するのは、アルティジャナーレのパスタです。

パスタには職人が作る手打ち麺と、工場で大量生産される乾麺がありますよね。
さらに、乾麺の中にも、職人が作る麺と、全部機械で作る麺とがあります。

手打ち麺はイコール・アルティジャナーレなパスタですが、乾麺にもアルティジャナーレなパスタがある、という訳です。

イタリアには、パスタの町として知られるグラニャーノがあります。
グラニャーノのパスタは、アルティジャナーレなパスタとして知られています。




そこで今日紹介するのは、上の動画にも登場するグラニャーノの、アルティジャナーレなパスタの造り手として有名なジェンティーレの、パスタではなく、本です。



新入荷の1冊です。『ストーリア・ディ・ファブリカンティ・ディ・マッケローニ
ジェンティーレの経営者一族の女性のナポリの伝統料理の力作のリチェッタ集。

上の動画で女性たちが1本ずつ手で造っていたのはフジッリ。
ナポリの代表的な伝統パスタです。
本の表紙になっているのも、そのフジッリ。

グラニャーノのパスタの本質を知るには、1本ずつ手でねじったフジッリを味わわなくては。
ショートパスタのフジッリとは、まったく別の食べ物ですね。
表紙のフジッリの盛り付け方は、私が見た中ではナンバーワンの美しさ。



表紙のフジッリは、リコッタとトマトのソースです。
美しいパスタにからめるのは、固形物が入らなくても濃い風味のソース。




使う食材にはナポリの味が詰まっていそう。
ピエンノーロのトマト、水牛のモッツァレッラ、ナポリ種のバジリコ・・・。
余談ですが、イタリアのバジリコは、主にジェノヴァ種とナポリ種の2品種なんだそうです。

このジェンティーレの本は、写真が信じられないくらいドアップです。
実物の数倍ありそうなのもあります。
見開きの2ページに巨大なパスタの断面がドーンとのっていたり、
全てお見せしましょうという心意気が感じられる面白い超大型本です。



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2017年9月14日木曜日

ヌビアの赤にんにく

総合解説」5月号を発売しました。
まずは2ページの“5月の食材”のページから。

ヌビアの赤にんにく。
 ↓



トラパニの自然保護地区の塩田の近くのヌビアで栽培されているにんにくです。
日本でも栽培されているんですね。
他のにんにくよりアリシンが多いので風味が強く、トラパニ風ペストには欠かせません。

ペスト・アッラ・トラパネーゼ
 ↓


地中海料理大学長のリチェッタ。
歴史背景の説明など、さすがにとても学術的。
中盤からキャリアウーマンとおじちゃまの漫才みたいになってるけど
 ↓


トラパニ風ペストはシチリアの言葉だと、アッギアータ・トラパニサ。
アッギアータはにんにくのこと。
トラパニ風ペストのポイントはにんにくなんですね。

次はアカシアの花のフリット。
きれいな花ですね。フリットにして食べるんだ。




イタリアにはまだまだ知らない食材がたくさんあるなー。



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“5月の食材”の日本語訳は、「総合解説」2015年5月号に載っています。
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2017年9月11日月曜日

ナポリ料理

「総合解説」の料理書の翻訳、ここしばらくは、ナポリとカンパーニア料理のリチェッタを訳しています。
それにしても、イタリア料理のイメージはナポリ料理そのものだな、と、リチッタを読めば読むほど感じます。
ナポリは、王国の首都で大都市、港があって人や食材を世界各地に運び、温暖な気候で農業が栄えて、ピッツァのような独自の普遍的な料理を作り出す豊かな想像力がある人々が暮らすとても魅力的な街。

典型的なナポリ料理
 ↓



さらに、訳しているニュートンシリーズは、リチェッタがシンプルで読みやすい。
イタリア人に最も親しまれている地方料理書だけあって、すごくとっつきやすくて、すらすら読めます。
4月号はセコンド・ピアットを訳しましたが、肉より魚料理のほうが圧倒的に多いですね。

スズキのアックアパッツァからヒラメのブラザートまで、イタリアの魚料理の基本中の基本のリチェッタを、たくさん訳しました。

今回だけでは紹介しきれなかったので、また新たな機会に続きを訳す予定です。

今日は、4月号で訳した料理の一部の動画をどうぞ。


タコのアッラ・ルチャーナ
 ↓


この料理はナポリのサンタ・ルチア地区の漁師が考え出した歴史の古い料理。


スズキのアックア・パッツァ
 ↓



ムール貝のグラティナーテ
 ↓


パランツァのフリット
 ↓



パランツァとは網に引っ掛かるような小魚のこと。

肉料理も
牛ステーキのアッラ・ピッツァイオーラ。
 ↓



もうすぐ発売の5月号では、コントルノとドルチェを訳しています。
ピッツァは6月号で訳す予定です。


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ナポリとカンパーニア料理のリチェッタは、「総合解説」2015年3~6月号に載っています。
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2017年9月7日木曜日

マルケのパスタ

マルケのグルメガイド、今日はマルケのパスタの話。

さて、マルケのパスタって、何がありましたっけ。
マイナーな州のような気がしますが、ありますよー、名物パスタ。



そう、マッケロンチーニ・ディ・カンポフィローネ。
このブログで以前に取り上げていますので詳細はそちらをご覧ください。

アックアラーニャの白トリュフのマッケロンチーニ・ディ・カンポフィローネ
 ↓


マルケはトリュフの産地としても有名。
サマートリュフから白トリュフまで、1年中採れます。
 ↓



さらに、ロマーニャ料理として知られるパッサテッリも、マルケ版があります。




パッサテッリはにんにく絞りのような道具で生地を押し出して作る、個性的なパスタ。
チーズやレモンの皮入りです。
パッサテッリ専用の道具がなくてもポテトマッシャーで代用できます。

他には、ラザーニャの一種のヴィンチスグラッシ、タリオリーニの一種のtajuli pilusiなどがあります。
後者は発音が不明なので分かる人教えてください。
字ズラはタヤリンによく似てますね。

cioncioni(チョンチョーニ)というソラマメの粉入りの平麺もあります。

マルケのパスタ、知れば知るほど面白そう。


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“グルメガイド~マルケ”の記事の日本語訳は、「総合解説」2015年4月号に載っています。
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2017年9月4日月曜日

マルケ、ウルビーノ

今日は、「総合解説」のグルメガイド、マルケのビジュアル解説。
まずは、ウルビーノ。



緑に囲まれた丘の上の町。
一番上にあるパラッツォ・ドゥカーレは凄い存在感。

パラッツォ・ドゥカーレは知らないという人も、この建物を建てた人フェデリコ・ダ・モンテフェルトロのことなら見たことあるかも。
少なくとも彼の顔を一度見た人は、忘れられなくなります。
この人です。




イタリアで一番有名な鼻だそうです。

描いた人はピエロ・デラ・フランチェスカ。
フィレンツェのウフィッツィ美術館にあります。
槍の試合で片目を失ったため、このような構図の肖像画が多いのだそうです。
勇猛な武将として名をはせ、彼の宮廷はヨーロッパ一洗練されていると評されるなど、人気の高い名君でした。

そして彼が統治する時代のウルビーノで誕生した名物チーズ、カッショッタ。
甘みのあるソフトチーズ。




ウルビーノの美味しいもの




マルケの話、次回に続きます。


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グルメガイド“マルケ”の記事の日本語訳は、「総合解説」2015年4月号に載っています。
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2017年8月31日木曜日

セラス・デル・フェン


今日はピエモンテ産リコッタ、セイラスの話。

セイラスの他に、セラス、サラス、セレなどいろいろな呼び名があるそうで、イメージがあやふやなチーズです。
というか、リコッタなので、正確にはチーズですらないです。

そもそも、セイラスの語源はラテン語でホエイのこと。

サラス・デル・フェンは、トリノ県の産物で、スローフードの保護食材。
メイド・イン・イタリーの食材と呼ばれるくらいで知名度も高そう。



このチーズはキリスト教のヴァルド派の人たちが作った名物でした。
ヴァルド派はキリスト教のプロテスタントの1派ですが、異端とされて迫害され、ピエモンテの山の中で独自の文化を持つコミュニティとして生き残りました。
このチーズは、ラバの背中に乗せて運ぶ間のハエよけのために干し草で包むのが特徴。
リコッタの性格上、フレッシュなうちに味わうのが美味しいそのうなので、ピエモンテに行ったら食べておきたいチーズです。

ヴィッサーニのセラスのアノリーニ。
 ↓



シラスと呼んでますね。
「総合解説」では、セイラスを使うコッパ・サバウダはサヴォイア家の宮廷で人気だったとあります。
こんな料理です。
 ↓



味見した時のリアクションが淡白でいいですねー。


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2017年8月28日月曜日

クープ・デゥ・モンド2015はイタリアイヤー。

ちょっと前の話ですが、2015年のパティシエ・ワールドカップで、イタリアは悲願の優勝を手にしました。
1997年の初優勝から、18年目の快挙でした。

2015年のダイジェスト




イタリアチーム




とても印象的だったイタリアチームのフローズンデザート1位の作品をシリコン型で再現。




チョコレート部門も1位。これもシリコン型のメーカーが再現。



飴細工部門も1位で、新記録で完全優勝です。



リーダーはシュガーアートのマエストロ、エマヌエーレ・ファルコーネ氏。



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“パスティッチェーリ・チャンピオン”の記事の日本語訳は「総合解説」2015年4月号に載っています。
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2017年8月24日木曜日

アンジェロ・サバテッリシェフ

今日は最近プーリアでナンバー1とも言われる注目シェフ、アンジェロ・サバテッリ氏の話。
6歳の時にはすでに肉屋で働きだして、午前中はホテル学校、午後は仕事という生活もしていたそうです。
ジャカルタ、ホンコン、シャンハイ、モーリシャスで12年働き、言葉とオリエントの食材も使いこなしています。

自らの名前をつけたリストランテはプティニャーノ(バーリ)にあります。
今年の5月に生まれ故郷のモノポリから離れて新しい店を開きました。
すでに店の口コミサイトには高評価の投稿が続々。
店のwebページはこちら

下の動画では、リーゾ・パターテ・コッツェというこてこてのプーリア料理を、素朴さとプーリアらしさはそのままに洗練された1品に仕立てています。




伝統的なリチェッタ
 ↓


プーリアは食材が素晴らしい地方だけに、モダンにアレンジすることがとても難しい地方料理だと思います。
でも、オリジナリティーとクリエイティビティにこだわるシェフもいるんですね。
プーリアも、次々に注目のシェフが登場するようになりました。






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“アンジェロ・サバテッリシェフ”の記事の日本語訳は、「総合解説」2015年4月号に載っています。
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2017年8月21日月曜日

粉の強さとショパン


今日は小麦粉の話です。
イタリアの小麦粉には、0とか00といった番号がついています。
これは、粉の精製具合を表す数字です。

あくまでも、どれだけ精製しているか、を示す表示で、粉の品質とは関係ありません。
最近、イタリアの小麦粉事情が変化しています。
それはどうやら、家庭でお菓子やパンなどを手作りする人が増えては、消費者が、粉の性質をもっと知りたいと思うようになったことと関係があるようです。

イタリアの消費者は、粉のどんな性質に興味があると思いますか?
それは強さです。
粉の強さはタンパク質の含有量によって生まれます。
日本では、強力、中力、薄力と名前を付けて分類していますが、イタリアでは、ショパンのアルベオグラフ値で表しています。
これ最近、イタリアの料理雑誌ではよく見かける値です。
ショパンと呼んでも作曲家のショパンとは関係ありません。
Wと数字で表される値です。

粉は水と混ざるとグリアジンとグルテニンという2種類のタンパク質ができます。
これらが結びつくとグルテンになります。
グルテンは目の詰まった網のようなもので、発酵の間、内部にでんぷんとガスを貯めます。
この力をWで表します。
つまり強さは粉が生み出すことのできるグルテンの量で、水を吸い込める量によって左右されます。
グルテンが多いほど生地も膨らみます。
W90~70の薄力粉は水分が少なくて発酵が短いものに適しています。
ビスコッティ、グリッシーニ、クロスタータなどです。

W180~260は中力粉、食パン、バゲット、生パスタなどに適しています。

W270~310は強力粉です。
これは水分をたっぷり吸いこみ、粘りのある、ゆっくり発酵する生地に適しています。
チャバッタ、ロゼッテ、パネットーネ、ブリオッシュなどに使います。

チャバッタ
 ↓


チャバッタの生地には3リットルも水を加えるんですね。
水分をたっぷり吸いこむ粉を使うんですね。

ロゼッテ
 ↓



W330とか400の小麦粉を使っていますね。


W320~370の粉はマニトバ粉と呼ばれています。
単独で使われることはほとんどなく、他の粉と混ぜて強さを出すために使われます。

イタリアの家庭用の市販の小麦粉にはまだWの表示が記載されているものは少ないようですが、徐々に増えているそうです。






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“粉の強さ”の記事の日本語訳は、「総合解説」2015年4月号に載っています。
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2017年8月17日木曜日

メカジキのシチリア風

今日はメカジキの話。
イタリアのメカジキといえば、独特のスタイルの漁をするメッシーナ海峡のメカジキが有名。
最近、マグロの伝統漁の話をすっかり聞かなくなったけど、もう消滅してしまったのでしょうか。
メッシーナ海峡のメカジキ漁の話も聞かなくなりましたが、どうなっているのか。

こんな漁。



普通に釣っても冒険心を大いに刺激する魚なのに、何世紀も前から変わらない道具と方法で、メカジキと1対1の勝負をする漁なんて、ロマンしかない。

でも、どう考えても非効率的で危険な漁、いつまで存続できるでしょうか。
すでに後継者不足のようだし。

とにかく、メッシーナ海峡の漁師は、メカジキに関しては、相当なエキスパートのようです。
『サーレ・エ・ペペ』に、メカジキの習性について、ショッキングな話が載っていました。
メカジキはつがいの絆が強い魚で、オスはメスが捕まると一緒に死のうとする習性がある、なのでつがいでいる時はメスをモリで突くんだそうです・・・。

そりゃ、それが漁というものだとは知っていますが、ちょっとロマンチックすぎて、メカジキとメカジキ漁のイメージが大幅に変わりましたよ。

シチリアの人気のメカジキ料理の一つ、“アッギオッタ”。
 ↓



「総合解説」で取り上げた料理はブラチョーレは別名インヴォルティーニ。





ラブラブのつがいのメカジキじゃなかったことを祈ります。



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“メカジキのブラチョーレ”の記事の日本語訳は、「総合解説」2015年4月号に載っています。
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2017年8月14日月曜日

モレッティ、バラディン

ビールの話の続きです。

イタリアのビールのCMでもどうぞ。

まずは代表的で身近な、昔からあるイタリアのビール、モレッティ。
イタリア各地の風味を再現したレジョナーレシリーズ。
フリウリからシチリアまで、色々あります。





アンジェロ・ポレッティ




最後はテオ・ムッソからあふれ出るアイデアの一つ、ビアホール。
ローマのオープン・バラディン。




ミラノ、ボローニャ、トリノにもあります。
ローマはカンポ・デ・フィオーリ地区のVia degli Specchi にあります。
料理の監修はなんとカット・ピッツァの王様、ガブリエレ・ボンチ。
最強のタッグですね。
web ページはこちら


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“イタリアのクラフトビールの世界”の日本語訳は、「総合解説」2015年3月号に載っています。
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2017年8月10日木曜日

イタリアのクラフトビール、ルリジア

今日のお題は、イタリアのクラフトビールです。

『クチーナ・イタリアーナ』によると、今や、イタリア女性の3人に一人は、外食の夕食ではビールを選ぶんだそうです。
イタリアのクラフトビールブームの勢いは、まったく衰えていないようです。
それにしても、なぜイタリアのクラフトビールはこんなにバリエーションが豊かなのでしょうか。
やはり、職人技を尊重する食文化があって、クリエイティブな力に溢れた職人が大勢いるからでしょうか。

イタリアのクラフトビールの種類は飛躍的に増えています。
『クチーナ・イタリアーナ』誌は、「新しい女性と新しいビールは似ている」と言っています。
その心は、どちらも自由だが、一方で敬虔で、タブーもたくさんあるからだそうです。
これもイタリアの食文化を言い表す名言ですねー。

ビール造りにはどんな発想も許されるけれど、その飲み方には、厳格な掟がある、それがイタリアのクラフトビール。

という訳で、ビールと料理の組み合わせにも、厳格な掟がありました。

プリーモ・ピアットを例に考えてみましょうか。

まず、パスタやリゾットとビールの組み合わせを考える時、重要なのはソース。

例えば、イカ墨にはヴァイツェンが合うそうです。
ラディッキオにはラガー、ミラネーゼにはバランスの取れたエールだそうです。

カルボナーラや、ペスト・ジェノヴェーゼに合うのは、エールのルリジア・スペチャーレやピルスのピルスナー・ウルケル。

ルリジア
 ↓



ルリジアはミネラルウオーターのメーカー。
ルリジア・スペチャーレはピエモンテの山の澄んだ水、イタリア産大麦を使っています。




ピルスナー・ウルケルはチェコのビール。
何を言ってるのか一言もわからないけどピルスナーは飲みたくなる。



おまけの動画
ルリジア・ノルマ―レを語るテオ・ムッソ。
イタリアのクラフトビールブームを作った天才は、ずいぶん美味しそうにビールを飲むんだなあ。




彼のXyauyù'シャオユーは傑作でビール造りの新しい波、世界的にも高く評価されているビールだそうです。
ビールというよりシャンパンみたい。





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“イタリアのクラフトビールの世界”の記事の日本語訳は、「総合解説」2015年3月号に載っています。
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2017年8月7日月曜日

モンテロッソのアンチョビー


チンクエテッレに足が遠のく原因の一つは、交通の便が悪い、というイメージです。

中世にできた沿岸部の住民にとっての唯一の道、センティエロ・アッズーロ。
 ↓


昔から、5つの集落を結ぶルートはわずかしかなく、1930年代マナローラとリオマッジョーレを結ぶ“愛の道”というルートができたおかげて、ようやく2つの集落を安全に行き来することができるようになりました。

愛の道という名前はかなりこっ恥ずかしい。
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すごい断崖絶壁。
確かに昔は移動が大変そうだけど、今はモンテロッソからリオ・マッジョーレまで、鉄道で20分で移動できてしまいます。

さらに、船から上陸するという手段もあります。

ところが意外なことに、船は天候に左右されて、いつもすんなり上陸できるとは限らなかったんですね。
これが、地元の伝統料理に魚料理が少ない理由なんだそうです。
そししてわずかな例外が、アンチョビー。
昔はモンテロッソでだけ水揚げされて、それを各集落に運んで売っていました。
各家庭では、塩漬けにして保存して、フリットなどにしていたそうです。
モンテロッソのアンチョビーはリグーリアの名物食材
モンテロッソに行ったらアンチョビ料理を忘れずにチェックですね。

モンテロッソのアンチョビーのフリット祭り。
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モンテロッソのアンチョビー
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モンテロッソのアンチョビーのスパゲッティ
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サーレ・エ・ぺぺ誌のモンテロッソ・アル・マーレのお勧めレストラン、ミッキー。
カンティーナもあります。




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“チンクエ・テッレ”のグルメガイドの日本語訳は、「総合解説」2015年3月号に載っています。
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2017年8月3日木曜日

チンクエテッレのネプチューンの巨像

今日はチンクエテッレの話。

イタリアの有名な観光地の一つなので、行ったことのある人も、行こうと思っている人も、少なからずいるとは思うのですが、実際に行った人となると、他の有名観光地と比べて、ややマイナーな存在かもしれませんね。



私もいつか行きたいなあ、とは思っているのですが、アクセスの不便なビーチリゾートなので足が遠のいていました。
ところが今回、『サーレ・エ・ぺぺ』の記事を訳していて、あるホテルが“有名なネプチューンの巨像の近く”にある、という文章に出会い、念のため、ネプチューンの巨像というのを調べてみて、その幻想的な姿に、軽くショックを受けました。
元々彫刻が大好きだったこともあって、今やチンクエテッレは、行けるならぜひ行ってみたい場所になりました。

Statua del gigante o di nettuno a Monterosso al mare - Liguria

さすがはミケランジェロの国だなあ。
断崖の端っこに筋骨隆々のネプチューン像を彫って庭園を支えさせるなんて発想は、幻想的過ぎて、何時間でも見ていられそう。

モンテロッソ・アル・マーレのフェジーナ・ビーチにあります。
アッリーゴ・ミネルヴィという人が1910年に、アルゼンチンに移民して成功したイタリア人、パスティーネ夫妻のために造ったヴィッラ・パスティーネの巨大なテラスの一部で、高さ14mの像です。
第2次世界大戦の爆撃などでかなり被害を受けましたが、一部修復されています。
片足と両腕を失って重そうにテラスを支えるとか、アングルによってはかなり痛々しい姿で、その前で海水浴客がのんびり日光浴している姿はちょっと違和感ありますが、
違和感あるくらい、彫刻が写実的で素晴らしいということでしょう。
いつか行く日のために、行った方でなにかアドバイスがあったら教えてくださーい。

そうそう、記事にあったすぐ近くのホテルというのはこちら。
朝食が美味しいそうです。
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“チンクエ・テッレ”の記事の日本語訳は「総合解説」2015年3月号に載っています。
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2017年7月31日月曜日

ペコリーノ・ロマーノしょっぱい問題

今日はペコリーノ・ロマーノの話。
ガンベロ・ロッソの記事からです。

Pecorino Romano Fulvi Cheese


ペコリーノ・ロマーノの話といえば、いつもの話題は、
約2千年の歴史があるローマの伝統的なチーズなのに、ほとんどサルデーニャで作っている、ということと、
なんでこのチーズはあんなにしょっぱいのか、ということ。

ペコリーノ・ロマーノの95%はサルデーニャ産。
もうほぼ完全にサルデーニャの製品ですよね。
でも、サルデーニャはローマより羊の飼育に適しているし、サルデーニャの人たちは、羊飼いのDNAを持って生まれてくるようで、羊を扱わせたら名人揃い。
サルデーニャ産でも何の文句もありません。
ペコリーノ・ロマーノはイタリアの輸出量の多いチーズトップ5に入っていて、羊のミルクとしては第1位。
しかも、その約1/3はアメリカに輸出されているそうです。
ところが、ペコリーノ・ロマーノは今、転換期を迎えていて、生産量が減少し、廃業する老舗メーカーも現れています。
輸出量か増えても、対ドルユーロ安のせいで利益は相殺されています。
しかも、「分子料理の大流行の反動で、ローマ料理への回帰が起きている」、と(ローマ料理というか、イタリア地方料理と分子料理は水と油ですよね)せっかく追い風が吹いているのに、
数年前の青舌病の流行、ここ数年の雨が多い天気のために野生の状態で飼育されている羊の活動量が減り、ミルクの生産量が20パーセント減少、などの数々のマイナス要因があります。
長雨が羊のミルクの量の減少につながるなんて、知らなかったなあ。

ペコリーノ・ロマーノしょっぱい問題は、特に外国人には受け入れられないくらい深刻ですよね。
あの塩気は、ローマの伝統の味だそうです。
ペコリーノ・ロマーノは元々調味料のように使われていました。
単独でチーズだけを味わうためには作られていないのです。
ところが、ペコリーノ・ロマーノの現在の主な消費者は北イタリア人やアメリカ人。
皮肉なことに、このチーズがアメリカに広まったのは、塩分が多くて長期間保存できたから。
でも、彼らが好むのは、マイルドでフレッシュな味。
これは多分、日本の消費者も同じですね。
というわけで、管理組合では塩気の弱いタイプも造るようにしました。


ペコリーノ・ロマーノのサラトゥーラ
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伝統の味も、こうやって消えていくんですね。
確かに、ペコリーノ・ロマーノは今、転換期かもしれません。
今のうちに伝統の味を味わっておかないと・・・。




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“ペコリーノ・ロマーノ”の記事の日本語訳は「総合解説」2015年3月号に載っています。
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2017年7月27日木曜日

イタリア目線の鶏肉のマレンゴ風

今日は鶏肉のマレンゴ風の話。

Pollo alla Marengo


この料理をイタリア料理と呼ぶのには賛否両論だとは思いますが、一応、マレンゴというのはイタリアの地名(ピエモンテ)なので、イタリアの要素も少しは入っている、ということでよろしいでしょうか。

ナポレオン由来の料理のため、注目を浴びやすく、歴史的な逸話が多い料理、というわけで、後世にいろんなエピソードを生み出した面白い料理です。
とにかく、劣勢だったナポレオン率いるフランス軍が、オーストリア軍に逆転勝利したとたんに、ヨーロッパ中のあらゆる料理書がこぞってこの料理のエピソードを取り上げたようで、その大部分が、フランス目線で描かれています。

ブログで以前とりあげたことがあります。
その時の内容はこちら

7年も前のことでしたが、昔からイタリアではイタリア目線の歴史が伝わっていたようです。
今回は『サーレ・エ・ペペ』の記事から、その一部をご紹介。
まず、食材は戦場であり合わせのものをかき集めて作った、というのがフランスの一般的な説。
ところがイタリアでは、容赦ないです。
ナポレオンの料理人デュナンが、各国の軍隊に蹂躙されてひどい食糧難だった地元の農家を急襲して、鶏を徴収していった、と伝わっています。
さらに塩がなかったので、鉄砲用の硝石の粉で調味したんだそうです。
これ、食べ物?
というレベルですが、なんとこんな料理をナポレオンがえらく気に入ったんだそうです。
ひょっとして、これ、ナポレオンの味音痴をバカにしてる?
確かに、ナポレオンは料理に興味がなかったというのは有名な話。
イタリア目線だと、この料理の質素なところが気に入ったのだろう、という解釈になっています。
うん、バカにしてるね。

しかも、世界中に広まったのは、この料理を有名な戦いのシンボルにするために、エスコフィエが考案した料理だとでも言いたそうな結論。

イタリアとフランスでは、ナポレオンの業績の解釈にも違いがあるようで、隣の国でも正反対のイメージがあったりするんですね。
ところが面白いのが、この料理、アメリカではナポレオン抜きでチキン・マレンゴと呼ばれて、家庭料理としてやたら人気があるみたい。

チキン・マレンゴ
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プーレ・マレンゴ
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ポッロ・マレンゴ
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なるほど、どの国の食文化に属するか、厳密に分類できない料理なので、アレンジの幅も広い料理なんですね。


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“鶏肉のマレンゴ風”の記事の日本語訳は、「総合解説」2015年3月号に載っています。
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マリア・ルイジアの小さな街、パルマのバターとグラナの娘、アノリーニ。本物は牛と去勢鶏のブロードでゆでます。

昨日の最後にサラっと登場したアノリーニですが、このパスタ、(CIR12月号P.5)にもリチェッタが載っていました。クルルジョネスの次の料理です。花の形の可愛い詰め物入りパスタ、なんていうのがこのパスタの印象ですが、イタリア人は、こんな風に思ってるんですね。 「マリア・ルイジアの小...